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-NOVA-  作者: 原田酒
二章 魂と放熱編
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番犬と嵐 その2

SF映画で一番好きな作品はなんですか?私がMIBが好きです。(2以降は見たことがない)

 今から数百年ほど遡って...世界は2つの勢力に分かれていました。その大きな勢力を統べる、二人の王様がいました。一人は、厳格ながらも温厚で、正義感に満ちた、人間好きの王様で、その王様が基地をおいたり、影響を及ぼしていた国は、みんな、その王様のことが好きでした。


 その一方で、もう一人の王様は、意地悪で偏った思想を持ち、実験や開発が大好きな王様。「マッドサイエンティスト」と巷では呼ばれていて、彼が支配する国は皆、国民同士で戦争が起こったり、互いが互いを憎み合った、ひどい場所でした。


 彼ら二人の王はとっても仲が悪く、いつ、意地悪な王様が戦争を仕掛けてきてもおかしくない状況でした。ですが、王様が意地悪になる前は、とてもいい王様だったそうです。




 

 風が吹き荒れる。草はなびき、枝は折れ、その風は音を立てている。


「小僧、何を言う。貴様が『番犬』だと?」


「俺はここのお守りをさせられてんだ。あんたみたいな敵が来たからには、返り討ちにする」


「ふん。たわけが。邪魔をするのなら死んでもらおう。目的の達成に支障が出るからな」


「やってみな...」


ゼピュロスは手のひらをボールを掴むような形にして、腰を低くし構えを取る。


レックスには見えない。見えないが、何かの危険は察知している。ソウルエネルギーを貯めているのか、何をしているのか、ただ何かの危険を、感じている。


(やられるま前に...仕掛ける...!)


大剣を片手で構えてゼピュロスに向かって突進する。


同時にゼピュロスも左手に蓄えた何かを投げるような動作を取った。


その見えない何かは、レックスの腹部に直撃した。


レックスは地面に足をつけて耐えるそのあまりのパワーに、体を捻ることも出来ない。


「『季節風(きせつふう)』」


そうゼピュロスが呟くと、人差し指と中指を、上に向かって立てた。


たちまちレックスは、見えない何か。玉のようなものに腹を入れられたまま空中へ連れて行かれた。次第にその玉は向きを変え、地面に向かって急降下し始めた。


(まっ、まずい!)


レックスはそのまま地面に叩きつけられた。


「所詮口だけの小僧よ...相手との力量差がわからないにも関わらず無謀な挑戦をする蟷螂(とうろう)...」


「なんだ?そのトーローってのは?」


「生きているか」


「当たり前だろ、あんな生ぬるい攻撃じゃ死なねえよ」


「生ぬるい...?高度3000mはある高さから叩きつけられて『生ぬるい』と?」


「そんな高かったか?いまの」


「小僧、少しはやるようだ」


ゼピュロスは左手を前へかざし、再び風を巻き起こした。


「我のホロコーストを説明しておこう。長い戦いになりそうだからな」


「丁寧なヤツだな、お前」


「『春嵐(プリマヴェーラ)』。貴様も見たと思うが、これは風を操る能力」


次第にその風は強く、渦を巻いていく。


「自在に操り、攻撃する。ただそれだけの能力。だがそう甘くはない」


その風は渦を巻きながら上へ上へ立ち上っていく。


「どんな重量のものでも、この風で吹き飛ばせる。応用は利く。自由にそれを駆け回れる。この我の野望をすべて叶えたこの能力を前に、本当に貴様は返り討ちにできるのかな?」


「長々とうるせえな、できるよ!」


「ならば見せてもらおう!四神風(アネモイ)に太刀打ちできるのならな!!」


ゼピュロスは上昇気流を発生させ、自らも一緒に上空へ飛ばされた。


「空中戦は得意か!小僧!」


上昇気流から外れて落下していくレックスに、見えないボールを弾丸のように当てまくる。


「チクショウ、この野郎!」


もう一度上昇気流に乗り、剣を振るう。それも全て守られる、流される。


そんなものかと言わんばかりに猛攻を仕掛ける。


(こいつ風使わなくても肉弾戦が強え!距離取ったら風が当てられるし、近づいたらぶん殴られる!どうしたらいんだこれ!)


