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-NOVA-  作者: 原田酒
一章 新人大乱戦編
5/12

最高だね

ああ!生贄が必要だァ!

遠くには爆音が蔓延る。


流れる血の匂いが鼻を突く。



今、魂を見せつける。




――――――――――――


「さてさて...?第3ラウンドだ」


「髄まで狂ってんなァお前!」


所々と隆起した地面を蹴り飛ばし、レックスは目標(Enemy)に突っ込む。剣を振りかぶり、そのまま回転して、地面を切り付けながらも速度は落ちることなく前進する。


(死ぬッ!)


身を引かざるを得なかった。それが命取りだった...フレイは後悔した...だがもう遅かった!


「避けたなぁ?」


「必死だなぁ...おい?フレイ...」


「ァ゛?」


「言ったよな?お前ができるんだからな、俺も出来んだよ」


意味を理解した時にはもう遅かった。もう反応不可だった。


「『インニヴォムス』」


紫色(ししょく)。地面からの一本の火柱が、その瞬間フレイを焼き尽くした。


「はっ...グァァァァ」


白目を向き、完全に意識を失っていたフレイだった。だが死亡している訳ではなく、要するに戦闘不能、負けたのだ。


実況者が興奮した声で戦いの勝者を読み上げた。

同時に、また別の戦闘も繰り広げられていたらしい。レックスの他にもう一人、名前が呼ばれた。


「さあ!残るはタルタロスの新人、ナイク・レックスと!オリュンポスの新人、フラントル・ヘルメスだぁ!」


あまりにも大きい音だった。なのできっと、耳を塞いでいても聞こえたであろうその声に、レックスは反応した。


「...オリュンポス?そんなエリート部隊の新人が残りやがったのか?...こりゃ厳しい戦いになりそうだな」


「さあ!聞こえているでしょうか?まだ残っている選手は、コロシアムの中央に来てください!そこで優勝者を決める最終決戦をしてもらいます!」


「中央か...行くしかねぇっ」


一生懸命に走り抜けて辿り着いた中央には、先に着いていた相手の選手がいた。先程実況者の言っていた「フラントル・ヘルメス」という名の男の姿を彼は初めて見た。


少し小柄で白髪に、緑の目をしていて、金の首輪にダボッとしたデニム生地の服。右手首には機械的なブレスレットをしている。膝が見えないくらいのハーフパンツと、重厚なブーツを履いていた。見るからな少年だった。


