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-NOVA-  作者: 原田酒
二章 魂と放熱編
8/12

雨に唄えば

遅れました。毎度のことながら。

「『7』って、数字は縁起がいい...あの聖書の中で最も重要な数...それが7だ。俺はあの男、レストラ・タラスクを...7日も探し回ったんだ...でも、何かあったみたいだね?先ず君達郷衛神団を狩らなきゃ」


英数字7の形をした、マチェーテの様な武器がふたつ。背中に二丁のサブマシンガン。太腿にサバイバルナイフ。その他諸々...


「随分と物騒なやつが来たぜ、デアさん」


「何、あの男...」


2人の困惑した様子を他所に男は歩きながら話を進める。


「『7』は『幸福』だ...俺は幸福を手に入れる...その為に、今この地へ足を運んでいるんだが...今この場所に『幸福』は無い。何故なら目標に届かず、会うべき人間にも合流出来ていない...何より邪魔者が、目の前に。それも2人...」


「そこで止まりなさい!全ての武器を完全に身体から下ろして!」


既にデアは杖を構えていた。その杖先には光が集中していた。


「デア、気をつけてくださいよ..」


「わかってるわレックス、まだ撃ったりはしない。もう少し射程距離が近ければ」


「だが、残念。もう遅かったッ!」


数十mという距離をほんのわずかの隙に詰め、男はその7の形のマチェーテでデアに斬りかかった。


「させねぇっ!」


デアに刃が当たる寸前、レックスの大剣、ケルベロスが攻撃を受け止める。


「デア!今ですっ!」


「でもっ!レックスが危ない!」


「そんなこと言ってる場合ですか!早く!」


「ほぉぅ?お前レックスって言うんだな?」


構える。が撃たない。撃てない。少しでも焦点が外れれば、目の前の仲間の頭を貫いてしまう。


「クァァッ!」


デアが迷っている内に、男が二人を蹴り飛ばす。

その後華麗に着地を決めて、男が話し始める。


「お前達の記憶に残る様、名乗っておこう。

俺の名前は、ウロボロス。トラゴエディア・ウロボロスだ。最も、その記憶は俺に殺される所で途絶えるがな...」


その言葉には変わった「重さ」があり、何か悲しい様な。


とても言葉では言えない様な内容と、それに合わせた低音が、デアとレックス。二人の心を緊張させた。


「いいか?郷衛神団の屑共...俺の『幸福』への道の邪魔はしないでおくれよ...」


「てめぇのその『幸福』に向かわせない為に俺らがいるんだぜ...?それは無理な話だな」


「...ならば死ね!お前らの四肢と共に道を切り開く!覚悟する事だな...」


再び刃がぶつかり合う。火花が散り、お互いが一歩も譲らない。


「てめぇウロボロス...本当の目的を言えよ」


激しくなり行く戦闘の中でレックスは問いかけた。


「それは言えないな...レックス...宝くじが当たったのを人に言わないように...自分にとって重要な事や嬉しい事は他人に言わない主義なんだ...ましてやただの敵に、吐くわけがないだろう!」


「それもそうだろうな...だったら吐かさせてやるよ!俺の剣でな!」


二人の剣が弾かれたコンマ数秒、ウロボロスは背中に手を伸ばし、銃を取る。


手にした瞬間にもう発砲は開始されていた。後ろから前方まで隙間のない射撃をするために。


「危ねぇっ!」


「ふん、流石に当たらないよなぁ?レックス」


「こんなの当たってたら、もう死んでるぜ」


「じゃあ、これはどうかな?」


レックスの後頭部の近く。


何かが宙を舞っていることに、振り向かずとも気づいた。


手榴弾がすぐそこまで来ていた。いつ投げられたのかも検討が付かないが、瞬時にレックスは反応する。


自分の体ごと男に突進して、できるだけ手榴弾から体を遠ざけようとした。


そしてどんっとレックスは突っ込んだ。


「おいおい、随分とクレイジーな事をするな?レックス」


自分の懐にいるレックスを上から肘打ちし、怯んだところを足払いで追撃する。


「そんなもんか、レックス?」


「まだまだ...クレイジーなのは頭だけじゃないぜ!」


幾度となく剣を振るい、時に片方は手榴弾や、ナイフや、銃や何やら...


