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-NOVA-  作者: 原田酒
二章 魂と放熱編
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和洋折衷 その2

春休みは映画をたくさん見ました

 「覚悟しろよ…お前後悔するぜ!」


荷風は刀を十字に合わせて構えを取っていた。


「どういう意味だ?」


「死ぬって意味だよ馬鹿野郎!」


(この俺の躁命魂はまだ不完全…だがこれしか俺かつ方法はねえな…)


 先程まで人々が安全に生活していた民家の中、二人の男が戦闘の構えをとる。

荷風が刀に目線を向けている隙に、オオクニに空手の型で蹴り飛ばされる。

オオクニは猛攻を続ける。

荷風はまた外へ放り出され、千町がその姿を確認する。


(荷風、かなり押されているな…此奴を片付けてから援護に向かおう…)


 荷風の刀は必死にオオクニに牙を向くが、傷はいまだにつけられない。

なんとか時間を稼ごうとするも、それはなかなか叶わない。

オオクニは荷風よりも体格が大きいのにも関わらず、荷風よりも素早く動くことができている。


「あああ!もうわかったぜこのやろう!何にも考えねえで行動してやるよ!」


「今度はなんだ!」


そして荷風は、再び刀を十字に構えた。右の刀を上に、左の刀を下にして。


「“躁命魂“…」


「荷風ーっ!それはやめろ!貴様の命を削ることになるんだぞ!」


遠くから千町が叫ぶ。


(時間はねえ。もうあいつも迫ってきてやがる…これを、成功させる!)


きっちりと十字に合わせた刀。縦にした左の刀に、横にした右の刀をギリギリと音を立てながら滑らせて、ついにその刀身を滑らせきった。


「“躁命魂“『断腸亭日乗』!!」


同時にオオクニが間合に入って、瓦割りのようにチョップを繰り出す。だがそれは空を切り、家屋の屋根を砕く。


「消えた…!」


 その途端オオクニに違和感が襲う。

先ほどよりも石畳の地面と距離が違う気がしている。

加えて平衡感覚もずれているような気もする。

ついには自分が乗っていた家屋が傾く。

石畳の地面は遠のくが自分の乗っている民家の屋根だけは距離が変わらない。

ここで気づいたのだ。()()()()()()()()()()()()ことを。


(荷風...やってしまったな。拙者も応援に行かなければ)


 オオクニの目には荷風は既に映らない。

荷風がどこかに隠れているのは確実だが、その場所の見当がつかない。

別の家屋の屋根に飛び乗るも、その先で刀身がしたから屋根を貫いて飛び出してきた。

間一髪でそれを避け、素早くその家屋を破壊する。

そして遂に現れた。


荷風の刀はただの刀ではなく、大太刀へと変化していた。


(こいつ、ソウルエネルギーでの物体の構築に長けているのか!?もしくはただの強化か...どちらにせよこのままにはしておけん!)


オオクニは荷風に向かって技を繰り出す。


「『終家子呑(おやこどん)』!」


 ソウルエネルギーを足に流し込み、内側から出力と質量を上げた中段蹴りを仕掛ける。

だがしかし、その蹴りを難なく大太刀1本で受け止めた。


(なにっ!)


