新人
3000文字行かないと短いのかな...
晴れ始めた空の下では、鈍い痛みと灰色の機体が転がっていた。
「ウラニウム?」
「そいつの機体名だと思うぜ。92体目って事だろうな、しっかしなんでここがわかったんだ?」
「この子を連れて来た所を見られたとかじゃ?」
「それは無いぜ嬢ちゃん、ルークの愛車は外部からは見えねぇようになってる。即ち、着いてこれるわけもねぇってことさ」
「一体どうして...てか、その『嬢ちゃん』って辞めてくれます?私が幼いみたいじゃないですか!」
「実際アンタ15だろ?高校生くらいの年齢なんだからまだまだガキじゃねえか」
「ガキも辞めてください!」
「あのー、この血、どうしたらいいすかね?」
二人の言い合いを割くように、レックスは遂に言葉を零していた。
―あれから少し経った。少しというか、ずいぶん。
少しずつ皆と親しくなれて、この場所にも馴染んできたところだった。
「うまっ」
「ほんと!?ありがとう!私の自信作なんだ!」
「デア、なかなか腕を上げたんじゃないかい?」
「へへ、レックスくんもガディウスさんもそんな褒めないでよー」
「ご馳走様」
「あ!ペルセポネさんいいですよ、私片付けますので」
「ああ、すまない」
訓練後、アジトで皆と昼食を取っていた。たが、未だにリーダーの顔を見た事がない。加えてルナとも、あれ以来口を聞いていない。レックスはそのふたつだけが、心に引っかかっていた。
「ああ、そーいえばレックス、お前来月、俺とリーダーと一緒にギルス迄行くからな」
デバフが思い出したかのように言った
「え、なんの為にですか?」
「あー、知らないのか?本来郷衛神団は6~7月まで新しい団員を募集する、もしくはスカウトだな。
そんでその一年後に、新人だけで実戦をする。それに負けたらどうって訳でもないが、戦闘に関する知識や、それに対するメンタルなんかも付けられる。その大会の名をズバリ!『郷衛神団新人闘技大大会』と言うのだッ!」
「なんかひねりないですね、その大会名」
「なんだと!?かっこいいじゃねえか!」
「まあ、どうかなあ?」
その時が来た。レックス、デバフの2人はギルスに到着した。だが、まだその「リーダー」は姿を表さなかった。
「懐かしーなああ!レックス!」
「そうですね、あ!『ベルセルク商店』だ!懐かし!」
「なんだ知ってんのか?」
「あ、はいタルタロスに入るまではここによく通ってて、めちゃくちゃ物が安いんですよ」
「へぇ、さ、時間が無いぞ!レッツゴー!」
歩いて行くと、そこには懐かしき大きな闘技場があった。何年もこの地元に居たのに、気付かなかった事が不思議なくらいに大きな闘技場だった。
何十個もの受付口があり、列に並んでやっとエントリーする事が出来た。待機室で待っている時に、遂に気になって聞いた。
「デバフさん、その、リーダーは?」
「おお、もう少ししたら会えるぜ、リーダーには」
「エントリーされた方々は、闘技場に移動してください」
移動を促すアナウンスが流れ、それに応じて、皆が外に出る。丸でこれから野球の試合が始まるように闘技場へ行くが、今回彼らは選手なのだ。実際に戦い、相手を打ち負かさんとするメジャーリーガー達だ。今、その戦いが始まろうとしていた。
「お前か?」
闘技場に出た途端、重低音が耳元で響く。右を向くとそこには、とても豪華な兜に、物騒な大鎌を持った大男が居た。
「お前が、タルタロスの新人か?」
「は、はい」
あまりの気迫だった。見るもの全てに殺意を持つようなその恐ろしい目は何処かレックスの精神を見ているようにはっきりしていた。
「そうか、俺はタルタロスのリーダーだ。
名をゴッド・ハデス。覚えておけ」
「は、いよろしくお願いします」
「お前に言う事は一つだ...勝て。なんとしてでもだ。それがお前の一番の成長に繋がる。期待しているぞ小僧。」
「イエッサー...」
死神のような見た目をしたその大男は去り際、一つ、「小僧」に質問をした。
「小僧、名は?」
ー強くならなければならないと分かった。やらなければならないと分かった。そして目標が出来た。
この世界で生きていくには、もう底辺から上り詰めるしか方法がなかった。それが、彼を強くする。
