声
不定期ですみません...
「使命だけはわかるのだ...「あの人の目標の達成を助けること」それだけは...!」
「(このサイボーグ、一体何なんだ...?こいつ...なにかありそうだぜ...)」
その目は覚悟に染まっていた。
打撃は一層激しさを増す。
「(この攻撃の多さ、まさに『嵐』だぜ...どうする俺...!)」
その時、レックスの目に不思議なものが映る。
かろうじて残っている少し遠くの木の陰に、一人の男の子が立っている。
「おい!そこのガキ!危ねえぞどっかいけ!」
そう言うと、すぐに何処かへ消えてしまった。というより、姿そのものを消してしまった。
「なっ!どこいった!」
「そこらの子供に気を配る余裕があるとは...まだまだいけるようだな」
更に打撃が激しさを増す。もうレックスの持つ大剣では捌けないところまでボルテージが上がっている。
戦車のような一撃が、肌を刺す風とともにレックスの腹に叩き込まれる。
そのまますかさず髪の毛を掴まれ、鼻をぶん殴られる。
あまりの衝撃に後退してしまう。
痛みに耐えながら前を向く。と、またしてもさっきの子供が姿を見せる。
「(あのガキ、まだいやがる...まじで死ぬぞ...)」
「ねえ、お兄ちゃん。レックスお兄ちゃん」
「な、なんで声がここまで届いて」
遠くてよく見えないが、おそらく口も動いておらず、眼の前の男にも聞こえていない声。
「お、お前どうやって?なんで俺の名前を?は、お前誰だ?」
「質問は一個にまとめてよレックスお兄ちゃん...やっぱり忘れちゃってるんだね、あの実験のせいで。血も出なくなっちゃって...可哀想に...」
「お前なにが目的だ!なんでこんな事ができる!」
「ねえ、 僕の力を貸してあげる」
突然、大剣ケルベロスの三つある装飾の犬の頭が、一つ光り始めた。
「それ、剣先を空に向けておいたほうが良いよ」
「えっ」
咄嗟に空へ向けると、大剣の左半分が空へ飛んでいった。信じがたい光景だった。レックスは壊れたと思った。
だが不思議と大剣の片割れはレックスの左手へ、空中からそのままフィットする。
「おお、すげぇ」
レックスはいつも右手に剣を持つ。空いた手の方に新しい剣となった片割れと2つで、二刀流の男となった。
「突然なんだ、その剣?今度は細工か」
「俺も良くわからんけどよ、けどいい感じだぜ、お前を倒すのに丁度よさそうだ!」
「小僧め!」
武器がひとつ増えたお陰で、先程より相手の攻撃を守りやすくなっている。
相手の手数が多いため、レックスにとっては、わけがわからずとも好都合。
新しく羽が生えた気がした。
「(っ!小僧、これ迄より余裕が出たな...守りだけじゃない、しっかりと反撃をし始めてきている...そろそろ終わりにしなければッ)」
「そろそろ終わりにしなきゃってか?ゼピュロス!」
まるで心の内を読まれた。
「奇遇だな、俺もそうしようと思ってたとこだ」
「ならば好都合。お互いの最大をぶつけあおう」
「言われなくても!」
ふたりは距離をとり、構えをとる。
「苦しいのは嫌だろ?一発で仕留めてやるからな」
「慈悲のつもりか、小僧」
「慈悲?馬鹿言え、手段だ」
レックスのふたつの剣が燃え上がる。
赤い炎で燃え上がる。
「これで決まりだぜゼピュロス!」
ふたりは同時に動き出す。
「死ね小僧!『 櫛風沐雨』!!」
鋭い風を纏った拳がレックスに向かって突き出される。
だがレックスは片方の剣を地面へ突き刺し、その剣を踏み台にして、さらに飛び上がった。
「(2段ジャンプか!考えたな小僧!)」
「貰ったぜゼピュロス!『 ゴー・ダウン』!!」
落下する勢いそのままに、燃えている剣でゼピュロスを切った。
その切口には炎が残っている。
「...やるな小僧」
「そりゃな」
その瞬間、ゼピュロスは何かを感じた。
走馬灯が、次々とゼピュロスの頭の中に流れ込んでくる。
「ああ、そうか」
「なんだよ?」
「なんで忘れていたんだろうなぁ...俺...」
そのまま、ゼピュロスの機械の目から光が失われ、口や目、傷口から煙が昇って、いずれ消えていった。
それを確認したレックスも、その場に倒れ込んだ。
「お兄ちゃん」
「おい起きろよ、レックス」
「...ね、ねえだ、大丈夫?」
目覚めると、視界は黒一面に染まっていた。
「な、なんだここ?俺、お俺死んだ?」
ふとレックスの真横を、何かが通る気がした。
その方向を見ても、何も無い。なんなら、自分が今しっかりその方向を向けていたのかすらも分からない。
「レックス!おい!」
また声がした。振り返って見ても、何もいない。
「下だよ!下」