 荷風がそのまま隙を狙って横に切り払う。

反射的にオオクニが下へ避けたところに顔面に蹴りを入れる。

この時、初めてオオクニにダメージが通った。


「なあ、オオクニ!変わったろ?俺」


「ああ、余計に狂ったようになったな」


「ははっ!そうだろ!狂ってるだろ!」


そうして突発的に家の壁を切る。


「見ろよ、この切れ味...この構築は苦労するんだぜ、かなり精密に作り出さなきゃならないからな...だけどそのお陰で見ろよ!」


 また突然やたらめったらと、地面や壁などお構い無しに大太刀をふるって切りつける。

切られた壁や崩れた地面は空へ浮遊していく。


「浮いてるだろ...?これが俺の躁命魂だぜ...俺のこの刀で触れた所を何処までも浮かせるんだ。

どこまでも…な」


 荷風が縦に切りつけてきたのを、ほんのわずかギリギリで躱す。

ただの刀が大太刀になってリーチが伸びたため、今度はオオクニが押され始めている。


「ほらほらどうするオオクニ!この俺を止めてみろよオ!」


 大太刀の猛攻がオオクニを襲う。

隙が出来た腹に蹴りを入れられ、後ろに退けられる。

オオクニは距離ができたそのままの場所で正拳突きを繰り出す。

その距離が空いているのにも関わらず、荷風の腹に衝撃が走る。

その衝撃のまま、吹っ飛ばされる。

吹っ飛びで壁を貫き、隣の家の壁に叩きつけられる。


「な、何が…」


 その言葉も言い終わる前に、何度も先ほどの謎の衝撃。

殴られたような衝撃が間髪入れず、休む間もなく襲いかかってくる。

ひとしきりそれが終わった後、オオクニが口を開く。


「“躁命魂“『鈍武羅皇(どんぶらこう)』。 

能力は、『押し出す』ことだ。

なんでも物体だけじゃない。

今のように空気を押し出して攻撃を繰り出した…

『魂』の在り方はそれぞれだ。

型にはまって戦闘をしているようじゃあ…何も勝ち取ることはできない。

『魂』は『可能性』だ。

たとえ西洋だろうが東洋だろうが魂はその一個人によって能力は違う。

今のはただ単にソウルエネルギーをぶつけただけではないんだ。

これが俺の『能力(タマシイ)だ』!」


「誰に向かって説教くらわせてんだこのクソッタレ…!」


 土煙に映る影がオオクニに話しかけている。

その影が、2本の刀を構えたのを視認し、オオクニは咄嗟に伏せる。

次にその土煙の向こうから、小さな地面の破片が無数に飛来してくる。

それに皮膚を切られながらもガードする。


 突然家屋の上半分が浮遊し始める。

先程まで影としてしか見えなかった荷風が姿を現す。


「『可能性』か…面白えな…じゃあやってみるか…俺の『魂』はどんなもんか…可能性を広げさせてもらうぜ」


2本の大太刀を逆手に持ち、地面に刺す。


(何を!)


 次の瞬間、地面が浮遊する。

荷風はその地盤ごと、半球の形の島を削り出す。


「決着をつけようか!この島の上でな!」


 「へえ、荷風にあんな力がぃ…」


「よそ見してる場合とちゃうで、孟原。

アンタの敵は、アタシや」


「うるさいねぃ…せっかちな女の子は嫌われるよぅ?」


「余計なお世話や!」


アマテラスの後ろの練魂具から光線を繰り出す。


「どこを狙ってるんだぃ?僕は後ろだよぅ?」


 アマテラスは後ろを振り向く。

そこには、誰もいない。

急に背中を何者かに蹴られる。

屋根の上から転げ落ちるのをギリギリで耐える。


「アンタ!えらい卑怯な手を…!」

後ろを振り返っても、誰もいない。


「僕は後ろだって言ってるじゃないぃ?」


 アマテラスが後ろを振り向く。

やはりそこには誰もいない。

そんなことはわかりきっている。


「僕はね、『民間人』なんだよ?アマテラスちゃん」

アマテラスの背後にはいつの間にか孟原がいた。


「い、いつの間に」


「僕は『民間人』だ」


アマテラスが後ろを振り向いて殴ろうとする。


「おおとっと、殴っちゃダメだよぅ、僕は民間人だ。

君たち郷衛神団が守らなければならない存在でしょう?」


「な、何を言っとんねん?あ、アンタは敵やろ!」


(頭ではわかってる…だけど魂と身体(ここ)が信じとる…アイツの言っとることを…)


「“躁命魂“『小人邪推』。

どうせ手の内をバラしたって君は僕の能力に抗うことはできないんだからねぃ。

どういう力かわかる?説明してあげようかぃ。

僕の躁命魂はね、『嘘を信じ込ませる』んだ。

僕がどんな()()を吹いても、それを聞いた人間は確実に信じる。

これは頭で理解することじゃないぃ。

君の『魂』がそれを信じているんだぃ。

(いずれ)も、肉体は魂に服従しているものだから、魂の意向に反した行動は自分の肉体ではできないんだよぅ」


 アマテラスの頭には完全に血が昇っている。

光線を放つが、それは外れる。

むしろわざと外したような軌道にも見える程だった。


「うーん、あ!いいこと思いついたよぅ。

アマテラスちゃん、よく見たら、いや、よく見なくても美人だねぃ?

