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84.戻ってきた風景

第二部開始です。またよろしくお願いします!

 涼葉が準備してくれた朝食を頂いて、いつもの時間通りに出る。

 そんな当たり前の事がなんだか嬉しいし、なんだか世界も違って見える。


「りょういちくんもなんだかご機嫌ですね?」


 隣を歩く涼葉が、諒一の顔を眺めてそう言った。


「やっぱわかるか。うん、前には経験できなかった事をたくさんしてるし、こうして女の子と並んで登校するなんて考えられなかったからね」


「今回はちゃんと青春してると」


「そう!それ。しかも相手が涼葉だからな」


「む……それは喜んでいい方ですか?」


「なんでそこで迷うの」


「だって……私、色々と問題ありますし、いっぱい迷惑かけましたし……引っ込み知りですし」


「俺だってそうだよ。だからこそ親近感が持てたんじゃないかって思ってる。涼葉も言ってるけど、引っ込み知りなら俺が元祖なんだからね?涼葉みたいに可愛い子、前の俺なら話しかけるなんて事、とてもできなかったと思うし」


「そうですか……」


 そう答えた涼葉は、少し俯く。それで諒一は失言に気づいた。


「あ、ごめん。かわいいって言われるのいやだったね。」


少しシュンとした様子で諒一がそう言うと、涼葉は慌てて首を振る。


「あ、違います!その、前のりょういちくんだったら、話しかけてくれないの寂しいなって思っちゃって……あの……りょういちくんにかわいいって言ってる貰えるのは嬉しいです。もっと言って貰える様に頑張るつもりですので!」


「や!嬉しいならいいんだ、涼葉を見てるとついポロって言ってしまいそうになるから……その、程々にね?俺が着いて行くのが大変になるから……」


「嫌です。もっとりょういちくんをぎゃふんと言わせるんです!」


 そう言ってプイッと前を向くと早足で歩き出した。


「ちょ、勘弁して。主に俺の心臓にダメージが入ってるから!どーすんのびっくりしすぎて止まったら」


それを聞いて涼葉は後ろ向きに歩きながら言った。


「そうしたら、次は何歳のりょういちくんに生まれ変わるんですかねー。ちゃんと教えてくださいね?りょういちくんなら五歳くらいから、上はそうですねぇ、四十歳くらいまでなら私大丈夫ですから!」


「ストライクゾーン広!」


「ふふっ!」


 そんな事を話しながら歩いていると、いつの間にかかなり進んでいるから不思議である。

 気づくと、遠くから篠部が叫んでいた。


「おーい!涼葉ちゃーん、諒ちゃーん!おっはよぉー!」


「……あんな距離で挨拶されて、返事しろとか言わないよな」


「むー、私達にはちょっと難しいですね。公衆の面前でああはなかなか……」


 篠部に気付いてから早足で歩いていたのだが、待ちきれなくなったのか、篠部のほうから走ってきた。


「遅いー。そんで挨拶したのに無視された、ひどい!」


 そう言って頬を膨らませる篠部を諒一が半目で見る。


「あんな距離で挨拶しあう奴がいるか!俺の声通らないからめっちゃ大声出さないといけないじゃないか」


篠部はその間にも涼葉の隣に移動して腕を組んでいる。


「諒ちゃんはもっとお腹の底から声を出さないとー。まぁいいけど。そうだ!いきなりなんだけど、ね、すぅちゃんって呼んでいい?」


「え?え?」


 本当にいきなりすぎる。全くついていけてない涼葉が、視線を彷徨わせている。


「篠部、話が飛び回りすぎだ。涼葉が目を回すぞ?でも本当にいきなりだな」


「んー……なんとなく。かわいくない?すぅちゃん」


「かわいい……とは思う。でも、涼葉次第だろ」


 実際呼ばれるのは涼葉だ。涼葉が嫌ならどんなかわいい呼び方でもだめだろうしな。

 そう思って涼葉を見ると、なぜか涼葉は、篠部ではなく諒一の方を見ていた。


 じー…………


「あの…………。どしたの?」


「……かわいいですか?りょういちくんはかわいいと思いますか?」


「へ!?俺?」


「ほーん。諒ちゃんはさっきかわいいって思うって言ったよねぇ?」


 涼葉がそんな事を言うので、篠部はニヤニヤと笑いながら諒一を見てくる

 

「ちょ、待って、なんで俺が見られてるの?おかしくない?涼葉の愛称でしょ?」


「いえ、お気になさらずに。私は別にどのように呼ばれてもこだわりはないので……ただ、りょういちくんがかわいいって思ってくれるかな?と思いまして」


「俺関係なくない⁉︎」


「何言ってんの諒ちゃん!大事なことに決まってるじゃん!知らないけど……」


 言い出しっぺのくせにいい加減な篠部を睨みたいけど、間にいる涼葉がずっとこっちを見ているので、やりにくい。


「じー……」


「か、かわいいと思います……」


「いいですよ?私もるみちゃんって呼んでいいですか?」


 諒一が言った瞬間、くるりと篠部の方を向いた涼葉は、普通に自分も砕けた呼び方をしようとしている。もちろん篠部がこれを断るはずはない。


「あったりまえじゃーん!じゃあ、あらためてこれからすぅちゃんでよろしくね?」


「はい!るみちゃん」


 二人仲よく話しながら歩いているが、諒一はどっと疲れていた。

 俺の意見いったの?