下を見ても、やはり何もいない。
「いや、もうちょっと右!」
そのまま首を右に進めると、男の子がたっていた。
「お、お前誰?」
「はぁ、話すと長くなるんだけど、そんなに時間もないんだよね」
「も、もうい、行っちゃうの?」
今度はもう1人子供が現れた。
「レックスお兄ちゃん、さっきは危なかったね!」
「おい『 デス』!話がそれるだろ!」
「ええ、いいじゃん『 パニッシュ』、やっと会話できたんだしさ」
「ね、ねねえ、こ、困ってる、困ってる、よね?」
「どうやって俺たちと話してるか、ここがどこか、分からないんだろ?」
「お、おう、聞きたいことは山ほどあるが、そうだな、ここは何処だ?」
「ふふん、ここわね、レックスお兄ちゃん、『 お兄ちゃんの中』だよ!」
よく分からない。しっかり説明されてもよく分からないだろう。
「レックス、あんたは今、昏睡状態にある。今あんたの体は現世で野ざらし」
「ででも、き、きっと大丈夫、大丈夫だよ、ね」
「い、一旦飲み込むな、わかった。じゃ、お前ら誰だ?そこのポワポワしてるお前はさっき俺が戦ってる時に姿を見せただろ」
「そう!正解!覚えててくれたんだ!僕は『 デス』!そのまま『 デス』って呼んでくれると嬉しくなっちゃうな!」
「俺は『 パニッシュ』。どうとでも呼べ」
「お前、可愛げねぇな」
「うるせぇ!」
「僕、ぼく、は、『 シン』。な、名前、覚えて、くれ、くれるだけ、だけでも嬉しい」
「さっきのは、僕の役割だよ、お兄ちゃん」
「お前の?」
「うん、簡単に言うと、僕たちお兄ちゃんの剣だよ」
「は!?お前らが!?俺の!?」
「ああ、その剣に3つの犬の頭がついてるはずだ。それぞれに、俺達の魂が宿ってる」
「お前らの...魂」
「ぼぼ、僕たちは、お兄ちゃんと一緒にいられてえ、うれ、嬉しい」
「けど、僕たちも自由になりたい」
「だから、俺達の力を使わせてやる。その代わり、俺たちを解放してくれ。この狭い剣の中から」
「ちょ、ちょっと待てよ、何がなんだかさっぱりだぞ!」
「僕たちはお兄ちゃんに何度も助けられてる。けど、もう少しだけ、僕たちを助けて欲しい」
「ぼぼ、ぼく、僕たちは、一生懸命、戦うから」
「頼んだぜ、レックス」
「おい!どうして俺のことを知ったように話すんだお前ら!おい!話を...!」
それを言いかけたところで、光が差した。
レックスは昏睡から目覚めた。
何処かを走る車内。
身体全体に痛みが走っている。
「レックス!目が覚めたか!」
「ル、ルースさんですか...他の、仲間の人達は?」
「あいつらはきっと大丈夫だ。けど今は自分の心配をするんだ」
「そう、ですか。良かった...です」
少しの会話にも疲れ、また目を閉じる。
そうすると、また声が聞こえる。
「きっとお兄ちゃんならできるよ、お願い」
目を開いてルースの顔を見ても、この声が聞こえている様子はない。
「ルースさん...」
「どうした?レックス」
「何が...あなた達にあったんですか?」
ルースは何か悩んだような顔で話し始める。
「何があったかは、厳密にはまだ分からないよ...でも、あのガラクタの山にひとつ生きてるのが混ざってた。
そいつの能力なのかなんなのか、僕たちはひとつの建物のそれぞれの場所に転送させられたんだ」
「それは...大変でしたね」
「君こそ、あの場で何があったんだ?君が倒れていたすぐ側に、妙に技術の高そうなサイボーグがあった。あれと戦っていたんだろう?一体なんだったんだ?」
「...あいつらは...自分の事を『四神風』とか、『東風』とか...かと思ったら今度は一人称が変わって、ちょっと違う人格みたいになるし...」
「ちょっとまって、もしかしてあのサイボーグ、自分の意思があった?」
「ガッツリ」
「そ、そうか...(『四神風』、もしもレックスの言うことが本当なら大変な事になるぞ...)」
「それと...」
「まだ、あるのか?」
ルースはびっくりしたように優しい声で聞き返した。
「子供の姿が見えたんです。戦闘中に。その男の子は木の影からこっちを見てて、口を動かしてないのに声が聞こえるんです」
「レックス、急に怖い話かい?」
「いや、そういうつもりじゃ...ははっ...
結局はその後は大丈夫だったんですけど、さっき目を閉じていた時に、その男の子を含めた3人の子がいて...真っ黒な部屋で、そいつらが急に現れたりしたり...」
「レックス、帰ったら病院と本部へ行かなきゃね...色々と聞かないといけないことがありそうだよ」
ルースはまっすぐ前を見ながら言った。
見てくれてありがとうございます!感謝でございます。