人々を守ろうとする熱き心と、それを奪い、自分の目的を果たそうとする冷酷が。


魂のぶつかり合いに、やむを得ずとも家屋は崩れ、地面は抉れる。


誰も近寄れない。近寄せないような。その気迫と二人の空間があっという間に出来上がっていた。


それは仲間でさえも寄せ付けないような集中と熱中。


その状況に一人焦っていた。


(ああ、どうしよう...何かしなきゃ、援助しなきゃ)


不安からか、デアは何も出来ずにいた。


ただ、立ち尽くすだけ。


(私はどうしていつも...重要な時に...手助けしてあげたいのに。しなきゃいけないのに...!)




”デア・ヘロイン。2486年生まれ。15歳。

生まれは一般家庭。両親と兄弟が3人。

13の時に家族を惨殺され、孤児として生きていた。14歳になった頃、タルタロスの一人、ルース・グールマンによって拾われた。


新人闘技大会でも好成績を残し、その後の活動でもそこそこの事をやりつつある。


入団希望動機としては、家族を殺害した犯人の特定。推測は天帝のメンバーの誰かでは無いかと考えている。”


「なるほど...そういうわけじゃな」


「...はい、よろしくお願いします」


「うむ。ああ、自己紹介を忘れておったな」


「い、いえ!存じております!郷衛神団総司令官補佐兼世界警察庁長官、フース・レイディー・シン・オーディン長官!」


「おお、どうもフルネームで...わしの名前は長いからの、名前を覚えてくれる子は少ないんだ。じゃあ、本題に入ろうか...」


「は、はい!お願いします!」


老人は終始渋い声で質問している。いかにも長官、と言ったような。


「なぜ郷衛神団に入ろうと思った?」


「資料に書いた通り、私の家族を殺害した犯人を探す為です」


「うむ。もし、犯人が見つかったらどうする?」


「どうする...ですか」


目を下へ傾ける。


「例えば、どんな処罰を与えたい?」


「...いえ、処罰というより、奴には生きて人の命を奪った事への反省をして欲しい。ですから、死ぬまで刑務所に入れて、罪や事件の事を反省させる...といった感じでしょうか」


「なるほど...好きな事は?」


「私の好きな事は、お菓子作りと音楽です!」


「ほう、素晴らしい...いい趣味だ」


「ありがとうございます...」


少しの沈黙が流れる...老人の付き人がキーボードを打つ音と共に...


「...最後に。君にとって、『魂』とは何かね?」


「『魂』は、この世の源だと思います。誰にでも、どんな物にでも存在する...それが大きいか小さいかと言うだけで、その源は、この世の生物、物体を形成しているものだと...思います」


「なるほど...今日はもうこれでいい。そこの扉から出てくれたまえ」


「えっ、もうおしまいですか?」


「うむ。これ以上聞くことは何も無い」


「『魂』の答えは?ないんですか?」


「そんなものわしにはわからん。最も、この世の誰に聞いても正解にたどり着くことなどできないだろうしね。だがいずれ解るじゃろう、自分なりの答えが、いつか必ず、自然と何処かで導き出されるはずじゃ」


「そう、ですか」


「そして。デア・ヘロイン、お主を『郷衛神団調査・戦闘隊タルタロス』への正式な加入を、ここで認める。度重なる日々の活躍を期待する」


「あ、ありがとうございます」


突然言われたものだったので、デアは戸惑ってしまった。


だがこの突拍子から、彼女のこれからの郷衛神団員としての人生が始まっていたのだ。




 (いずれ...解る...)


 (でも、もう待つのはいや)


(私も、役に立ちたい。レックスと二人で、眼の前の敵を倒さなきゃ!)












デア・ヘロイン

使用メカ:ラビュリンス・ロッド

名前には鎮静剤=心の痛みを取るという意味が込められている。これは、彼女の母親がつけたものだ。

ロッドの先端に水晶玉が入っていて、そこにソウルエネルギーを集中させてビームとして放出する。

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