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47.夏休みの終わり

 あじさいのあるマンションを出て、バスを乗り継いでどんどんと郊外に向かって移動していく。

 涼葉は事前に調べていたのか、時間も料金もしっかり把握していた。


 そして……バスを降りた諒一達は、涼葉に手を引かれながら歩いていると、見覚えのある広大な駐車場が見えてきた。


「あれ、ここって……」


 諒一が声をだす。


 そこは先日涼葉の部屋の水道修理のために部品を買いに来たホームセンターもあるショッピングモールだった。


「はい、この前来た時に色々な物が売ってあったのを見て……あまりホームセンターとか来ることがなかったので珍しくて……」


 前来た時にはゆっくりと見る時間はなかったので、見て回りたかったらしい。なるほど確かに工具好きな諒一も楽しめる店舗だ。


 広い駐車場を横切って店舗に入ると、よく冷えた冷房が暑い陽射しの下を歩いて来た諒一達の肌を冷やしてくれる。


 涼葉は焼けないように直接肌を露出させないよう対策もしていたので、日傘をさしていたとはいえ暑かっただろう。


 パタパタと手で扇いて冷えている空気を顔に当てている。


「ここは広いから全部見て回ろうと思ったら結構時間かかると思うけど、どうする?」


 入り口に入った所で壁に貼ってあるチラシなどを見ながら諒一が言うと、涼葉は少し悩んで言った。


「りょういちくんが嫌じゃなかったら、見て回りたいです。」


 開店したばかりの時間だが、それなりに客も多く喧騒に包まれているが、涼葉が発した言葉の最後に小さな声で「りょういちくんと一緒に……」と、付け加えたのが聞こえてしまった。


 (そんな事言われたら嫌なんて言えるわけない……)


 内心悶えながら諒一は笑顔で「嫌なんかじゃないよ」と平静を装う。

 それを聞いて、涼葉は嬉しそうに笑うのだった。


 ここのショッピングモールは、ホームセンターや衣料品店、電気屋やファストフードなどが入っている。

 さすがに今日一日で全部は見て回れない。そう言うと、涼葉はホームセンターを見たあとファストフードで食事をして衣料品店に行きたいと言う。

 

 もちろん諒一に否やはない。まずは自販機で飲み物を買って来た諒一は入り口に置いてある休憩用のテーブルセットに座って、涼葉にジュースを渡すと自分も飲んで休憩した。


 ここに来るまでに強い陽射しの中結構な距離を歩いている。最寄りのバス停からでも1時間ちょっとかかったのには少し驚いた。

 田舎あるあるだ。なにしろショッピングモールの他は田んぼしかない。こんな所にバス停がある方がおかしいのだ。

引っ込み知り同士にはつらい距離だったと思う。

 

「涼葉も少し休憩したほうがいいよ。」


「で、でも……これは商品では?」


 休憩用に置いてあるが、宣伝も兼ねてあるようでしっかりサイズや値段が書いてある札が置いてある。

 見るとなかなかのお値段だ。


「これは休憩に使ってもらいながら商品の宣伝まで兼ねてるんだよ。ほらここ」


 諒一が指差した所には、「どうぞ座って確かめて下さい」と書いてある。

 だからと言って休憩していいとまでは書いていないが、そこは気にしない。


 あ、いいんだ。そう思った涼葉はおずおずと腰掛けた。

 そしてテーブルの具合とかを確かめている。


「……値段が張るだけにしっかりしてますね。」


「これでアウトドア用だから畳めるんだ。ほら」


 隣には収納状態にした同じテーブルセットが置いてある。椅子も折り畳まれてテーブルの内側に収まって二つ折りになっているからだいぶコンパクトになっている。


「へぇ、いいですね……」


「お、アウトドアにご興味が?」


 少し興味のある諒一がそう聞くと、涼葉は使っている所を想像しているのだろうか、箱に印刷されている写真、家族が楽しそうに川辺でバーベキューをしているのを見ながら答える。


「……私はやった事ないですが、一度くらいはやってみたいですね。ちなみにりょういちくん、火おこしとかできる人ですか?」


「任せろ、割と得意だ。その後の調理は任せるよ」


 そう言うと涼葉は「適材適所ですね」と笑った。しばしアウトドアの話をしながらジュースを飲み干すと、涼葉も飲んでしまっているようだったので、手を伸ばす。


「はい?」


「や、空き缶。捨ててくる」


「あ、ありがとうございます」


 少しびっくりしたように空き缶を渡す涼葉に苦笑しながら諒一は自販機のゴミ箱に空き缶を捨てて戻る。


「涼葉って口調が丁寧なのは意識してやってる?」


 何気なく聞くと、どこかバツが悪そうな顔になった。


「別にいいんだ、単なる疑問」


 諒一はそう言ったが、涼葉は少し下を向いて話し出した。


「……その、私が敬語で話すクセがついてしまったのは、距離を起きたいためだったんです。敬語って少し距離感じるじゃないですか?私が他人に対して壁を作りたいから敬語を使ってたら、クセになっちゃって……ごめんな……」


「謝らない」


 遮ってそう言うとピタリと動きを止めた。


「その……無理して変える必要はないけどさ、想像していた通りの理由だったから、俺くらい気を抜いて話してもいいんじゃないかって、思って……。あと、俺は涼葉に対して滅多な事じゃ怒らないと思うし、涼葉が悪くない事で謝らない事」


「うう……」


「ま、クセって抜けないよな。ちょっと気に留めとくくらいで」


 そう言って、手を差し伸べる。涼葉は、手と諒一を交互に見ているので、嫌だったかな?と引っ込めようとしたら慌てて掴まれた。


「あ、ごめ……」


 じっと見つめる。


「り、りょういちくんが繋ぎたいなら、仕方ないです。つないであげます」


 涼葉がそう言ったので、思わず笑うと涼葉も「慣れないですね」と言いながら笑っていた。


 店舗の中に入るとありとあらゆる種類があり、色々見てみたいとと言う涼葉に合わせ、端から順に見て回る事にした。


「やっぱりいろんな物がありますねぇ」


 感心したように見て興味を引けば手に取って見て、歩く。


「あ、あれ。かわいいです」


そう言って涼葉が指さすのは、照明器具だ。シーリングライトと呼ばれる天井に付けるタイプの照明だが、少し変わっている。

中央に扇風機のようにファンがついていて、そのファンの外周が照明になっている。花をモチーフにしてあるようで、花弁を表した飾りもついていた。


「大きさ的に洗面所とか……6畳くらいの部屋用かな」


諒一がそういうと、涼葉はじっと見ている。


「りょういちくんってこういうのも取り付けたりできます?」


「取り付けたりできますよ?」


「……りょういちくんって、水道屋さんですよね?」


「そうだけど……まあ、覚えた。あのタイプの照明は簡単だから」


コンセントを増設したり、何もない所に照明をつけるのに比べたら全然簡単だよ。そう言うと涼葉は普通が分からなくなってきますと少し呆れたように言った。


「亜矢子さんが言ってました。一家に一台りょういちくんって」


容易に想像できて苦笑いしか出ない。


「まあ……便利な自覚はある。涼葉も何かあったら遠慮なく言うんだぞ?できる事ならやるから」


そう言うと涼葉はふいっと視線を逸らし、「その時はお願いします」と言った。


電器、電材のコーナーを過ぎると寝具などが並んでいた。カーテンの所を少し見たくらいで次に進む。

 そして隣のコーナーに入った瞬間、涼葉の声が弾んだ。繋いでいた手にも小さな力がこもる。

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