番犬と嵐 その1
頑張って書いてます。いつもありがとう。
本部への報告が終わった後、レックスはアジトへ帰った。
「おお!おかえり!レックスくん!大丈夫だったか!」
「ルースさん!初任務、なんとかやり遂げましたよ!」
「そうかそれはよかった!早速だけど、来月また任務があるんだ。今回も場数を踏んでほしいっていうリーダーからの話で、僕と君で、また出動することになっているよ」
「そうですか!ルースさんと任務ですかあ...!その任務の内容はなんですか?」
「今回はちょっとばかり重要な任務でね...君たちが任務へ行っている間に、こんなメールが...本部に送られてきたんだ」
ルースがタブレットを取り出すと、一つの画面を映し出した。
画面には、「AUGUST 8TH ALPS RESEARCH INSTITUTE ATTACK!!」という文字とともに、天帝のロゴが見えた。
「『8月8日、アルプスの研究所を攻撃』...だって?」
「うん、この声明が来たからには、出動して護衛をしなくちゃね」
「わかりました!」
「じゃあ、今日から出動の日までは、ゆっくり休んで!」
「イエッサー!」
レックスは自分の部屋に続く階段を登っていった。
「ねえ、サン?」
「なんだ?」
「彼...来たときと雰囲気変わったよね」
「...そうか?元からあんなだったような気がするが...」
「まあ、少しずつ緊張がほぐれてきたのかな?」
「だといいがな...」
その出動の日が来た。8月8日より少し早い、一週間前の8月1日にアジトを出た。
アジトに残る他のメンバーがレックスたちを見送った。その顔ぶれの中に、ルナ・デルソルは姿を見せなかった。
レックスがルースの運転する車に乗るのは久しぶりのことだった。社内には、また音楽が大音量で流れている。
「いやあ、なんでこんな時くらい送迎の車を出してくれないのかなあ?本部はさ」
「まあ、そのためにチームや個人で車を持つことを許可されてるんじゃないですか?一般人が車を買うには国から許可書を貰わないといけないですし...」
「うーん確かにそうだけどねえ」
「国に許可をもらう手間が省けていいじゃないですか、申請に二年もかかるんですから」
「そんなにAIが怖いんならとっとと車にAIを搭載するのやめたらいいのに」
「...まあ、そうはいかないんですよ」
二人は車に揺られていた。
「ねえ、レックス、ブリトーは好き?」
「俺は...タコスのほうが好きですね」
「タコス!?わかってないなあ、あんなのは外道だよ!」
「外道ってなんですか!自分で好きなようにできるのがいいんでしょうが!」
「そこが外道なんだよ...レックス...」
「なんですか、それ...」
「じゃあ、ピッツァはどうだい?」
「ピッツァは、もちろん好きですけど」
「何が好き?マルゲリータ?それとも、パルマ?」
「パルマって、ワインによく合うって言われてるやつですよね?俺まだ未成年っすよ?」
「俺は...ペスカトーレが好きです。特にムール貝とエビが乗ってると最高ですね」
「へえ、シーフードが好きなんだ...いいね、それは僕いいと思うよ」
「ルースさんは何が好きなんです?」
「僕はマルゲリータ一択だね、確かにペスカトーレもいいけど、トマトとモッツアレラのあの組み合わせが好きなんだ」
「確かに...あれもうまいですね」
「僕には二人の同期がいてさ、僕含めた三人で、よく論争になるんだよ。そのうちの一人に、君と同じくペスカトーレが好きなやつがいてね、君の具材の好みはわかるんだけど、そいつはタコが乗ってないと駄目だって聞かないんだ。僕はあんまりいいと思わなかったけどね」
「タコ...まあよく見かけますけど」
「もし君が真っ先にタコが好きだって言っていたら、多分、もっとキレてたと思うな」
ルースは笑いながら言った。笑っているのを見て、自然にレックスも優しく笑みをこぼした。
「おっと、こんなこと話してる場合じゃないね。今回のメンバーだけど、その二人と一緒に行動するんだ。僕達三人は、正面を守る。君は、裏口を守ってほしい」
「ええ!俺一人ですか!」
「うん。守る、というより、見張りに近いかな。研究員がどさくさに紛れて変なことしないか、見てないといけないんだ。この郷衛神団は、裏切り者やスパイを嫌うからね。それと、研究員を安全なルートに避難させること。これは僕達も手伝うから、安心して」
「まあ、わかりました」
「不服かい?」
「いや、せっかく戦って成長できると思ったのに、ちょっと残念スネ...」
「まあ、そんなこともあるよ、いろんな業務や現場を見てこそ、成長につながるんだから」
「そうっすけど...」
「それに、近道をしすぎた僕の同期は、皆死んだよ」
突然の言葉に、レックスは息を呑む。
「ああ、ごめんね。つまり、段階踏まないと危ないよ、ナイク・レックスくん」
「...わかりました」
その後は、特に話をすることはなかった。
「よーし。ついたよレックス」
「やっとですね」
