表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女の物語  作者: ピザやすし
第三楽章 夢から覚めて
12/20

第12話 邂逅

目覚めの明星との対話を試みる。

そう決めたものの、それから目覚めの明星はなかなか現れなかった。

家族で配給を受け、その後にアカネと合流して方針を話し合う。

そんな日々が繰り返されていた。


「……アサヒさん、お願いがあります。」

アカネの顔は真剣そのものだった。

「私は、まだ自分の目で港湾地区を、私達のしてしまった事を、見ていません。……行って、この目で確かめたいのです。」

その言葉を真っ直ぐに受け止める。

「……分かった。行こう。」

本当は行きたくなかった。

あの日の光景が脳裏を過ぎった。

海面に浮かぶ様々な色が、それが何だったのかを、確認したくなかった。

雨の中で見た、絶望した人の顔を、思い出したくなかった。

けれど、目を背けているだけでは駄目だと思った。

私は、私の罪を、きちんと受け止めなければならない。


港湾地区に近づくに連れて、異臭が鼻を突いた。

吐き気を催す、強烈な異臭。

そして、肌に纏わり付く様な、重い空気を感じた。

港湾地区に人影は無かった。

近付いてはいけない、と、本能的に感じた。

私達は顔を見合わせ、頷き合う。

戦闘を行った、港の在った場所へと、足を進めた。


「あ……」

港だった場所に空いた大穴の前で、膝を付き手を顔の前で結び、祈りを捧げている、長い金髪の女性が居た。

祈りを邪魔しない様、少し離れた所で足を止める。

「……ただ、生きていたいと、そう、願っていた筈なのに、どうして、そんな当たり前の願いが、叶わないのだろうな。」

波の音だけが響く場所に、祈りを捧げる女性の声が風に乗って届く。

その言葉は、私達に向けられていた。

「……目覚めの明星の方、ですね。」

アカネが一歩前に出る。

「……ああ。お前達の敵、破壊と死を、齎した者だ。」

「違う!……これは、私が、引き起こしたんだ……」

声が震えていた。

喉が乾いていた。

目の奥が熱かった。

「……だったら、どうするのだ?魔法少女。」

祈りを終え、立ち上がり、振り向く。

長い、束ねられた金髪が靡く。

「……話を、させてください。……私達は、これまで、貴方がたを知ろうとしませんでした。……その事が、私達の罪です。」

女性がこちらへと歩き出す。

その目に敵意は無かった。

「……あの時、私が光に喰われ、消えたのは覚えているな?」

ごくり、と、喉が鳴った。

「……ああ、覚えている。」

私の返答を聞き、静かに目を閉じる。

波の音だけが、重い空気を揺らしていた。

「……ここは虚構の世界。人々の見ている夢なんだ。……そして、その夢を、娯楽として消費している者達が居る。……私達は、その構造を破壊し、人々の解放を願う者。」

ゆっくりと開かれた目は、少し俯いていた。

「……そんな理想で動いていたのだがな。……この有り様だ。テロリスト、と呼ばれても、否定できない。」

「……貴方は、この状況を望んでいない、と、そう伺いました。」

「ノクティアだ。私達の組織は告醒会と名乗っている。……目覚めの明星は実行部隊を指す名だ。」

彼女の目が海へと向けられる。

「こんな状況を、我々は――いや、少なくとも私は、望んでいない。」

「……ノクティアさん、私達二人を、目覚めさせて頂けませんか?私はアカネ。こちらがアサヒです。」

その依頼に、息を呑む。

「アカネ、何を言って……」

「アサヒさん、私達がその話を信じる為には、目覚めてみるのが一番だと思うのです。外から見ないと、自分達の立っている場所すら分からない。それに、ノクティアさんがここに居るのですから、出入りできる、と言う事です。」

アカネが微笑む。

ノクティアが、ふっと笑みを零す。

「良いだろう。明日の午後三時に二人を目覚めさせよう。人気の無い場所に居てくれ。……目覚めは、苦しいぞ。覚悟しておいた方が良い。」

「……分かりました。お願い致します。」

アカネの隣で頷く。

「私はこれから二人の身体を探そう。」

遠くを見る様に、その視線が展望台のあった方へと向けられる。

その長い髪が、風に揺れる。

「……数が多くてな。約束の時間までに見つけ出そう。」

こちらを向き、憂いを帯びた笑みを浮かべる。

彼女の身体が風に溶ける様に揺らぐ。

「次は夢の外で。また会おう。」

揺らぎが大きくなり、その姿が風に消える。

彼女のいた場所を、暫く眺めていた。

そして、覚悟を決め、私は前に歩き出す。

「……アサヒさん?」

「……私のした事だから。私も、きちんと祈りたいんだ。」

港だった場所に空いた穴には、波の運んだ影が漂っていた。

その姿を目に焼き付け、ひざまずき、両手を結ぶ。

許して欲しい、なんて事は言えない。

ただ、私を憎んで欲しい、と。

もし、この悲劇を、娯楽として消費している奴らが居るのなら、みんなの憎しみを、必ずそいつらに届けてやる、と。

そう、祈った。

穏やかな波の音だけが響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