一旦レックスは距離を取るが透明の弾丸は未だ執拗にレックスを襲う。


ゼピュロス自身も恐ろしいスピードで移動している。空を自由に飛び回っている。


彼は自らが操る風に乗り、自由にそれを運転している。今は風を操り、風に触れる。それがゼピュロスのホロコーストの恐ろしさである。


「小僧、そろそろ何かしたらどうだ?我も飽きを感じてきたぞ」


「ああ、そのつもりだぜ。俺は仮説を立てたんだ」


そう話している間にも、透明がレックスに突撃しようとしている。


レックスは急に足を踏み込み、剣を横に振りスピンをかけた。


カキン!と痛快な音が鳴った。大剣「ケルベロス」が淡く炎のような物をオーラを纏っていた。


「な、何をしている小僧...」


「やっぱりな...お前が操ってるのは風といえど少しのソウルエネルギーは混じってる」


剣先をゼピュロスに向けて言う。


「俺のケルベロスに俺のソウルエネルギーを流し込めば、エネルギー同士がぶつかって玉を打ち返せると思ったんだ!」


「野球選手気分か、面白い奴だ」


ゼピュロスは風弾を投げる。レックスはそれを跳ね返す。何とか弾に対する打開策は見いだせたが、本体にダメージを与えることはできないままだった。


そして時は過ぎていく。本来体力勝負となるはずだったが、互いに息をあげてはいない。


2人とも疲れを見せることなく攻防を続けている。


(この小僧...何故こんなにも動ける?)


疑問は加速していく。


(既に何発か弾は当たっているはずだ。しかもかなりの威力で...何より、少しずつ。ほんの僅か少しずつ、圧が強くなってきている)


ついには跳ね返した弾を、そのままゼピュロスに当てることに成功した。


「おら、どうよ?デットボールを跳ね返されて、尚且つぶち当てられた気分はよ?」


「貴様...」


「ほら、次はなんだよ?覚悟はできてるぜ」


「...こうなれば肉弾戦だッ!」


地上にスっと降り立ち、レックスに攻撃を仕掛ける。


(こいつの拳、風を纏ってやがる!その風が分厚いグローブみたいになって...クソ重い!)


拳の突き出されるスピードは、どんどん早くなっていく。それを捌くのにレックスは手一杯だった。


防御をするが、そのほんの僅かな隙間から拳が叩き込まれる。


「『隙魔嵐(すきまかぜ)』ッ」


その叩き込まれた拳に、レックスは苦しむ。


「そろそろ決着の時だ小僧...完全なるK.O.(ノック・アウト)を決めてやるッ」


レックスの防御した剣ごと殴り、ノックバックさせて距離を取った。


瞬間、レックスは勘づいた。「来る」と。


それと同時にゼピュロスも低く構えを取った。


その構えを一切変えないまま、平行移動するようにレックスに瞬時に近づいた。


乾風(からかぜ)ッ!」


その風のグローブが、レックスの顎を突き上げる。


完全に決まってしまった。


「がッ!」


ゼピュロスは一発食らわせたことにほくそ笑んだ。


だが、レックスは拳によって上に向いた頭をそのままゼピュロスに頭突きで食らわせたのだ。


その頭突きは、ゼピュロスの行動を一時的に鈍らせる。


そのまま大剣で切る。というより、叩き飛ばした。


追撃。追撃。追撃。その数々の攻撃が、ゼピュロスを追い詰める。


「ぐぐぐぐッ...もうたくさんだ!」


またも上空に飛び上がり、ゼピュロスの通った後には少しの風が起こる。


その風を強く掴み、増幅させ、これまでで最も大きい、風の「塊」を作り出した。


「これでッ!貴様の体の骨を打ち砕いてくれる!」


レックスも構えをとる。これまでと同じように打ち返すことが出来るように。


「潰れてしまえェッ!『嵐雷暴(ふうらいぼう)』!!」


その「塊」が迫ってくるのに、レックスは察した。これは打ち返すことはできない。


ゼピュロスの通った後の少しの風が、巨大な下降気流になってレックスに襲いかかる。


頭の上に大剣を横にして、平らな広い面を向けて防御をとる。


あまりにも強い風力に、レックスの足は地面に埋まっていく。


研究所の窓ガラスなど、もう粉々になって見る影も無くなっている。


室内もめちゃくちゃで、今もその下降気流に机や照明が飛ばされている。


「くたばれぇぇッ!!」


全ての力を出してその技を打ち切った。


砂埃が立ち、まだレックスの姿は視認できない。


その砂の煙から現れたレックスは、最終的に膝より高く埋まっていた。


その周辺の地面も、削り取られたようにへこんでいた。


(骨は確実に折れているッ!かなりのダメージのはずだ!)


