59. 付き合ってる
次の日も同じように壮太たちは諒一たちをかばうようにふるまってくれた。
昼休みにはしっかり諒一の分も作って来てくれた弁当をひやかしとうらやましさを半々にからかって来たが……
それでも壮太たちが気を使ってくれているのが分かって申し訳なさが立った諒一は涼葉に一言言って、伝えることにした。
学校が終わって、諒一は壮太たちをファーストフードに誘った。意外そうにしていたが快く了解してくれたものの、篠部は別で涼葉と約束があると言った。
もしかしたら女の子同士で話すのかもしれない。そう考えて涼葉に任せた。
「で、どうしたの急に」
別に何か食べたかったわけでもないし、食べ物に興味がない諒一がファーストフードで間食するのを意外と思っていたのだろう。何か話があるという事にすぐに思い至ったようだ。
実際諒一はシェイクしか頼んでいない。誘った以上おごると言ったが二人はポテトセットしか頼まなかった。
「うん、実は二人に言っておきたいことと、謝りたいことがあってさ……」
諒一がそう言うと二人は顔を見合わせて怪訝な表情をしている。まだ仲がよくなってそれほど経ってもいないし、謝られるような事に心当たりもないからだろう。
「そんな改まって……水篠が何を気にしているか分からないけど、俺たちは何も心当たりはないぞ?」
大志はポテトをつまみながらそう言った。そう言ってくれるのを嬉しく思いながら、余計に申し訳なく思ってしまう。
「実はさ……涼葉との事なんだ」
「なんだよ、ケンカでもしたのか?」
壮太が身を乗り出してくる。大志はじっと諒一を見ている。
「いや、ケンカどころか……実は俺たち付き合っていたりしてないんだ」
そう言って、付き合うフリをするようにした経緯を話した。二人は嘘をついていたことに怒る事もなく黙って聞いてくれた。
「ふーん……事情はわかったけどさぁ……なんつーか、まじめだよなお前」
話を聞き終えた壮太はどこか呆れたような顔でそう言った。
「まあそう言うな、諒一なりに考えての事だろう。確かに仲がいい奴に隠し事をするっていうのは気後れするもんだしな」
大志は諒一の気持ちがわかるらしく、そう言ってくれた。
「そうだなー。まあ確かに卯月さんかわいいしな。転入して早々あれだったからな」
壮太が苦笑いしながら言うのは牛島の一件の事だろう。諒一も警戒はしていたが、いきなり起きるとは思っていなかったくらいだ。
「うん、諒一の考えはわかるし、卯月さんも納得しての事なら俺たちは何も言わないさ。二人に合わせておけばいいんだろ?」
意外にあっさりそう言ってくれた事に諒一の方が拍子抜けしている。
「そうなんだけどさ……その嘘ついていたわけだし、怒らないのか?」
そう言った諒一に二人は顔を見合わせて笑った。
「怒るって、そりゃ嘘つかれていい気分はしないだろうけど、お前の言う嘘は卯月さんを守るためのもんだろ?それに俺たちに何か被害があるようなもんでもなし、気にすんなよ。そう言うところが真面目だっつってんだよ」
壮太はそう言って笑い飛ばす。
「壮太の言う通りだ。怒るどころか、お前が実直なやつだってわかって嬉しいよ」
そう言ってくれて諒一は嬉しかったが、少し納得いかないとは照れくささからだろうか。
「そう言ってくれてほんとにうれしいけどさ……嘘ついてたのに、なんで真面目とか実直だって話になるんだよ」
照れもあり、口を尖らせた諒一を見て、二人は笑みを深めた。
「その真面目さは美徳だけど欠点にもなりえるぞー?」
「まったくだ。別に黙っていても俺たちには何の被害もないのに、お前は心苦しくなって話した。そういう奴ってことだろ?お前は」
そう言って二人してバンバンと肩を叩いてくる。いつしか諒一も笑顔になっていた。
家に帰ると、鍵が開いている。最近は涼葉が来る事が多くなったし、涼葉の持つ鍵でも諒一の部屋は開けられるため、いなくても勝手に入っていいと言ってある。
玄関を開けると案の定、涼葉の物らしき靴がきれいに揃えてあった。
「おかえりなさい」
玄関が開く音がして、諒一が帰ってきたのがわかったのだろう、涼葉がリビングのドアから顔だけ出してそう言って来た。
「た、ただいま……」
「?」
少し動揺して返事した諒一に涼葉は少し首を傾げたが、すぐにキッチンに引っ込んだ。
「ごめんな、いつも料理させて……」
料理を作る涼葉にそう言うと、手を止めて諒一を見た。
「りょういちくんは学校とかで私をかばってくれた時に、その度たびにお礼を言われたいですか?お望みならもちろんそうしますけど」
「い、いやそう言う事は……」
いきなりそう言われ、言いよどむ諒一の鼻先に涼葉は人差し指を立てて言う。
「それならりょういちくんも必要以上に悪いと思う必要はないです。もちろん感謝をしてくれることはうれしいですけど、」度を超してくるとこっちも負担になります」
「ああ、そうか……うん悪かった」
そういうものかと考えると確かにそうだと思い、素直に謝ると涼葉はニコリと笑って、「分かればいいんです」
と、調理に戻った。
もちろん諒一も手伝いはするのだが、調理の手順の問題もあるしそもそも速度や技術が違いすぎるので、本当に「お手伝い」という事しかできない。
もうすこしちゃんと覚えないと……そう思うのだ。
「どうでしたか?」
不意に涼葉がそう聞いてくる。壮太たちに話すことは言ってたから、その事だろう。
「ああ、こっちが拍子抜けするくらいあっさりだった」
そう言うと涼葉は微笑んだ。
「こっちも同じような感じでしたよ」
と、涼葉は言う。思った通り、涼葉は女の子同士で篠部と話してくれていたらしい。
「まあ……ちょっと、なんというか……張り切っちゃったといいますか」
ほっこりしていると涼葉の歯切れが悪くなり、一抹の不安を覚える。
「張り切ったって?」
不安になった諒一が聞くと、涼葉は苦笑いになりながら
「「分かった!二人の事は私がしっかり応援してあげるよ!じゃあ」って言って帰ってしまって……その、止める間もなく」
その様子が頭に浮かんで諒一も苦笑いになる。
「ま、まあ、暴走しそうだったら大志たちに言って止めてもらうよ」
それからしばらく平穏な生活が続いた。諒一も涼葉もゆっくりとだがクラスにもなじんでいった。ただ、あからさまに諒一に敵意をむき出しにしているグループがあった。牛島たちである。
「しょうがないなあ、あいつらも……」
通りすがりに目が合い、思い切り睨みつけてきた所を壮太がさらって来たのだ。
「まぁ俺は涼葉に害がなければそれでいいよ。」
今の所、あれから牛島とその仲間が涼葉に対して何かしてくることはなかった。ただ、諒一に対してあまりに当たりがひどいので、壮太と大志が話をしに行ったのだが、関係ないの一言で終わってしまった。
放っておくしかないと思われたのだが、事態は急に動き出した。




