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魔法少女の物語  作者: ピザやすし
第三楽章 夢から覚めて
14/20

第14話 偶像

薄暗い建物の出口が開いていく。

光が差し込み、砂と共に、乾いた風が吹き込む。

少しずつ開いていく出口の隙間から吹き込む風が、ひゅー、と、音を鳴らしていた。

そして、眩しい光に思わず顔を手で庇う。

掌で影を作り、外を見る。

そこには、同じ様な布を纏った人々が、ただ、座っていた。

一瞬、その姿を人形かと思った。

彼等は億劫そうに、私達の姿を一瞥し、直ぐに興味を失って元の姿勢に戻っていく。

そんな人々の姿が、見渡す限りに広がっていた。

「……これが、現実?」

夢の中に居た、生きる為に、懸命に水を運ぶ人々。

ここに居るのは、生きる意味を失い、ただただ虚空を見る人々。

アカネが、大きく目を見開いて、そのまま固まっていた。

「……あの災害で、殆どの者は死んだ。……ここに居るのは、あの時目覚めた者達だ。」

真剣な眼差しで彼等を見ながら、ノクティアが言う。

「……あれ程、解放を、と、掲げておきながら、実際に一万もの人々が目覚めたら、食料も土地も、着る物も、何もかもが、足らないんだ。」

悔しさと、悲しみの混じり合った表情で絞り出した言葉には、悲痛さが滲んでいた。

「……我々の指導者へ会わせよう。」

歩き出すノクティアの後に続く。

生気を失い、虚ろな目で遠くを見詰める人々の姿は、悪夢の様に思えた。


「ルミナス。」

テントの中にノクティアが入ってくる。

筆を止め、そちらに目を向ける。

ノクティアの後ろに、ノクティアよりも若い少女が続いて入ってきた。

「……彼女たちは?」

「こちらから、アサヒとアカネ。魔法少女だ。」

「っ!」

思わず立ち上がり、机に当たった衝撃でペンが床に落ち、インク瓶が倒れる。

「ああ、すまない。」

倒したインク瓶を戻し、筆を拾う。

インクがその黒を紙に広げていく。

「大丈夫か?ルミナス。その手紙は大切なものだったんじゃ……」

「手紙は書き直せば良い。……それより、魔法少女が、何故、ここに?」

零したインクを拭きながら椅子に座り、姿勢を正す。

少し茶色い紙のほぼ全面に広がった黒は、まるでそこに空いた穴の様に見えた。

長い髪の少女が前に出る。

「私達は、本当の事を知りたいのです。……私達の暮らしは虚構で、ここが、現実だと。」

意志の灯った、明瞭は声が響く。

「……知って、どうするのだ。……知らなければ、平穏な夢を、見ていられただろうに……」

俯き、絞り出した声は、自分でも驚く程に、力が無かった。


「……ルミナス?」

ルミナスの様子は、明らかにおかしかった。

人々の解放を掲げ、解放した人々が生きる為に、今も手を尽くそうとしている男が、今、一体何と?

「……すまない。挨拶がまだだった。私はルミナス。この、告醒会を導いている。」

ルミナスが立ち上がり、歩いて来る。

二人の前で立ち止まり、しっかりと握手を交わす。

その様子を見ながら、予定を伝える。

「二人には、明日、劇場を見てもらおうと思っている。」

「……劇場?」

アサヒが疑問を発する。

「お前達の夢を、娯楽として消費している場所だ。……その目で、確かめると良い。」

二人が頷く。

「それでは、我々はこれで失礼する。」

二人が頭を下げて付いてくる。

劇場に行くからには、二人の衣服を調達しないと。

そう考えていた。

「……魔法少女、だ。」

声の方に顔を向ける。

恐らくテント内の会話を聞いていたのだろう。

「……あ……ああ……」

私達の姿を、涙を浮かべながら彼は見ていた。

いずれ、魔法少女がこちらに居ることは明かすつもりだった。

あくまで彼女達が、我々に賛同してくれるのなら。

「……少し、不味いな。」

強制はしたくなかった。

幸福な夢を見続ける事を、誰が責められようか。

皆、救済の象徴が欲しいのだ。

それを、この少女達に負わせたくは無かった。


魔法少女が居る、と、その日の内に、拠点中に広まった。

魔法少女へ祈りを捧げる声が、夜遅くまで木霊していた。

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