僕はね、『民間人』であり君の『旦那さん』だよぅ?」


「は…?何言って」


「聞こえた?『旦那さん』だよぅ。

アマテラスちゃん、君の、『夫』だ」


 孟原はアマテラスの方に歩みを進める。

アマテラスは合わせて後退りする。


「どうしたの?なんで逃げるの?逃げないでよ『旦那』からさぃ?」


 孟原の歩みのスピードは、後退りよりも早い。

ついには手が届くまでの距離にまで接近されてしまった。

孟原はアマテラスの肩に手を置く。

その手を首や鎖骨、頬へ滑らせてアマテラスの身体を触る。


「大丈夫。

怖くないよ。

僕は君の、『大切な人』だよ」


(ああ、『大切な人』ね…いや、違う。

これは頭で考えてることやない。

これは『魂』から思っとることや…!)


 アマテラスの脳裏には、ある人が浮かぶ。

背の高く、桜の柄が入った黒の着物を着ていて、髪の毛を後ろで縛った色男。

刀を持っている、まさに理想の「強い男」の後ろ姿が。


 気づけば、孟原の顔面を殴っていた。

その一発で、孟原は数メートル吹っ飛んだ。


「な、何故殴れたんだぃ…何故だぃ!!」


「アタシの大切な人はな…『魂』に刻み込まれとるんや!

そんなチャチな言葉じゃ、アタシの『魂』は覆せん!」


「あ、ありえない!そんなことはあってはならない!」


 刀を再度構え、孟原は一気に距離を詰めようとする。

その視線の中。

自らの胸から刀身が飛び出ている。

地面を蹴ったその勢いも、全くなくなって口から血を流す。


「言ったはずだ。もう二度とそのような真似はするなとな」


その刀は胸から抜かれ、無造作に切り捨てられる。


「失望したぞ寛二郎」


 そこには見知らぬ男が立っていた。

だが完全に見たことのない顔ではない。

特徴的な、顔面の傷があったからだ。

額から着物をがばっと開いて見えている胸元にかけて、縦に切られた後があるのだ。

そしてその灰色の髪の毛の色もどこか見覚えがある。

まだ隙があったので、アマテラスは仲間の方へ視線を向ける。

オオクニ、ツキヨミの二人はもう、満身創痍。

ボロボロであった。


 目を逸らしていたその一瞬で、腹に衝撃が走る。

後ろに吹っ飛ぶ。

痛みを感じる間もなくなぜか上に飛び上がっている。

今度は地面に叩きつけられる。


(は、早い!この男…確実に強い!)


男の手にはもう刀はなくなっていた。


「ペシミズムというものを知ってるか?我ら天帝の四人組のチームだ。

先日、そのうちの一人が死んだ。

その悲しみを、お前らが知れるか?」


 手にはまた、刀が握られている。

刀の先端は、片膝をつくアマテラスに向いている。


「俺らは、ここでお前らを皆殺しにして、彼のことを追悼するんだ。

加えて、アーティファクトの奪取も行う。

これらは全て、彼への追悼だ」


男は刀を後ろに引いて構えをとる。


「彼の魂の葬送のもとに…死ね!」


 刀の先端がアマテラスの胸に迫る。

覚悟を決められず、恐怖に目を瞑った。

その時、金属音が鳴り響く。

少しの光を感じる。

きっと、火花が散ったのだ。


 目を開くと、男の刀は、別の刀によって静止されていた。

その刀の方向を見ると、また男が立っている。

今度は見たことのある男だった。

思わずアマテラスの目から涙が溢れる。


 その男は、背が高く、桜の柄が入った黒の着物を着た、髪の毛を後ろに縛った男。

色男。

刀はその男の元から伸びている、変わった刀を持っている。

その男の名は、桜咫喝神団“王将“「スサノオ」。

アマテラスたちが所属する団の、リーダーである。


「よく間に合ったな、スサノオ」


「アーティファクトは渡さんぞ、不動!」


 刀がアマテラスの前で弾ける。

スサノオの手には、千町の首が握られている。


「千町!お前…そんな姿になって…許さん…スサノオ…お前はいつもそうだったな…何故お前は俺から奪う!」


「囚人を牢獄に入れるとき、銃を持たせるのか?

お前には、何もあってはならないんだ」


「スサノオ、ここで今までの人生の決着を付けよう。

俺とお前のいがみ合いも、これで全部だ!」


「受けて立つ。

お前たちの野望、目論見。

俺たちの全てを、今ここで終わらせる

今ここで、断つ!」


 これを書いたデータが全部吹き飛ぶとこでした

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