「ナイク・レックス。「王」と言う意味の名前を付けてもらいました。俺は、この名前に従い、この世界の頂点に君臨します」
「フン、生意気な小僧だ、ナイク・レックス」
ハデスは去っていった。レックスはそこに残り、決心をした。何度目か分からない、頑なな自己暗示が、彼のメンタルを強くさせた。
「勝つ。」
「さぁ!皆さんいよいよ始まります『郷衛神団新人闘技大大会』!本日は誰が優勝するのか!?優勝した者は人生が変わります!その運命の戦いが!今始まろうとしています!」
アナウンスが会場に鳴り響いた。会場が大きく盛り上がった。幕開け。新たな、始まりであった。
「バトルロワイヤール!レディー!ファーイト!」
ドゴンと轟音が鳴り響いた。
開始のコングと同時に、とんでもない爆発が起きたのだ。誰がこの場にいるのか、誰がこんなことをしたのか、レックスの頭にはどちらも浮かんでいなかった。ただ、「わくわくするぜ、こいつぁ」そう心の中で叫び、走り出していった。
「そこの剣士!拙者と戦え!」
ブン!と何かが飛来してきた。それを何とか躱し、辺り一面を見渡した。
「ここだ間抜け!」
今度は短刀が振りかざされる、底でやっと相手の姿が目視できた。黒い服に身を包み、足はフラワーヴァースのとある国の伝統の靴、「草履」を履いた、見た事はないが確信を持てるほどの「忍者」が、彼に斬りかかっていたのだ。
「はあっ!」
短刀と大剣がぶつかり合う。スピードは明らかに相手の方が上。レックスは徐々に押されていった。
「お前っ名前は!?」
「拙者か!拙者の名はツキヨミだっ!」
「へぇっ!いい!名前じゃん!」
「戦いに集中しろぉ!これは本気のっ!」
「殺し合いだァ!」
手裏剣が飛んでくる。其れもギリギリ躱したが、当たったらとんでもないダメージだっただろう。なぜならその手裏剣は、レックスの後方で爆発を起こしたからだ。
「喰らえ剣士!『向日葵』!!」
短刀を逆手で持ち、縦に回転しながら切りつけて来たのだ。その刀は炎を纏っていた。
「あ!あぶねぇ!何すんだコラァ!」
ガン!と音がして、レックスはツキヨミを吹っ飛ばしたのだ。
「てめぇ、俺はな!ナイク・レックスっつー名前があんだよ!覚えておきやがれ!」
一方観客席にて
「おいおい、レックスってあんなキャラだったか?もっといつも冷静だったような気がするんだがな」
「奴、なかなかやるな」
「ですよねぇ!ハデスさん!...もしかしてアイツ武器握ったら性格変わるタイプか?」
「はあっはあっ、マジで、さ...お前強いな」
「っ...お前と...拙者を...比べるんじゃない」
「(くそ、このままじゃぁ勝てねぇな、体力もだいぶ消耗してきた。一体どうすれば...)」
「小僧!!!」
野太い声が会場に響き渡る。
「視点だ!視点を変えるんだ!」
「なるほどな、ハデスさん流石だぁ、相手にはかなり近距離に弱い。守りの体制で戦っているレックスにナイスアドバイスだぜ!」
「これは、リーダーの声か!」
「来ないのか、レックスとやら、ならばこちらから行くぞ!」
「視点を、ね」
そうして、レックスはこの大剣を逆手に持った。
「はぁ!?あいつ何してやがる!?」
「何をするつもりだ?」
「スゥーーハァーー」
深く深呼吸をして、大きく構えた。
「させるものか!『秋桜』!」
ツキヨミが刀を突き刺そうとした時には、もう彼の視界にレックスはいなかった。何故なら高速に円を描いて後ろに大きく回り込み、その身体ごと大剣を回転させて、その遠心力で...
「どりゃァ!」
一気に切りかかったのだ!
ツキヨミも人間である。その重い重い大剣から放たれる、遠心力を用いた大きく重厚な斬撃は、彼を地まで叩き落とし、その一発で気絶させた。
「ふぅ、今のに技名を付けるとしたら...そうだなぁ...『ブラック・ドライブ』とかかなァ...」
「ここで『日八神』のメンバー、ツキヨミが倒れたァーー!気絶しているぅ!」
「これは誰がやったのかぁ!」
「俺だァ!」
「なんと!これはナイク・レックス選手の勝利ー!」
会場が一気に盛り上がった。その騒ぎを駆け付け、他の参加者も集まって来ることになるのだった。
投稿の仕方を変えます。1話ずつではなく、何個かの話を一気に投稿したいと思います。