93 変わる時、変わる時代、代わる王家。
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ショックで狼狽え座り込んだヘイリオスは呆然としているが、もう一人のヴォルダークは慎重派とみたいが、どうやらそれも違うようだ。
クスクスと笑い自分に次の王座が回ってきたと思っているようだが――。
「そもそも、ジュノリス大国は三つの国の中心ですよ? 今更何を勉強すると言うのです。こ奴に教わる位ならその辺の文官に教わった方が早いくらいですよ」
「その辺の文官と異世界の国の知識を一緒に考えているのなら、余程頭の悪い馬鹿なのだろうなぁ」
「は?」
「ジュノリス王、ラスカール王国はヴォルダークをジュノリス大国の王とは認めません。そんな当たり前の事も分からぬ者を王などにしては国が滅びます」
「な、なんだと!?」
これで候補者二人が落第。次の王となる者がいなくなってしまった。
これに頭を抱えたのはジュノリス王でもあり、「やはりこうなるか」と何処か諦めきっている様子ではあった。
「お前たち二人はスキルとしては劣化版だが才能は僅かにあった。しかし、民を束ねる、国を良くすると言う面では全く足りなかったのだよ。お前たち二人は国の為の勉強をワシがせよと申しても、授業に来なかったであろう」
「「それは……」」
「既にその時から主らには期待などしておらんわ」
そう言って溜息を吐くジュノリス王の苦労が見て取れる。
確かにこの二人では暗黒時代に突入するのは見て取れるからな。
それに俺が持っているスキル、危険察知はまだ止まっていない。
アルフォード王太子に似ているにしても、これは余りにも強すぎる。
多分シュウの持つ悪意察知も同じだろうなと思うと、俺の方を見て不安げにしているシュウに小さく頷き、シュウも小さく頷き返した。
「時にお聞きしますが宜しいでしょうか?」
「なんだ? シュナイダー王」
「アルフォード王太子とその婚約者であるカナリア様は、池で亡くなっていたと聞いております。深い池だったのでしょうか?」
「深いと言えば深いが、民も時折泳いだりしていたくらいの池ではあるな」
「そこで亡くなるのは、不自然ではありませんか?」
「「何を言う!!」」
「薬を飲まされたか何かしない限りはそのような民の憩いの場所で王太子ともあろう方と、その想い人が死を選ぶことは考えにくい。それに、ジュノリス王に反対されてもアルフォード王太子は結婚出来ぬ事を苦に自殺するような方でしたか?」
そうシュウが問い掛けるとジュノリス王は「……それはない。故に可笑しいとは思っていた」と口にした。そうだろうなと思ったんだよ、この王の血を引いているのなら強引にでも恋人と結ばれる道を選んだはずだ。
俺だってそうする。
「何年前の出来事かは存じ上げませんが、この二人を絞り上げたら答えは出てくると思います。余りにも先生……いえ、アツシ様へ対する悪意の向け方、そして私とアツシ様の持っている危険察知が酷く感じておりますので」
「誰かこの二人を牢に入れておけ。この者の関係者を呼んで一人一人自白剤を使って吐き出させよう」
「自白剤!?」
「それは犯罪人に使うものです陛下!」
「その可能性があるのなら使うしか他無かろう。そうそう悪意察知と危険察知が働く等あり得ぬ話なのだ。何か後ろめたい事を持っている者でなければ発動しないとされている」
「「!?」」
「この国に悪意察知と危険察知を持っている者が冒険者ならいざ知らず、王となった者やその素質がある者が持っていると言うのは僥倖であった。シュナイダー王には後に褒美を取らせる」
「はっ」
そう頭を下げたシュウとは違い、ヘイリオスとヴォルダークは捕えられ叫び声をあげながら連行された。
もし他殺だったりした場合は、この二人は法の下で裁かれるのだろう。
「はぁ……ワシにもそのような能力があれば違ったのだろうがなぁ」
「私は奴隷市場に売られた頃から出て来たスキルですので……アツシ様は何時から出たスキルですか?」
「私はこの世界に召喚された時に出てきましたね。元々危険察知能力は昔から高かったので、その為についていたのではないかと思います」
「教師とは大変な職業だったのですね……」
「しかし、これで次世代の王となる予定の者がいなくなった。新たにと言うのは最早難しい」
確かにそうだ。
次世代が例え暗黒時代を迎えようとも、次の王となる者が見つからないと言うのはこの国にとっても良い事ではない。
本当にあの二人が王太子を殺したのかどうか、そこが判明するまでは何とも言えないだろう。
だが、既にラスカール王国とダングル王国により二人は王とは認められないとされている。それを覆すのは相当難しいだろうな。
そもそも、ジュノリス王はまだ40代半ばなら子は作れるはずだ。
次世代を育てることは可能な筈。
王妃はどうした?
