雨に唄えば その2
年内には新しい話を投稿したいなと思いまして
レストラ・タラスクの撃退後、依然として戦いは続いていた。
「レックス!伏せて!」
そう叫んだあと、ウロボロスに向かってレーザーを発射した。
咄嗟にウロボロスは飛び上がり、その攻撃を回避、レックスはデアの元まで後退した。
「ありがとう、助かりましたよ」
「レックス...その、タメ口でいいから」
少し照れくさそうに彼女は言った。
「えっ?」
「おいおい、なんかイイ雰囲気になってるな...そんなの俺に見せんじゃねえよ!!!」
怒った様子でグレネードを取り出し、投げ、爆発が起こる。
(くそっ、あいつ、手数が多すぎる!マシンガンに、マチェーテみたいなやつ、グレネード、ナイフ!まだ俺が確認してないだけで、もっとたくさん武器を持ってやがるかもしれねえ...どうやってあいつに一泡吹かせれば...!)
「お前ら二人...すぐに殺してやる...そんなのは、容易い話だからな」
「やってみなさいよ!今の私達は最強よ!」
彼女のレーザーを始めとして、戦いが激化していく。その中でも相手は、二人にダメージを次々と与えていく。
「手数だぜ...結局の命運を分けるのは...手数の多さなんだぜ」
「お前らが知らないだけで、俺にはまだまだ、殺戮の手段が残ってる」
もちろん、相手に攻撃が当たっていないというわけではない。レックスの大剣による斬撃も、デアの放つレーザーも、着々と相手を追い詰めている。
「だがもう時間がかかりすぎた...終わりにしてしまおうか!」
突然ターゲットを二人からレックスだけに変え、猛攻を開始する。その右目には雫型の炎が浮かび上がっていた。
「俺のホロコーストは、単純な『肉体強化』!俺の筋肉が破裂するまでは!肉体を強化し続けられる!」
途端にウロボロスの攻撃が重くなった。その強化された脚力。跳ね上がったスピードのせいで、デアも狙いが定まらなかった。
攻撃は更に早くなっていく。レックスの大剣では防ぐので精一杯だった。
レックスは重い蹴りを腹に食らって、飛ばされる。即座に取り出されたサブマシンガンが、レックスを襲う。それすらも、モロに胴体に打ち込まれてしまった。
すぐさま間合いに入り、7の形のマチェーテは姿を変え、一本の線、本物のマチェーテと同じ様になった。
「死ねッ!」
そして更にもう一撃、レックスは右肩から左脇腹に向けての斬撃を許してしまった。
その場に、倒れ込む。
「ふん、雑魚が出しゃばるからだぜ...」
ゆっくりデアの方を首だけ動かし、凝視する。
「あとは...」
ジリジリ、デアに踏み寄る。
「来ないでっ!」
レーザーを乱射する。だがその軌道はブレている。ウロボロスには軽々と避けられてしまった。
(ああ、また私、怖気づいてる...)
「あとは、お前だけだな?」
(こんな状況、一体どうしたら...?)
「やるしか...!」
この時、彼女の目が覚悟を決めた目になった。
「『レジーナ』(女王よ)!」
デアは右目に宇宙に浮かぶ星のような輝きを持つ、魂の具現化を浮かび上がらせた。彼女自身、訓練以外で初めて使うホロコーストである。
「はは..面白いじゃないか?ホロコーストか...お前の...」
ウロボロスは、思いかけず足を止める。
「なんだ...これは」
ウロボロスの周囲、それにとどまらず、広い範囲に、何かキラキラとしたものが発生している。
「これが...私のホロコースト、『レジーナ』。そして、この周りのは『フルゴル』」
「なんだ...?この眩しいのは?」
突然、ウロボロスの頭上に『フルゴル』が出現する。
(おっと、まずいな)
考えさせる隙を与えぬ程の速度で、その『フルゴル』と呼んだ煌めきにレーザーを放つ。
放たれたレーザーがそれに当たると、それは閃光を放ちながら弾けた。そして、その破片が辺りに飛び散ったのだ。
「おいおいほんと眩しいなあこれ...それにこの飛び散る光、ショットガンみたいだ。これが終わったらショットガンも手数に追加してみよう」
「あなたは帰らせない...!」
次々と閃光を食らわせ、その破片がも激しくなっていく。だが、目まぐるしい光の粒子に、ウロボロスは目立ったダメージも負っていないようだった。
そしてどんどん、押されていく。
「...もう終わりにしてもいいか?そろそろ飽きたぜ...!」
「くっ...終わらない...!」
「お前は少し苦しむように殺してやるぜ。あの少年はすぐに殺してしまったからな...」
二本のマチェーテを振りかざそうとした時、彼の目線の下の方、輝きが目に飛び込んできた。
(こいつ...!まさか!)
「ここまで引き付けたのは...これを食らわせるため...」
(まずい!体を拗らなければ!)
