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58. 付き合ってる

先生が来て授業を始めるくらいには、涼葉は泣き止んでいた。目の周りが赤いのはどうしようもなかったが……

一限目の授業は担任の梶先生だったが、涼葉を見て一瞬止まったが、何も言わず授業を始めた。


午前の授業が終わり、昼休みになると篠部が涼葉を伴って諒一の机の所までやっていた。自然と大志と壮太もやってくる。

授業の合間、篠部は涼葉の近くにずっといてくれていた。涼葉の表情を見る限り、だいぶ打ち解けているようでうれしく思っていた。


「ねえねえ、諒ちゃん」


「り、諒ちゃん⁉」


いきなり親し気に呼ばれ、思わず聞き返した。その隣では大志が顔に手をあてて、ため息をついている。


「そ、諒一だから諒ちゃん。だめ?諒一くんだと涼葉ちゃんとかぶるし。あ、別に特別な意味はないよ?親しみを込めてって意味で」


「い、いやだめとは……言わないけど」


涼葉を見るとニコニコしている。涼葉は気にしていないようだ。それなら別にいいかと思う。というか諦めた。


「まあ……好きなように呼んでくれていいけど……」


諒一がそう言うと、篠部は満足そうにしている。そう言えば、大志の事も大ちゃんって呼んでいたし、きっと壮太も壮ちゃんなんだろう。

そう思ったのだが……


「ちょ?そしたら俺だけ仲間外れなんだけど?」


壮太がそんな事を言い出した。壮ちゃんじゃないのか?と篠部を見ると、少し冷めた目で、言い返す。


「あんたは壮太でしょ。それ以外にないわよ」


そう言われ、壮太は両手を頭に当てて、オーマイガッ!と叫んでいる。言うほどショックを受けている様子はない。

……こういうキャラなんだと思っておくことにする、


「もう……そんで諒ちゃんはお昼ご飯はどうするの?」


篠部は手に弁当が入っているらしき包みを持っている。一緒に食べようということだろう。


この学校は給食のシステムはないらしく、生徒はお弁当をもってくるか売店でパンなどを買って食べるかしているようだ。諒一は来るときにコンビニで買ってきているので、買いに行くことはない。


そう言うと、篠部はにっこりと笑って、じゃあみんなで一緒に食べよう!と、机を寄せ始めた。涼葉も同じようにしている。

もちろん大志や壮太も一緒に食べるため、諒一の机にみんな寄せてきた。

涼葉が諒一の机にぴったりと寄せてきてニコニコと弁当を出しているのを見て、篠部はいい奴だなと思った。


もちろん壮太や大志も朝の一件以来、意識的に俺と涼葉をかばうようにふるまってくれていたし、篠部は涼葉にぴったり寄り添って離れなかった。

まだ、この学校に通い始めたばかりだというのにいい友人に巡り合えて諒一は心から感謝していた。


……前の学生生活で、こんな友人はいなかったな。などと考えながら。


「え、諒ちゃんそれだけ?それで足りるの?」


昼飯を食べようとカバンからコンビニで買って来た物を出すと篠部がそう言ってきた。諒一の机の上には、おにぎりセットとお茶が乗っている。おにぎりセットはおにぎりが三つ入って、お漬物が添えられた弁当だ。食べ物に興味がない諒一が、比較的好きなのがおにぎりなので、金額も手ごろなこのセットを好んでいる。


「え、そうかな?」


そう言いながら周りを見ると、壮太が箸をくわえて信じられない顔で見ていた。その壮太はお弁当を作ってもらっているらしく、弁当箱を広げているが、量が多かった。諒一であれば一日分くらいありそうだ。


「諒一……お前、倒れるぞ?」


真剣な顔でそんな事を言ってくる。壮太の向かいでは大志が食べているが、こっちは諒一と同じく買って来た物のようだが、大盛りの丼ものを食べている。


大志は信じられないと言う表情に心配をまぜた顔で諒一を見ていた。


「ああ……ははは。俺少食だし、あまり食べ物に興味なくってさ」


そう言うと三人が何言ってんだという顔をする。


これは前の諒一にもよく向けられていた顔だ。食べ物に興味がない、腹さえ減らなければ別にたべないでもいい。おいしいものを食べるためだけに出掛ける意味が分からない。


諒一がそう言うとよく向けられていた顔だ。理解できないらしい。


「もう……りょういちくん、それ人生の半分くらい損してますからね」


涼葉がたしなめるようにそう言った。


「ああ、それ前も言われた事ある」


苦笑しながら言うと、軽く睨まれた。涼葉にしか分からない「前」に実際言われた事があったのだ。


「食べ盛りの少年がそれじゃあいかんなぁ」


お前は何者だと突っ込みたくなるような口調で篠部が言ったあと、何かいいことを思いついたというような笑みを浮かべる。

何か嫌な予感がした諒一は話題を変えようと思ったが、引っ込み知りにそんなスキルはない。あらかじめ構えてないと話題なんか出てこないのだ。


「時に、涼葉ちゃんのお弁当はすごいよねえ。自分で作ってるんだよね?」


急に話を振られた涼葉が驚きながら頷いた。たしかに涼葉の弁当は手が込んでいる。本人は晩御飯の余りに少し手を加えただけと言っていたが、とてもそうは見えないくらいだ。


篠部は頷いた涼葉をニマっと笑ってみている。


「ほら、彼女として放っておけないんじゃない?お弁当……作ってきてあげれば?」


「は?ちょっと篠部、そんな迷惑だろ。わざわざ悪いから、涼葉も……」


気にしないでいいと言おうとして手遅れを悟った。涼葉はその手があったか!みたいな顔をしていたし、やる気をみなぎらせていた。

一応、帰ってから気にしないように言おうと思ったが、無駄な気もする。


篠部がそんな涼葉を焚きつけるような事を言っているから、きっともう止まらないだろう。ありがたいのだが、付き合っているのがフリなので、篠部達になんとも申し訳ない感情があるのだ。


大志も壮太も俺たちをかばってくれて応援しているそぶりを見せてくれているだけに非常に申し訳なくなる。三人にだけは本当の事を言った方がいいのかもしれない。

帰ってから涼葉とも相談しよう。そう考えながら諒一はおにぎりを食べるのだった。




「本当の事……ですか?」


家に帰ると当たり前のように夕食の準備に来た涼葉が諒一の言葉を聞いてそう言った。少し前から料理を習ったりしているので、諒一の家事のレベルは完全に把握されている。

涼葉の中で、諒一は一人暮らしをしていいレベルに達していないらしく、把握されてからは何かと世話を焼いてくれているのだ。


料理の手を止めずに聞き返してきた涼葉に頷きながら諒一は言った。


「そう。大志たちは俺達の事を応援してくれているのが分かるっていうか、それだけに俺たちがフリをしているだけなのを隠すのが悪いって思うんだよ」


そう言うと、涼葉も思うところがあるのか、手を止めて考え出した。


「そうですねえ。騙しているつもりはないですけど……事実そうなってますもんね……」


しばらく考えて涼葉が諒一を真っ直ぐ見て言った。


「私としてはどっちでもいいです。確かに気後れはしますけど……付き合っていなくてもりょういちくんとは……仲は、いいと、思ってます、し……」


後半を顔を赤らめながら言った涼葉は調理に戻っている。


「ま、それは、そうだな」


そう言われると否定する材料はないし、諒一自身も涼葉を特別に感じているのでなんとも言えない。


「りょういちくんに任せます」


結局にっこりと笑ってそう言われれば「わかった」と返すしかなかった。

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