「失礼ながら宜しいでしょうか?」
「うむ」
「王妃様はいらっしゃるのでしょうか?」
「王妃はアルフォード王太子が亡くなって直ぐ、心を病んで亡くなった」
「そうでしたか……」
「お主が言いたいのは若いのにどうして次世代を作らないのかと言う事であろう?」
「はい、ジュノリス王はまだお若いので次世代を作ろうと思えば作れると判断したのですが」
「無理なのだよ……」
「無理というと?」
「子を作る機能が無くなってしまったと言えばよいか? 今は亡き王族の持って来ていた薬の作用でそうなったと聞いている」
思わぬ言葉にその他の王たちも驚き、ジュノリス王は小さく溜息を吐いた。
その薬は違法なもので、おそらく元オスカール王国が用意したものだろうと言うのは理解しているらしい。
それ程までにオスカール王国では違法な薬物が出回っていたのだと言う。
その事についてラスカール王に聞くと、実際そうであった事と、違法な薬物については王命を出し、全て集めて処分させたが、隠れて持っていれば今後は斬首刑となると国民に通達していた。
家にあるだけでも斬首刑とされる為、取って置こうと言う馬鹿は早々居ないだろう。また劣化が激しい薬でもある為、今あっても使いモノにならないとも。
井上と水野を鑑定した時に、生殖機能障害とかは出なかったので二人に使われた薬物は別の物だったと思いたい。
本当に元オスカール王国の王族は碌な事をしない連中だな!!
「このまま国を衰退させる訳にはゆかぬ。アツシ殿とカナエ殿さえよければ、この国を導いてやってはくれまいか」
「「え!?」」
「他国にてやるべき事があるのは分かっている。それが終わってからで良い」
「ですが、私たちは王族ではありません」
「王族としてのふるまいも、貴族としてのふるまいも出来ないと思いますが」
「元より王妃が亡くなってからは王妃が開く茶会なども無くなっている。今更元に戻す気等ないし、王族がダンスを踊るといっても王妃がいなくてはダンスも無かった。故にその方らにも踊れなどと言えぬ」
「ですが」
「何も今すぐと言う訳ではない。ワシもまだ40代と若いからな。二人が跡目を継ぐのはもっと先の事だ」
まさかそう言う流れが来るとは思わず頭を抱えてしまったが、ジュノリス王は本気のようだ。
「アルフォード王太子に瓜二つのアツシ殿と、その恋人であったカナリアにそっくりのカナエ殿ならワシも安心して国を任せられるのだ。三国の王はどうだ?」
「確かに、まだまだやるべきことは残っておりますので跡目を継ぐのはそれらが落ち着いてからとなりましょうが」
「私は賛成です! ですがアツシ殿とカナエ殿との話でお二人の子供を婚約者にする約束をしております!」
「私も婚約者にしたいのですが、残念ながら年齢が」
「ははは! それならラスカール王は早々に妻を貰い、二人の子がアツシ殿の子と結ばれれば良いではないか」
「……その手がっ!!」
「なんて卑劣な!」
「何をいう! これも大事な王としての務め!」
「むぐぐ」
「アツシ殿とやら、余程愛されているのだな」
「嬉しい事ですが複雑です」
「私も何人産まないと行けないのかしら」
思わず遠い目をした俺とカナエに対し、クスクスと笑いながら言葉を投げかけてきたのは、意外にもノスタルミア女王陛下だった。
「この世界では王族が子を産む際には苦しまぬようにと魔法を掛けて痛みを抑えて産むと言う方法が取られておる。二人が愛し合って子が生まれれば生まれる程、幸せになる国が増えると言う事だな? 是非我がノスタルミア王国の孫にも血を分けて欲しいのだが」
「……カナエ、頑張ろうな」
「そうですね……私若いですし、10人くらいなら」
「それは多すぎだ。――私達の子供が王や王の子、王の孫の結婚相手にと望まれるのは有り難い話ですが、子供達が愛情を抱けぬ者との結婚は認めたくありません。どうか沢山の愛を育んで下さいね。」
「そういう所もアルフォードと似ておるな…」
こうして数日ジュノリス大国に滞在する事になったが、自白剤を使った事で二人がアルフォード王太子とその恋人に薬を使い自殺に見せかけた事が判明。
しかも二人の家も関わっていた事によりお家取り潰しとなり、関わった国の重鎮も死刑が確定された。これによりジュノリス王より若い王族もいなくなってしまった。
また、テリサバース宗教にて俺とカナエが跡目を継ぐと言う事を報告したジュノリス王は、聖女に未来視の力を使って貰うと【輝く朝日の様な時代が訪れるだろう】と言われてホッとしたらしい。
この事は国民に知らされ、「ジュノリス王家の血を引いていなくとも次代の王に相応しい」と伝えられ国民は驚いていたが、法王と聖女より賜った【輝く朝日の様な時代が訪れるだろう】と言う言葉に安心し、暗黒の時代ではなくなったことで国民の表情は明るいそうだ。
俺とカナエは王太子と王太子妃の部屋が与えられ、そこに扉を付けて三国との行き来が出来るようにし、無論ミスアーナの家にも帰れるようにしたし、もう一つ大事なストレリチア村の二人の家にも扉を繋げた。
これでホッと安堵していると、ジュノリス王が部屋に入ってきた。
何だろうかと思っていると――。
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