エンジンを切って、車から二人は出る。すでに、今回の任務を任された別のメンバーは到着していた。
「よお!クソッタレども!」
ルースはそこにいた、たった二人の男に声をかける。
「会ってそうそうクソッタレ呼ばわりかよ?クソメガネ!」
その男は左手がなかった。代わりに、前腕の途中からは先は、ロングソードのような刃になっていた。
「元気そうだな。そっちの小僧は何だ?噂の新入りか?」
今度の男は手が義手のようだった。見てわかるほどにそれは、義手よりも遥かに精密でより重厚な機械だった。
「ど、どうも」
「何だ小僧?俺達の手に驚いてんのか?」
ロングソードが言う。
「俺等みたいなやつは、他に沢山いるンだぜ?」
機械の手をした男が続ける。
「ああ、二人の紹介がまだだったねレックス、この左手が剣の彼が、テュール・マッカーサー。そして、こっちの義手みたいなの着けてる彼が、ブグナ・アレス」
「冥界の団員たち...また暴れないでよ?」
「冥界?」
「そう、僕達タルタロスは『冥界の暴れ馬』ってみんなに嫌われてるんだよね」
「おい小僧、足手まといになるんじゃねえぞ?」
「おいマック、そう言うなよ」
「そうだよマック、レックスは強いんだから」
「俺をそう『マック』って呼ぶな!!」
施設に入ると、研究員達はすでにいなかった。
「おい、どうなってやがる?研究員が一人もいねえぞ?」
「あれえ、レックスに研究員たちを避難させるように指示が出てたんだけどな」
「まあ、いいじゃン、足手まといが居ないンだからさ」
「まあ、やりやすいっちゃやりやすいけどね...じゃあ、とりあえずレックス、裏口に回ってくれる?」
レックスがいなくなった所で、三人が話していた。
「予定の一週間前ってことは、今日襲撃が来るんだろうな?」
「かもしれない、ってことでしょ?」
その時、騒音が外から聞こえてきた。
「来たみたいだよ、マック、アレス」
「さて、暴れますか!」
「全員ぶった切ってやる!」
三人が表口から外に出ると、絵の前にはロボットたちの軍勢が迫ってきていた。
「なンだ、生の人間じゃないのかあ」
「でも、物を壊すのは好きでしょ?アレス」
「...ちょー好き」
「ほら、もうマックも走り出したし、いこうか」
たった三人で、軍勢の中へ突っ込む。その数、総勢58体ほど。二十九種類ほどのロボットが、二体ずつ。
この情報を、瞬時にルースは見抜いていた。
「ああ、戦ってる音が聞こえるな...俺も戦いてえー!!」
一人、レックスは嘆いていた。
数十分後、ロボット兵器の残骸の山の上に、三人は座っていた。
「こいつは...『K』...」
ロボットの胴体に剣先を刺して見る。
「こっちは...『Zn』だね、まあまあの数いたよ」
ロボットの頭に指を突き刺して確認する。
情報を収集していると、背後に何か浮遊するものがあった。
三人が一斉に振り返る頃には、それぞれが別の場所にいた。未だ見たことのない、どこかの場所。
「...い、一体何が起こりやがった...?」
マッカーサーのいるところは、開けていて快晴の場所だった。
「おい!ふたりとも!マック!アレス!」
ルースのいるところは、幅の広い、薄暗い回廊。古代の城のように、壁掛けの松明がいくつも並べてあり、遠い先は少しも見えることはなかった。
「...まずいネ、俺達としたことが...」
アレスは、どこかよくわからない。本当に検討もつかない、遺跡のような場所。何本もの白い柱があり、かけているもの、折れているもの、きれいに立っているもの、様々な柱が無造作に立ち並んでいた。
「先輩たち、音しないけどもう終わったのかなあ?」
そんなこともつゆ知らず、レックスは退屈していた。三人の様子を確認しようと裏口の扉に手をかけた。
風が吹いた。
風は強まる。西から吹く風が、どんどん、どんどんと強まり、音を立てて吹き乱れる。
「な、なんだ、この風」
音が大きくなる。その音は耳を塞ぎたくなるほどの、轟音。決して高い音ではない。雷のような、ゴオォオという轟音。
風の吹く方向の、上空を見てみると、何かが迫っていることに気付いた。
「な、なんだあいつ!」
そして、その何かは、竜巻を起こし始め、それを纏って近づいてきた。
「やばいな...この風...このままじゃ」
ついにその竜巻は眼の前まで到達し、レックスの前方で動きを前進を止めた。その風邪は少しずつ弱まり、正体が現れた。
「我は四神風西風。ゼピュロス。この研究所を殲滅しに来た」
レックスは固唾をのんで、すぐさま大剣を手に取る。
「随分と派手な登場だな...よくわかんねえけど、ここは守るぜ...俺は『冥界の番犬』だ!」
ルース・グールマン
性別 男
使用メカ:レフェレンダリウス
両手で持つ二丁の武器。
ソウルエネルギーをエネルギー弾へ変換して銃撃するガンモードと、ソウルエネルギーをまとわせて相手を切り裂くソードモードを使い分ける。
敵の数や特徴などを察知しているのは、彼の着けている眼鏡である。