そう思ったのも束の間、行動に移せる隙もなく、『フルゴル』がレーザーによって爆散した。
その爆風で、ウロボロスは吹き飛ばすことに成功した。それに、大きなダメージも、全身に負ったようだった。
「...てめえ、やってくれやがったな...ゴフッ」
血を吐きながら一点を見つめて言った。
「俺の手吹き飛ばしやがって...」
「反撃成功ね...」
「殺してやるぜ...お前...ああ、殺すぜ、幸いまだ『手数』はあるからな...!」
あまりのタフさに、デアは戦慄する。
その時、ウロボロスの真後ろから聞いたことのある声がした。
「なあ、おい」
ギロッと後ろを振り向き、迷わずウロボロスは声にする方へ走る。手はもうないが、手首から短くも鋭い刃を展開させて、立っている少年の腹部に突き刺す。
「...なんでまだ立ち上がりやがる?お前...」
「そっちこそ、なんで手失ってまで人を殺そうとする?」
今負った傷も、その前に負った傷も感じさせないような、不敵な笑みを浮かべるレックスが、男に問いかけた。
「...ここまで間合いを詰めたんだ、もうお前のそのでかいだけの剣は使えないぜ...」
「答えになってないな...まあいいや、お前さっき、『手数』が大事とか言ってたよな?」
そう言って大剣を、地面に突き刺した。
「...!」
「俺だって、剣だけじゃないんだよ...昔から、殴り合いの喧嘩は強かったんだ!」
ウロボロスは何かを予感し、必死に刃を引き抜こうとした。だが、抜けなかった。レックスの強靭な腹筋が、刃を固く掴んで放さなかった。抜けさせなかった。
腹に刃を残したまま、右の拳でウロボロスの鼻を殴る。殴る。次は左の拳で頬を、殴る。そうして顎、目、歯、顔の至る所を殴りまくる。
「制裁を、受けてもらうぜ!トラゴエディア・ウロボロス!!!」
「おうりゃあああああああ!!!」
雄叫びを上げて、力いっぱいに鼻めがけてストレートを放った。腹筋の力も抜いて、刃も抜けて、ウロボロスは数十メートルも殴り飛ばされた。
ウロボロスは、もう「ぐああ」と声を上げることもしなかった。ただ、殴り飛ばされた。
「レックス!大丈夫!?」
デアはすぐさまレックスに駆け寄った。が、ある異変に気付く。彼の腹からは、一滴の血も垂れていないのだ。
「おい!そっちは大丈夫か!」
向こうからイシスを抱えたウルが走ってきた。
「はい!なんとか生きてます!」
「よし、無事で何よりだ。お前たちよくやった。すでに迎えは呼んであるもうじき来るはずだ」
「...レックス?本当に大丈夫?」
「俺は全然!気にすんなよ!」
すこし経つと迎えが来て、レックス以外の者がそこへ乗った。
「どうしたレックス?早く乗れ」
「いや、俺バイクに乗ってきちゃったんで」
「そうか、帰るときには一度、本部へ立ち寄ってからアジトへ行くように」
「了解っす」
車の扉をバタンと締め、車は走り去っていった。
「あ、あの!」
振り返ると、そこには村の人々がいた。
「助けてくださって、本当にありがとうございます!」
「い、いえいえ、皆さん顔を上げて!」
「この御恩、一生忘れません!」
村の人々に盛大に見送られ、レックスは帰りの道中、喜びで笑みが止まらなかった。
一つの部屋。郷衛神団本部の総司令官室に、デアはいた。
「総司令官、一つ報告があります」
「...言ってみろ」
「今回同行したナイク・レックスの件ですが...」
「その、彼が敵に腹部を刺されて負傷していました。駆け寄ったところ、そこからは血が出ていなくて」
「...そうか」
「要件は済んだか?」
「で、ですが総司令官、彼に特別厳重な警戒をする必要はないと思うんです、その、彼は何から何まで自分で考えて、勇敢で行動力があります、ですから...」
「...考えよう」
「総司令官!」
名を呼んだときには、もうその男は消えていた。数秒前には座られていた形跡のある椅子と、コーヒーが置かれていたであろうデスクの前に、デアは立ち尽くすしかなかった。
イシス・ハンナビ・クルクス
エネアド所属
性別 女性
年齢 もうすぐ三十路
メカ クローザー
腰についている2つの十字架の形をした物。持ち手になり、ビームサーベルを展開できる。
ホロコースト マーテルレーション
自分から離れているサーベルに、自らの身体を瞬間移動させることができる。その逆に、離れたサーベルを自分の手に瞬間移動させることもできる。
メモ 彼女はエジプトの国民食、コシャリが好物らしい。(スパイスをたくさん入れて)
ビューエ・ウル
アスガルド所属
性別 男
メカ ソマフール
弓と矢。矢じりはいざとなったときに爆発する。ホーミング機能も開発者は搭載しておいてあるが、彼は弓の天才なので一度もその機能を使ったことがない。
ホロコースト スカルスガルド
矢じりと矢じりの間に見えない直線の結界を貼ることができる。その線に触れると強い衝撃が加わり、体内がズタボロになる。
メモ 彼は休日の日(一年に数回)、家族とサウナに入りながら談笑することを楽しみとしている。