 小さくつぶやいていると、もう校舎の近くまで来ていた。

 篠部は交友関係も幅広く、校舎の中を歩いていると頻繁に声をかけられる。

 涼葉はお近づきになりたい人が男女問わずちょこちょこ話しかけてくる。

 俺は……いや、いいんだ。俺こそが元祖引っ込み知り。ほっといてくれていい……


「どったの?諒一、めっちゃへこんでるけど」


「へこんでないし!」


 壮太の軽口に、つい勢いよく言い返してしまう。

 

「お、おう……」

 

 そこまで言われるとは思ってなかったのだろう、壮太は若干引き気味に返事をした。

 

「悪い……おはよう壮太。」


「あ、ああ。おはよ……そっか疲れてるんだな、昨日の今日だからな。」


 我に返って謝ると、そう言いながら壮太は諒一の肩をポンポンと叩いて、先に教室に入って行った。


「ん?」


 なんで壮太が?……と、首を傾げていると、篠部が背中を押してくる。


「ちょっと諒ちゃん、入り口で立ち止まらないで!入った入った!」


 しまった、つい立ち止まってた。


 教室の中に入り、自分の机に座って荷物をかける。そうすると、いつものメンバーが周りに集まる。

 こういう事も前の時はなかったな。そもそも、俺が教室に存在する事がレアだったか。


「はよう、水篠。」


「おはよう、大志。昨日は色々と助かったよ、ありがとうな」


「ふ、何言ってんだ。俺は何もしちゃいない。お前が頑張ったから卯月さんはここにこうしているんだろ?」


 そう言って大志はメガネの位置を直しながらイケメンスマイルを向けてくる。


「そういや、大活躍だったそうじゃないか!諒一、ベランダから潜入するって映画かよ!そんうぐ……」


「お前は……」


 大志が眉間に皺をよせながら、壮太の口を乱暴に塞ぐ。


 横を向くと、涼葉はどこか遠い所を見ているし、篠部は額に手を当てている。


「壮太……随分と色んな事知ってるな?昨日の夜の事なのに……どこまで知ってるのか、ちょっと聞いてみたいなぁ」


 なぜか昨日の出来事を知っていそうな壮太に、そう言ってみると、大志は頭が痛そうにしながらメガネを触っている。壮太は慌てた様子で、首を振りながら手をヒラヒラさせている。


「い、いや俺は……そんな篠部がメッセージで教えてくれたくらいしか……」


「あっ、このバカ壮太!なんでそれ言うかな?」


「ほうほう、情報の出どころは篠部と……」


 キラリと光った諒一の目が篠部に向く。それに篠部は戸惑っている。


「はぁ……まったく。お前の脳みそは垂れ流しなのか……水篠、るみも卯月さんも責めないでやってくれ、俺達が気になって無理に聞き出したんだ」


 壮太を呆れた顔で見た後、諒一に若干申し訳なさそうな雰囲気をだしながら、大志がフォローする様に言った。


「まあ……心配かけたのは事実だから、そう言われると……」


「そ、そうだよ、諒ちゃんがかっこよかったって聞いたら、そりゃ聞きたくなるのも仕方ないじゃない?」


「ほう……?」


 さらに新しい情報を口から滑らせた篠部は、しまったという顔をしているが後の祭りである。

 さすがにフォローしきれないのか、大志は眉間を揉んでいる。


視線を逸らす篠部の手前では、涼葉がずっと向こうを向いている。まぁ、ここからしか漏れようがないのだが……


「涼葉さん?」


「…………」


「……すぅちゃん?」


 そう言った瞬間、ボッと火がついたように、涼葉の耳が赤くなる。

 油の切れた機械みたいな動きでこっちを向く涼葉は、だいぶ視線を彷徨わせていた。


「りょっ!りょういちくん、はっ!その呼び方しちゃダメです……」


「篠部はいいのに?」


「だ、ダメです……」


「俺の情報は横流しするのに?」


「そっ、それは……りょういちくんがかっこ良かったのは……ホントです、もん……」


「まったく……まぁこの仲間うちだけならいいけど……頼むから言いふらしてくれないよう……に、すぅちゃん?他誰に言った?」


 スッと目を逸らすのを見た諒一がもう一度突っ込むと、あっさり折れた涼葉は、真っ赤な顔で言った。

 

「も、もう!楓花さんだけです!」


「ああ……そういや大野さんも一緒にいたな。」


「正直に言いましたから!も、もう言っちゃだめですよ?」


「何を?すぅちゃんを?」


「もうっ!ばか!」


 そう言った涼葉が諒一の腕を叩いた。よほど恥ずかしかったのか、割と痛かった。


 

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