95 『国の報告会』に参加するジュノリス王と、突然の訪問者。
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それから三日後式典は開かれ、俺はジュノリス王の養子となり次世代を担うアツシ王太子へと立場を変え、カナエはその婚約者の立場を手に入れた。
それが、また別の方面から火の手が上がるとはこの時思いもしていなかった訳だが――。
式典も終わり、やっとの思いで仰々しい馬車に揺られながらミスアーナの家にたどり着いた。
拠点にいた皆に集まって貰い、事情を説明して自分が『ジュノリス大国の王太子になった』事を告げると驚かれたが、『今まで通りだし、まだ暫くはノスタルミア王国での活動が中心となるので、皆には今まで通り接して貰って頑張って欲しい』と伝えるとホッとされた。
身分が変わったからと言って俺自身が変わる事など無いのだ。
――今のところは。
だが、ストレリチアに関しては【ジュノリス大国の王太子の店】と言うのを出さねばならないとリウスさんに言われ、渋々それを伝えることになり、【ストレリチア村】についても同等の事を言われた。
王太子と言っても養子と言う形なので、血は繋がっていないと言う事はハッキリと伝えた上で告知した為、街の人たちは『これだけの事を成しえる人なら目を付けられても仕方ないな』と好意的に取られた事は安堵した。
ジュノリス大国から帰宅して一週間後の本日は我が家で『国の報告会』がある為、ジュノリス王にも手紙を出すと王太子の部屋から本当にやって来た。
これには集まっていた三国の王たちは驚きを隠せなかったが、陛下は紅茶を飲みながら「いい茶葉を使っている」と満足気に微笑み、三国の王たちの報告会を聞いている。
無論ジュノリス王の為のリクライニングチェアを購入して用意してからだが。
「なるほど、ノスタルミア王国では漁業と絹、それに羊の毛を使った服を作る事で」
「そうなるな。アツシ殿とジュノリス大国に行く際に話になったのだが、やはり実のある時間であった。無論アツシ殿のスキル無くしては出来ない方法ではあるが、今は漁業の中心となる場所の選定と、蚕の養蚕地。それに羊を更に増やすべく場所を増やそうとしている所だ」
「そうなると、ラスカール王国ではもっと目玉になる特産品が必要となりますね。日持ちする野菜ばかりでは強みが無いし、冒険者だけに視点を注ぐのも良くない。かといって何かいい方法があればいいのだが……」
「それなら畜産はどうですか? うちの魔物で乳をよく出す魔物がいるんですが、寒さに余り強くなくて乳を量産出来ないのです。秋の国であるラスカール王国でなら乳は沢山出すでしょうし、業務提携という形を取れば」
「なるほど……。その為の施設がまた必要になって来るが……アツシ殿からスキル領地を借りると言う手も」
「我が国から獣医もお貸ししますよ」
「むう、確かに卵といい乳といい、良い産業には違いないが空間収納が使える人材を確保しなくてはな」
そうなのだ。荷物を運ぶにしてもこの世界では冷蔵冷凍と言った物は発展していない。
魔道具も調べたが、現在頑張って研究中の様で、まだ進んでいないようだった。
その代わりに空間収納を使える人員は何処でも引っ張りだこだし、そのスキルを持っているだけで食べて行けるだけの力はあるとさえ言われているのだが――。
「それならジュノリス大国で募集してみればよい。『空間収納を使える者を雇い入れるし、護衛の冒険者も雇い入れる』とラスカール王国からの人員募集をスラムですれば、冒険者として名を上げようとした者達の中にはそれなりの数は居ようて」
「宜しいのですか?」
「スラム問題はわが国でも問題でな。してくれた方が助かる。ラスカール王国は質のいい麦も取れるからな。農産でやって行くには一番いいじゃろうな」
「ダングル王国では普通では麦や作物と言った物は育ちませんからね。どうしても輸入に頼りたい所はあります。パンなんかは特に」
「確かに」
「ノスタルミア王国の麦よりも確かにラスカール王国の麦は良い品であるな。作物も甘みがあって美味しいものが多い」
「という事は、農耕地として優れた農地を持っていたのを、元オスカール王国が駄目にしたと」
「「「そうなるな」」」
「斬首刑でも足りない気がします」
そう言って締め括ったシュウに苦笑いをすると、次の問題である国境に置く休憩所をどうするかという話題になって行った。
やはり一つの場所で王たちが語り合った方がスムーズに進むようで、後の会議でも「他国の王はそうすると言う事になっているが?」と言うと口答えする者が少ないらしい。
我が家はそう言った意味でも、王たちの悩みを語り合い解決する場となっている。
「宿場町は大事ですよね。一応ダングル王国には三国の為の宿場町は置いてありますが、今は余り機能していないのが現状です。たまに来てくれるボルドーナ商会用と言う感じでしょうか」
「輸出や輸入に強い商会を作らせるのは急務ではあるな。ジュノリス大国からは色々あるが、慢性的に民に不足しているのは香辛料であろう?」
「ラスカール王国では城でも足りていません」
「急務の問題のようじゃな」
「そう言えばジュノリス大国ならカカオはありませんか?」
「ああ、熱い内陸には捨てる程沢山あるが?」
「こういうのが作れるんですが、食べてみます?」
そう言って俺がチョコレートを差し出すと、ジュノリス王はパクリと食べて「なるほど」と口にした。
「溶けやすいのが困った所ですし、砂糖バターもふんだんに使うので作るのは大変なんですが」
「これは実に良いな。チョコレートは【お取り寄せ】で知っておったが、カカオから作られていたとは…。我が国に新しい風が吹きそうだ。カカオは捨てるしかなくて困っておったのだよ」
「原材料は知らなかったのですね」
「うむ、これは良い事を知った」
「国内産業になりますね」
「そう言えば魔導具は何処が一番発展して作ってるんでしょう?」
「ノスタルミア王国が最先端を行っていると聞いているが?」
「【冷蔵】【冷凍】の技術をいち早く確立させた方が良いですよ。馬車に取り付けるもよしで外に漏れないような工夫は必要ですが、あらゆる場所で使えるようにして貰えると助かります」
「ふむ、後で詳しく教えてくれ。王命で進めさせよう」
そう伝えると三国の王は喜び、また新たな産業としてノスタルミア王国は発展しそうだ。
それが当たり前になれば全ての国も安定するし、良い事尽くめなんだが。
その時、来客のチャイムが鳴り俺が出てみると、知らない執事が立っており首を傾げる。
「何方でしょうか?」
「ジュノリス大国王太子のアツシ様ですね」
「一応そうですが何か?」
「ノスタルミア王国のアジュリンダ様がお呼びです。至急お越しいただければと」
「アジュリンダと申したか?」
その言葉に鬼気迫るオーラを発しながらやって来たのはノスタルミア女王で、これには執事も目を見開きフルフルと震えている。
「アジュリンダに伝えなさい。アツシは一生お主の前には来ぬと」
「し、しかし」
「我が声が聞けぬのなら、一か月後と言わず明日にでも塔に入れると伝えよ!」
「ひいいいい!!」
そう言って執事は名乗りもせず馬車に乗り込み去って行った。
どうやら、一波乱ありそうだ。
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