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魔法少女の物語  作者: ピザやすし
第四楽章 解放の痛み
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第21話 決起

ルミナスが地図の一点を指さす。

「シナリオから脱したら、ここへ向かって欲しい。」

「ここ、は?」

「防災センターです。防災スピーカーに、音声を流している場所です。」

アカネが地図を見たまま答える。

「……ルミナスさん、防災スピーカーを通じて、私達は、何をされているのですか?」

「……暗示をかける音声をずっと流している。疑問を持つな、受け入れろ、と。君たちは認識していないと思うが。繋がれた脳は、演算ユニットとして、この虚構の世界を維持している。効率良く処理するために、少しずつ、思考を歪められている。」

アカネが、地図へと目を落とす。

「……だからこんな、人目を避ける様に。」

ルミナスが地図から離れる。

「……今回、私達は地上側からあの施設を襲撃する。何人分のユニットがあるかは分からないが、彼等を生かすだけの食料を生産しているプラントがある。そこから、それを奪う。」

「……そこまで分かっているなら……」

「……準備が整っていなかった。……いや、これは私の言い訳だな。機会はあった。が、実行に移せなかった。……今回は、十万の命は、看過できない。断ち切らなければ、繰り返される。」

俯き、下を向いたまま、ルミナスは言葉を選んでいる様だった。

「……確認するが、私達は、これまでの様に戦えば良いのだな?そして、定刻までに撤退の合図がなければシナリオを脱し、夢を、破壊する、と。」

「……ああ、そうだ。」

ルミナスが私達を見る。

「それと、二人の分の、我々の使っているミミックも用意しておこう。ミミが離反に気付き、変身を解除した後は、それを使うと良い。」

「分かった。」

二人で頷く。

「では、以上だ。……この悪夢を、終わらせる。」

話を終え、私達は寝台に向かう。

つい先程目覚めたばかりで、また眠りに就くのは少しおかしく感じた。

私は、正直なところ、話について行けていなかった。

私達の戦いは仕組まれていた物で、次は大きな犠牲が予定されている。

でもそれは、夢を壊して良い理由になるのだろうか。

ノクティアが端末を操作しながら言う。

「二人のミミックは、私が持っておく。……まずは、連中の手のひらで踊って見せよう。……仮初めでもな。」

その言葉を聞きながら、纏まらない頭のまま、私達は夢に落ちていった。


夜、広場では簡単なスープとパンが配られていた。

広場の中央には火が焚かれ、ゆらゆらと光が揺れていた。

切り立った岩肌の前にできた、天然のステージの上に、ルミナスが歩みを進める。

焚かれた炎が、壁面にルミナスの影を大きく映す。

与えられたスープとパンを口に入れながら、横目で目覚めた者たちがその姿を見ていた。

ルミナスが、その中央で立ち止まる。

目を閉じ、静かにそこに存在していた。

その目が開かれる。

「……今回、ここに集まってもらうために、簡単ながら食事を用意した。楽しんでいただけているだろうか。」

言葉を聞き流しながら、皆、食事に意識が向いていた。

食事を配る場所には列がまだ続いていた。

「ここに居る皆は、夢から目覚めた者達。自ら望んだ訳でもなく、夢を、虚構の舞台を作る者達の都合によって、目覚めを、強いられた者達だ。」

自分達の置かれている立場を告げられ、数名が手を止め、顔をルミナスに向ける。

「今、こうしている間にも、夢に囚われたままの者達は、その夢を、搾取され続けている。その生活を、命を、娯楽として消費されている。」

止まった手が、再び食事へと移る。

「……皆に、運が良かった、等と言うつもりはない。夢の中での暮らしがあっただろう。自らの知らないところで、搾取する側の都合で、生活を奪われた。」

数名が顔を上げる。

「……奪われたものを思い出して欲しい。家族との暮らしがあっただろう。穏やかな日常があっただろう。母親の顔を、配偶者の顔を、恋人の顔を、思い出して欲しい。」

食事をする者達の手が止まる。

「そして、それらは唐突に奪われた。それは何故か。……諸君らからそれを奪った者達がいるからだ。」

広場の人々の手は止まっていた。

列に並ぶ者もルミナスを見ていた。

「しかし、そんなことが、許される筈が無い!理不尽に奪われ、荒野に放り出され。……今、諸君らの手にある物を見て欲しい。質素なスープとパンだ。食卓を彩った食事すら無い!」

そうだ、と、声が上がる。

一人が声を上げると、その声が静かに広がっていく。

ルミナスが、ゆっくりと両手を広げる。

壁面に大きく、その影が映される。

「……諸君らの怒りは尤もである。ならば、その怒りを、振り上げた拳を、奪った者達に下そう!我々にはその権利がある!」

壁面に映し出される、ゆらゆらと動く大きな影が、怒りを、憎しみを、奪った者達にぶつけて良い、と、そう伝えていた。

人々の瞳には、広場に焚かれた火と、壁面の大きな影が揺れていた。

「明日、諸君らの目覚めた施設を襲撃する。……我々は奪われたのだ。その辛さ、悲しさ、憎しみ、怒りを、奪った者達にも味わわせてやろうではないか。」

わっと声が上がる。

器を片手に持ち、反対の拳を挙げる。

「明朝から、武器を配る。……配り終え次第、実行する。義は我らにあり。……その怒りを、存分にぶつけよう。」

一際大きな声が上がる。

ルミナスの名を呼ぶ声が満ちる。

その声を背に受けながら、ルミナスはステージを降りていった。

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