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魔法少女の物語  作者: ピザやすし
第三楽章 夢から覚めて
15/21

第15話 上層

「これを着ると良い。」

夢の中で来ていた様な、普通の服をノクティアから渡される。

「……これは?」

こんなものがあるのなら、先に出してくれ、と思った。

何せ、ずっと布一枚で過ごしているのだから。

日中は暖かいが、夜は冷える。

昨夜はアカネと隣に座り、寄り添って眠った。

……ベッドが、恋しかった。

アカネは、私の不満とは対照的に、可愛いリボンの付いた水色のワンピースに喜んでいた。

ノクティアは、白いワイシャツに黒いジャケット、長い脚が目立つ細身のパンツを身に着けていた。

「……これから向かうのは、この世界の上層部だ。」

感情を圧し殺した声で、ノクティアが話す。

「見窄らしい格好では、逆に目立ってしまうのでな。それなりの身なりをしてもらう。」

私はその時は、彼女が何を感じていたのか、全く分からなかった。


私達の出てきた施設の外壁に沿って歩いて行く。

暫く歩くと梯子が降りていた。

「ここから上に入る。……上の連中の暮らしを、見ると良い。」

梯子を掴み、何かを考える様に目を閉じる。

キリッとした視線を梯子の先へと向け、ノクティアが登り始める。

私達もそれに続く。

ショートパンツの私がノクティアの後に続き、ワンピースのアカネが最後に登る。

梯子は、どこまでも続いている様に感じられた。

乾いた風の音だけが聞こえていた。

梯子を登り終えると、手摺りも無い、組まれた細い足場に着いた。

ノクティアがずんずん進んでいく。

「ちょっと待って!こんなとこ、そんな急いで歩けないって。」

身体を押す風に、アカネはスカートを押さえていた。

「ふっ、夢の中ではこの程度、走っていただろう?……感覚は一緒だ。ついて来い。」

少しペースを落としてくれたが、それでもノクティアは先へ進んでいく。

「もうっ!」

ぼやいても仕方がない、と、覚悟を決めてのクティアの後を追う。

アカネも、風に髪を乱されながら、懸命に着いてきていた。

そして、表れた扉から、その内部へと入る。

中はとても静かで、水の流れる音だけが聞こえていた。

ノクティアのカツンカツンという、金属製の床を歩く音が響いていた。

暫く歩くと、上に向かう梯子があった。

「ここだ。ここから、中に入り込める。……我々の内部拠点だ。」

短く伝え、梯子を登り始める。

梯子の先を塞ぐ蓋を、コツコツ、コツ、コツコツ、コツコツ、と、二、一、二、二のリズムで叩く。

蓋が直ぐに動かされ、光が差し込む。

ノクティアに続いて私達もそこから上がる。


倉庫の角に空いた穴から、三人の少女が這い出てくる。

「……下の様子は。」

倉庫の中に居た男がノクティアに問う。

「……酷いものだ。皆、虚ろな目をしている。……我々にも、受け入れるだけの準備が無かった。」

目を伏せ、彼女は静かに答える。

その右手が握られる。

「……そうか。折角目覚めたのにな。」

男が倉庫に置かれた木製の椅子に腰掛ける。

「……満足な餌を与えられ、不自由の無い暮らしをしている家畜は、突然野に放たれたらどう思うんだろうな。」

暗い表情のまま、男が呟く。

「……。これから、劇場に向かう。彼女達は、魔法少女だ。……この世界の構造を、見て貰おうと思う。」

男は、少し驚いた顔をした後、穏やかな笑顔を浮かべる。

「……そうか。その目で、確かめてくると良い。自分達の守っていたものを。……ノクティア、彼女達は一度夢に戻るのだろう?」

「ああ、その予定だ。……まだ、演目は続いている。戻るとしても、誰も文句は言わんよ。」

穏やかな顔のまま、男が目を閉じる。

外から、音楽が小さく聞こえていた。

「……お嬢さん方、これから、醜悪なこの世界の仕組みを知る事になる。見て、考え、悩んで良い。俺等に不安をぶつけても良い。でもな、最後は、自分で決めるんだ。……行ってきな。」

口角を上げ、手を差し出す。

二人は、握手を交わし、倉庫の出口へと向かう。

倉庫から出ると、そこは小さな商店だった。

店先から外を眺める老女がこちらにちらりと目を向ける。

そして直ぐに視線を外に戻す。

「劇場のチケットを、三枚。」

ノクティアが告げると、老女は黙ってチケットを取り出す。

ノクティアが二人へと分配する。

「入口で確認される。一日パスチケットだ。……長く居られる程、気持ちの良い場所では無いがな。」

そして、ドアを開く。

差し込む光に目が眩む。

外に出てから、眩しさばかり感じるな、と、ぼんやりと考えていた。

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