94 心がやっと落ち着いたジュノリス王との会話は穏やかで……。
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俺とカナエは王太子と王太子妃の部屋が与えられ、そこに扉を付けて三国との行き来が出来るようにし、無論ミスアーナの家にも帰れるようにしたし、もう一つ大事なストレリチア村の二人の家にも扉を繋げた。
これでホッと安堵していると、ジュノリス王が部屋に入ってきた。
何だろうかと思っていると――。
「この度、お主たちを異端審問に掛けるなどと言ってすまなかった」
「いえ、変化を恐れると言う意味合いでは仕方なかったかと思います」
「変化を恐れるか……確かに変化を恐れていた。あの二人のどちらかが跡目を継ぐと言う事も、暗黒の時代が来ると言う事も、ワシの責任だと自暴自棄になっていたのはある。だが、シュナイダー王の持つ悪意察知と危険察知、そしてアツシの持つ危険察知のお陰で今は亡き王太子とその相手が他殺であったことも分かった……礼を言う」
「ジュノリス王……」
深々と頭を下げたジュノリス王だったが、顔は何処か晴れ晴れとしていて、小さく「王妃が生きていたらどれだけ喜んだであろうか」と呟いた。
「それ程俺は、アルフォード王太子に似ているのですね」
「ああ、顔や声だけでなく、持っているオーラすら似ている。ノスタルミア女王も知っていたのだろうが、敢えて言わなかったのは、実際アツシ達の顔を見て判断させようとしたのだろうな」
「今直ぐにジュノリス大国の為に動く事はできませんが……」
「知っている。ノスタルミア王国での特産品を作る為に奔走せねばならぬし、そなたの持つノスタルミア王国にある拠点には三つの国の王が集まって報告会をしているそうではないか。各国の王が集まり報告会や互いに困る点を話し合うと言うのは大事な事。それ程までに王たちの心を掴んで離さないのは、アツシ、お主の人柄もあるのだろうな」
そう言われると気恥ずかしいが、もしそうだとしたら嬉しい――が。
「美味しいものが目当てというのも些かある気がしますが」
「でも、過ごしやすい場所ではあります。獣人の孤児たちをまずは成人させて独り立ちさせないと行けない事もあるけれど、子供達も素直で優しいし、大人組も分け隔てなくって感じだから」
「それに、大人組が何だかんだと子供たちの面倒をよく見てくれるからこそ安心も出来る」
「それはあるわね」
そう言ってクスクスと笑うカナエに俺も微笑むと、ジュノリス王は微笑ましそうに笑顔を向け、「して、これからだが」と声を掛けた。
「ワシも是非、その報告会とやらに参加してみたいのじゃが」
「「ジュノリス王がですか?」」
「そう驚く事でもあるまい。それにそなたの持っている村と言うのも気になる。ワシも余生はそなたの村で過ごしたいものよ。それに、次代のジュノリス王となるには養子縁組もせねばならん。無論、お主が跡目を継いだ後に国の名を変えても構わん。【ストレリチア】を大事にしているのなら、このジュノリスを【ストレリチア】に変える事も可能だ。血は繋がっておらぬのだから、その名を引き継ぐ必要もない」
「しかし……」
「そなたたちがいる間に、今週末帰国すると言うのならワシの息子となるべく式典を開かねばならぬ。既にその準備を進めている所だ」
「い、何時の間に」
「三日後には式典だ。そう仰々しい事ではない。三国の王が集まった今しか出来ない事だ。ジュノリス大国をまとめ上げる為の次代として署名し、民に姿を見せるだけでよい」
そう語るジュノリス王に俺とカナエは不安ならも、これは決定事項なんだろうなと頷き「分かりました」と口にした。
養子縁組か……この世界に来て王族に養子縁組されるとは想像すらしていなかった。
ずっとストレリチアとストレリチア村を守って行くものだと思っていたから、ジュノリス大国の跡目を継ぐとは思ってもいなかった。
「それに、我が国の問題でもある『スラム』の問題もあってな……。仕事を与えたいが、その仕事が今は無いと言うのもある。新しい事業があればまた違ってくるのだが」
「スリ等の問題がとても多いと聞いています。安全な道を通れば問題は無いけれどとも」
「ああ、彼らも生きるのに必死だ。かといってスラムを解体するわけにもいかん。スラムの人間達にも仕事を与えてやらねばならんのだがな。方法が思いつかんのだ」
「なるほど。まずはスラム問題がある訳ですね」
「ああ、何かいい案は無いだろうか?」
「幾つか案はあります。今すぐには難しいですが……」
「ふむ」
「スラムを解体して、村を作るのは可能なんです。夏故の理想郷は作れますね」
「そなたが作ったと言うストレリチア村のようなか?」
「ええ、ストレリチア村が春の気候を生かした村なら、ジュノリス大国には夏の気候を生かした村ですね。無論スラムのある場所から離れたくないと言うのなら、スラムの近くに働く場所を作ると言う手もありますが」
「ほう」
「でも、問題は大体の産業がこのジュノリス大国にあると言うことよね?」
「そうだな、大体の産業は既に発展しているので、これ以上となると目新しいものが必要になってくる。その上で他国に売りに出せるようなものとなると色々な案を出すしかないな」
冒険者も多いこの場所での新たな産業も考えねばならないし、畜産の方はどうなっているんだろうか。
その辺りも気になる。
うーん、やる事が多くて頭がショートしそうだ。
「なに、今直ぐにとは言わん。まずはノスタルミア王国の問題が解決してからで構わんよ」
「それでいいのでしたら助かります。それまでに草案は出しますので」
「アツシさん? またオーバーワークしないでね?」
「う」
「ははは!」
「そう言えば、王太子に宛がおうとした女性はいたのですか?」
ふと気になったので聞いてみると、何でも侯爵家の娘と婚姻させる気だったらしい。
だが、その侯爵家の娘も年頃となり、王太子が亡くなったこともあって別の男性の元へ嫁いだのだとか。
「俺はカナエしか妻を持たぬと決めていますので、他の女性を宛がわれても困りますよ?」
「ああ、それは肝に銘じておこう。貴殿に逃げられてはたまったものではないからな」
「是非そうしてください。俺は愛する女性は一人で良いんです。国の為に他の女性を娶ろうと言う気はサラサラありません」
「アルフォードと同じことを言うのだな」
「すみません、でも俺はカナエだけが良いんです」
「アツシさん……」
「それに、カナエが20歳になったら婚姻しようと思っていますので、あと一年程度しかないですがその間にやるべきことは済ませてジュノリス大国の改革も進めますよ」
「頼もしい限りだ。よろしく頼む」
こうして強く握手を交わして、赤い扉がノスタルミア王国にある拠点に繋がっている事を伝えると、陛下も通せるように変更し、『国の報告会』の際には手紙を出すことを伝えると嬉しそうにしていた。
まぁ、三国の王たちは驚くだろうがそれもそれでアリだ。
それに一つの秘密を教えてくれたのだが、ノスタルミア王国の女王陛下とは同じ年らしい。
ああいう女性を美魔女と呼ぶんだなと改めて理解した。
それから三日後式典は開かれ、俺はジュノリス王の養子となり次世代を担うアツシ王太子へと立場を変え、カナエはその婚約者の立場を手に入れた。
それが、また別の方面から火の手が上がるとはこの時思いもしていなかった訳だが――。
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