表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女の物語  作者: ピザやすし
第三楽章 夢から覚めて
13/20

第13話 覚醒

人気の無い場所として、いつも話し合いに使っている役所の図書室を選んだ。

電気は復旧していたが、水道がまだ止まっており、外では相変わらず水を求める人々が列を成していた。

時計は午後二時五十分を示していた。

私達の間に言葉は無かった。

壁に掛けられた時計の、時を刻む音を聞いていた。

アカネの手がそっと重ねられる。

顔を上げると、彼女は微笑んでいた。

「きっと、大丈夫です。」

彼女が柔和な表情のまま目を閉じる。

「……不安が無い訳ではありません。」

私の手に、重ねられた彼女の不安が伝わっていた。

「……そうだね。ふふ、アカネがどんどん先に行っちゃう様な気がして、私だけ、目覚めるのを怖がっているのかなって。」

ずっと、心の中に渦巻いていた重りが、すっと軽くなった様な気がした。

重ねられた手を、もう一方の手で包む。

「……自分の力が、怖かった。……こんな力、どう振るえば良いんだろう、って。」

握った手に額を当てる。

アカネの手が私の髪に触れる。

「……もっと、私を頼ってください。私達は、パートナーなんですから。……それに、私も、アサヒさんに救われているのですよ。」

ふふっと笑う。

「……あ……」

その瞳が何も映さなくなる。

名を呼ぼうとする私から、アカネが、世界が遠ざかっていく。

皮膚の下を何かが這い回る様な違和感に、鳥肌が立つ。

私が、世界に溶け、掻き混ぜられる。

そして、私は、私の身体から引き摺り出され、折り畳まれていった。


「ひぁっ!」

がばっと、身体を起こす。

ぷつっと、うなじから何かが外れる音が聞こえた。

心音がバクバクと音を立てていた。

喉を込み上がる吐き気を抑え込み、周囲を見る。

椅子の様に、上半身が斜めになった、身体にフィットする温かいベッド。

眼前にあるのは透明な面。

それ越しに、淡い光を中から放つ、黒い卵が見えていた。

そっと前面のガラスの様な面に触れる。

プシュー、と、ガスが抜ける様な音が鳴り、ガラス面が上に開く。

「……気分はどうだ?」

ノクティアから布を渡される。

私は、服を着ていなかった。

「……最悪な気分。」

「ふふ、そうか。」

ノクティアが上機嫌に笑っていた。

綺麗な笑顔だな、と、思った。

「さて、次はアカネの方だな。場所は分かっている。行くぞ。」

「ちょ、ちょっと待って!これ、どうすれば……」

渡された一枚の布をどうして良いか分からず、尋ねる。

露骨に溜息を吐かれる。

「……適当に身体に巻いておけ。目覚めた者には、まずそれを支給する事になっている。」

バスタオルを巻く様に押さえ、ノクティアの後ろに続く。

ノクティアの服は、白いワイシャツにデニムパンツ。

足元には黒いヒールが、薄暗がりの、僅かな光を反射していた。

「なあ、あんたの恰好は?」

「一応、告醒会の中では上の方でな。見窄らしい恰好はできないだろう。」

こちらを見ないまま、コツコツと歩く音が響く。

「……悪かったな、見窄らしくて。」

「何か言ったか?」

「いいえ!隠す物があるだけありがたいなぁ!と!」

軽口のつもりが、ノクティアの顔が曇る。

「……すまないな。今は物資も、土地も、何もかも、不足しているんだ。」

「……。」

言葉を返せず、ただ彼女の後を進む。

三つ程扉を通り抜けた次の扉を開ける。

「っ?!」

息を呑む声が聞こえた。

「アカネ!」

「……アサヒさん?」

卵の後ろに隠れるアカネにノクティアが布を渡す。

「これ、初期装備だってさ。ゲームの勇者だって、布の服くらい着てるのにな。」

笑いながらアカネに言う。

アカネはきょとんとした後、ふふ、と笑う。

「アサヒさんは変わらないですね。……本当の事を言うと、とても、寂しくて、少し、後悔していました。」

アカネが目を伏せる。

「さて、外に出るぞ。大勢いるから、恥ずかしくない様に、しっかり押さえておけよ。」

ノクティアが歩き出す。

その後ろを二人でついて行く。

意外と普通だった、と、私は明るく話し続けた。

何だ大したことはないじゃないか。

……ちょっと、気分は悪かったけど。

歌を口遊みながら歩く私の隣で、アカネはずっと、不安そうな顔をしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