「おお、来たかい?ナイク・レックス」


「お前がフラントル・ヘルメスか」


「ヘルメスでいいよ。呼びずらいだろう?フルネームじゃ」


「それなら俺もレックスで構わないぜ」


「よろしくレックス。さて、準備は整っているかい?僕は早く戦いたいんだよ、ここまで残った君と。思う存分」


「ああ、準備は済んでるぜ。もう十分ウォーミングアップもしてきたからな」


「じゃあ?始めようか」


手首をグラグラと揺らしながら構えをとった。


二人とも同時に間合いを詰め、激しい戦闘を繰り広げる。


二人の少年の熱気も、会場の熱気も最高潮に達していた。


互いに相手の特徴を掴みつつあった。先にダメージを入れたのは、レックスの方だった。脇腹から左肩にかけて切りつけた。


ヘルメスは切り飛ばされ、地面を転がった。


「なんだ、もう終いか?さっきのやつの方がもっと楽しかったぜ」


その時、どこからか拍手が聞こえた。思わずその方向を向いた。


「お手並み拝見させてもらったよレックス。なかなか凄い身体能力だ」


「お、お前?確かに今切ったろ!」


驚いて後ろを振り返ったが、ある筈のヘルメスの身体がどこにも見当たらなかった。


「これが僕のメカ。『カドゥケウス』の機能だよ。簡単に言うと、分身を作り出せる」


「おいおい、そんな簡単に手の内明かしていいのか?」


「明かして困る手の内なら、最初から持ってないよ。これはまだ、序の口だからね」


「へぇ、おもしれぇじゃねえか」


「じゃあ、見せてあげようか?手の内をもう少しだけ、明かしてあげるよ」


ヘルメスは右手首のブレスレットに手をかけた。


「『鏡映釆人(ミラージュブルース)』」


二、二から四。四から八。八から十六。とどんどんと増えていく。あっという間にヘルメスの分身体が、レックスのことを取り囲んだ。


「Gravissime!(まじかよ!)」


「驚きが隠せないみたいだね?無理はないけど!」


大群が一斉に襲いかかった。レックスも必死に体を動かして、バタバタと分身体を切りつけていく。

だがいずれ体力にも限界が来る。もう既に何発か重たい打撃を受けている。


「(やるしかねぇ!でなきゃぁやられる!)」


決断した。覚悟を決めた。ホロコーストの力を。自分の魂の活力を最大限に引き出した。


「『バック・イン・ブラック』!!」


分身体を一掃して、そこにはまだ本体と思わしきヘルメスが立っていた。


「へえ、やっぱやるなレックス」


「まだまだこんなもんじゃないぜ?もっとお前を追い詰められる!」


「じゃあ、やって見せてもらおうか?ただし抵抗はさせてもらうけどね!」


持ち前の身体能力を活かして一気にレックスに間合いを詰めて、一発二発と蹴りを入れていく。


「ぐっ」


「ほらほらどうしたんだい?まだまだ行けるだろう!」


甘くなった守りの隙をつき、大きく上空に蹴り飛ばし、再びブレスレットに手をかざす。


数人に分身し、遠い空へ飛ばされたレックスの元へ即座に追いつき、その上からまた蹴り落とす。かと思えば今度は左へ蹴り飛ばし、右へ、左上へ、何度も何度も、様々な方向へ蹴り飛ばしていった。


レックス自身も、もう既にあちこち骨が折れていることは分かっていた。蹴られる度に骨が碎ける音がしたからだ。


「これで僕はこの大会の優勝者になるよ!終いだっ!『飛脚蹴時雨(ショウマストゴーオン)』!!」


トドメの一撃だった。完全に脳天に入ったかかと落としに、レックスは地面に落下していった。


土煙が上がった。勝利は決まった。実況者も更に声を張り上げて話した。


「これはぁぁ!とんでもない技が決まりました!レックス選手起き上がってきません!この勝負は...!」


決まったかに思えた。


「効いたぜ.今のは...」


土煙の中から大剣のシルエットが見えた。


「くそっ...クラクラするぜ...視界も良くねぇし」


「まだ立ち上がるのかい!ならいいよ!もっともっと苦痛を味あわせてあげる!」


煙の中から、弾丸のようなスピードでレックスは飛び上がった。


「はやっ!」


「着いてこれるよな?ヘルメス」


「舐めるなよ...!そのスピードで切りつけて来たんじゃあ...これを防御できない!」


再度蹴りを入れようとした。が当たらなかった。


「ふんっ!」


その場で高速に回転して、攻撃から身を守った。いや守ったと言うより反撃した。


「ぐぁっ」


「守れねぇだと?ハナから守る気なんてねぇんだよ!俺ぇあよ!」


地面に足が互いに着いた瞬間、大地を大剣が切り裂いて、紫炎の斬撃が放たれた。


「あぶねぇっ!あつっ!」


「おらへばってんじゃぁっ!ねぇっ!」


力一杯に剣を振り下ろす。ヘルメスはそれを交し、その代わり地面は大きく砕けて粉々になった。


大剣が地面から抜けなくなったことを瞬時に汲み取り、右手で大剣を掴んだまま左手を離し、すぐさまヘルメスの首をがっしりとして掴んだ。


「くっくぁっ...!」


「がら空きだぜ!」


その腹に蹴りを入れてやって、さっきの仕返しをした。大剣は地面からようやく抜けて、また剣を前に構え直した。


「ほら、ラストスパートだぜ」


「はっ...ぐっ...ラストスパートだと?冗談じゃないな...ここからじゃないかレックス」


「まだやるってのかよ」


「もちろん...まだ明かせてない手があるからね...」


「なら、あともう少しだけ付き合ってやる。ただし勝つのは俺だぜヘルメス」


「じゃあもっと頑張らなくちゃァね『鏡映霧街(ミラージュボヤージュ)』...!」


彼のブレスレットからではなく、彼自身から霧が放たれていた。彼の右目は淡い蒼に燃えていた。


「なんだ?...目眩しかよ!」


「なぁレックス!最高だと思わないかい?色んな人達が僕達のことを見ていて、そしてこの戦いで勝ちさえすれば!中々に良い報酬と地位が与えられるんだよ?それって本当に...!最高だね」


「ああ、そうだな」


鼻で笑いながら答えた。その心の中には緊張感が糸を張り巡らせていた。


突然鈍痛が走った。


「がっ!」


「ほら、じっとしてちゃあいけないよレックス!動いて反応するか、僕を探さなきゃあ...」


「てめぇ...小癪だぜホントに!」


「(こんな霧晴らしてやる!)」


一気に回転して霧をその風で払おうとしたが、すぐに流れ込んでくる。


だんだんと攻撃される頻度も多くなってきている。


「(ピンチ!)」


「これはまずいぜ...」


霧の中で窮地に追い込まれていた。


遅れて申し訳ありません!いや、もうほんとに

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