(なのに何故...何故ッ!「血」が出ていない!)


「なんで血が出ないんだろうな...俺でも分からないんだ...」


「くそッ!ならばこれでどうだッ!『業嵐(ごうふう)』!」


向かってきた波動のような風に剣を突き立て、その風を解く。


「ちくしょうコノヤロウ、足を地面に埋めやがって...」


剣で地面を掘って、足を抜く。


「何っ!軽々と...!」


「さっきの技の方が辛かったぜ?あれが大技じゃ無かったのか?」


「ガキめ...!」


「そろそろ帰ってもらう時間だぜ...」


「来るか小僧!こちらも全力でいかせてもらおう...」


「さっきみたいに拍子抜けじゃないと良いけどな...!」


先程よりも動きが早くなっていく。戦いの鼓動が互いに高まる。


お互いが自分の持っている技をぶつけ合い、傷をつけ合う。


「お前も血が出ないんだな?」


「当たり前だ、我の体は機械なんだからな」


「サイボーグ...か」


「それがどうした?」


会話をしながらも、二人の攻撃は激化していく。


「いや...なんでお前みたいなやつが今まで動いて、こんなことしてなかったんだろうなって...さ!」


大剣を振り下ろすも、避けられる。


「私も...わからないんだ」


(私?いままでは「我」だったはずじゃ?)


「私は何も覚えていない。私が何者だったのかも、私が何を愛していたのかも、目標も何もかも...ただ、使命だけはわかるのだ...「あの人の目標の達成を助けること」それだけは...!」


(このサイボーグ、一体何なんだ...?こいつ...なにかありそうだぜ...)




 ときは少し前、レックスとゼピュロスが戦い始めたとき。この遺跡のような場所は、どこか見当がつかない。薄暗い、雰囲気で言えば、吸血鬼の館のような、風情のある場所。


数々の立ち並ぶ柱が、より不気味なふうになっている。


「ほンとに...どこここ?そんで、バレてるぞ俺から左斜め後ろの柱にいる...誰君」


「さすが...わかるもんだな」


アレスは機械の手を開き、指を揃え少し伸ばすように展開し、鋭い刃のようにした。


「おい、あんた、それ機械の手か?」


「そうだけど、何?」


「俺もなんだよ...機械の手...どこ製の?」


「ヘパイストス社」


「へパ!?そんなとこのを使ってんの?郷衛神団のレベルがわかるね」


「へえ...そういうこと言っちゃう?そういうアンタはどこのを?」


「聞いて驚くなよ?ウルティマ社だよ!」


「そっちこそクソみたいなとこの使ってンじゃねえか」


「何だと!てめえウルティマの素晴らしさを知らねえな?」


「使おうともしていないからね」


少しの静寂が生まれ、二人が同時に口を開く。


「殺す!」


突如、激しい戦闘が始まった。常人はもう目で追うことはできない。


柱が傷つき、抉れ、崩れ、天井から破片が降り落ちてくる。


部屋の中心にアレスは立って、手の形を変える。


相手の男は部屋を、壁を蹴って駆け巡っている。


アレスは、手の形を変える。指の長さを戻し、両方の五本ずつの指先から、赤く光る何かが垂れてくる。


それは鞭のように垂れ下がっている。


そのまま手を振り回し、赤いその鞭のようなものを振り回す。その赤い鞭は壁や柱を切り刻んでゆく。


「へえ、そんなこともできるのか、ただ、作りが雑だな」


避けながら挑発を挟む。男はアレスの前にすっと現れ、口を開く。


「挨拶がまだだったから言っておくぜ。俺はマヌス・アンジェラス。覚悟しな、ウルティマ社の競合を使ってるやつは全員殺すって決めてんだ」


こちらでもまた、新たなる戦いの火蓋が切られていた。
















映画好きなやつは多分だいたいいい人。

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