91 行きの馬車の中で……。
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一週間後の出発が気怠いと思いながらも準備は進めるしか他無く……。こうして一週間後、俺とカナエは女王陛下の乗る馬車に乗り、ジュノリス大国に向かう事になった――。
仰々しいのは得意では無いが、女王陛下と国同士の循環について論議し、その為にはボルドーナ商会がもっと大きくなって輸出に力を入れることが大事であると言う結論にもなった。
今でも充分大きいボルドーナ商会だが、ラスカール王国とは懇意にしているが、ダングル王国への輸出となると話は別だ。
無論輸入に関しても、二つの国が現在発展途上にある為、まずは輸入よりも輸出で経済を回す事になるだろうと伝え、ラスカール王国から魔物の素材を輸入する事になったらノスタルミア王国は魔物が出ない場所な為、魔物の素材を扱った事がないので、今のうちから知識を蓄え技術を習得する事も大切になる。 ダングル王国の場合は畜産が落ち着けば、ダングル王国から肉を輸入するのが国内の大きな需要に繋がるのではないだろうかと話し合った。
人間美味しいものには目がないからな。
「ノスタルミア王国は春の気候ゆえ作物が多く育つ。そちらを輸出することで外貨を得る。と言うのは大事ではあるが、各国ではそれなりに作物は育てているのだろう? 作物以外の物となると、中々難しいのう」
「特産と言う特産品が無いのは痛いですね。観光事業に力を入れると言うのも一つの手ではありますが」
「かんこうじぎょう……とは?」
「ノスタルミア王国の景色のいい場所やご利益のある場所に足を運んで貰ったり、ストレリチア村のように温泉や釣りを満喫して貰ったりですかね」
「ああ、なるほど。それならばストレリチア村は最適ではあるな」
「ストレリチア村に限って言えば、魚を輸出してと言うのも強みです。国の事業に【漁業】を入れるとすれば、それは特産品にはなるでしょう。肉ばかり食べているダングル王国にとっても珍しい魚を提供する食事処が出来れば特別な時に利用する店として繁盛しますし、それが広まる頃を見計らって魚を輸出すると言うのも一つの手でしょう。目新しい物に飛びつく方も多いですが、慎重派も多いですからね」
「ふむ、【漁業】か」
「ラスカール王国の産直市場でも魚は売っていますが、魚料理を食べられる店を作って出せば、同じ人間の国なので受け入れやすい筈です。ただ、飲食店を出すには魚を捌ける人材や魚料理を作れる人材がいるのが前提になってきます」
「派遣しようにも作り方が分からぬのでは意味がないからのう」
と言う話をしていた訳だが、ノスタルミア王国では【漁業】をまずは取り入れてみようと言う話題で話は進み、その為の釣り堀が必要となる為、国が首都か国境にほど近い場所に【漁業】の為の場所を用意する事や、それに加えて調理スキルのあるものが魚料理が作れるように育成にも力を入れることに話が纏まった。
俺のスキルありきだが、女王陛下が言うには俺のスキルはカナエと結婚すれば子が引き継ぐことが多い為、多くの子供を産むことでスキルが綺麗に子供たちに入るだろうと言う事だった。
子供を沢山産むのはカナエの負担になるし、スキルを引継ぐ為に子供を!というのは理解出来る部分と理解出来ない部分が俺の中にはあって複雑だが、俺達の代で終わるのではなく、繋がっていくと言うのは重要だなと思った。
「陛下にはお子様はいらっしゃらないんですか?」
そう聞いたのはカナエだ。
すると女王陛下は「いるにはいるが、娘が二人な」と答え溜息を零す。
女王陛下の娘は陛下と同じ力を長女が引き継いでいるらしいが、次女が奔放で長女が苦労しているらしい。
よく見る「お姉様狡い」とか言う奴だろうか。
「力を持つ者が国を支える。これは我が国の当たり前の事なのだが、次女がそれを理解しないのでな」
「「あ――……」」
「王位継承権は長女にある。と何度伝えても次女は理解しない。早々にどこかの貴族の嫁に出すかと悩んでいる所だ」
「陛下も大変なんですね」
「貰い手があればいいのだが、ないなら幽閉だろうな。あの性格では混乱を招く」
「「そこまで」」
「姉妹仲良くとは、いかぬものよ」
そう言って溜息を吐いた陛下に母親としての苦労を感じ取り、なんとも言えない気分になった。
また「ストレリチアのアツシとなら結婚してやってもいい」等と上から目線で言っていた為、「かの者には既に婚約者がいるから無理だ」と伝えると癇癪を起して大変だったのだとか。
「俺もそう言う女性は困りますね。おんぶに抱っこはしたくないです」
「であろう? 他の貴族も同じ意見だ」
「大変なんですね……」
「生まれ持った性格も災いしているだろう。矯正をしようとしたが全く意味が無かった」
「頭の痛い問題ですね」
「私のお婆様の妹がそうだったらしく、幽閉する為の塔が用意されている。そこでの幽閉が近々決まる予定だ」
「「ご愁傷さまです」」
「国が混乱しては困るからな」
それで派閥がどうのとかモルダバルド侯爵が言っていたのか。理解出来た。
長女の派閥と、次女の派閥があったのだろう。
だが長女が次世代の王となる事は決まっている為、次女の派閥は厳しいものと成るだろう。陛下の国を守るスキルを引き継がない次女が王位を継げばノスタルミア王国にも魔物が出るようになり、困るのは国民も貴族も一緒だ。その時になって苦労するよりは今のうちに対処するしかないのだろう。
しかも次世代の王女も千里眼が使えるし、毒を出される前に「これを作ったのは?」と言えるような人間らしく、毒殺は難しい。
城の中で襲うにしても問題が多すぎる。
妹の方は地団駄を踏んでそうだが、第二のバルガスを作り出すわけにはいかないからな。
「話は変わりますが、養蚕等はしないのですか?」
「してはいるが、質のいいものがなかなかできない。それでも他国よりは良い物が出来るが」
「羊の毛もあるわよね」
「そっちにも力を入れると言うのもありですよ。羊の毛ならばラスカール王国でもダングル王国でも需要はありそうですし、羊の肉は物によっては俺の居た世界でも良く食べられていました」
「うむ、今度議題にあげてみよう」
こうして話し合いながら道中は進み、取り敢えずボルドーナ商会には今後頑張って頂きたい。
販路が増えれば、空間収納を使える人が必要になるし、計算の得意な者や馬の世話や馬車のメンテナンスが出来る人も必要になる。
となると、やはり国境近くに宿場町が必要になってくるな。
これもまた一つの発展と言えるだろう。
それは国としての産業として作る事も可能だろうし、「それについては三国でも話が上がっていたな」と会話していた。
そうすればボルドーナ商会よりも小さな商会も馬車で輸入輸出は可能となるし、国を回すのは一つの商会だけではなく、小さな商会でも構わない訳で。
「今後三国は更に発展するだろう。アツシ殿のお陰だな」
「そうだと嬉しいですがね。それと、ジュノリス大国の事を色々聞きたいです」
そう女王陛下に聞くと、ジュノリス大国の事を教えてくれた。
気候は暑く、かといって砂漠があるような地域ではないらしくじめじめもしていないらしい。
初夏の様な大陸だろうか。
砂糖、塩、胡椒はふんだんにあり、正にそれが国の最たる力の象徴とも言え、鉄鉱山も多く冒険者もとても多いらしい。
一攫千金を夢見て訪れる若者も多いそうだが、大体は夢叶わず国に帰るか、スラム街に住むことが多いのだと言う。
ジュノリス大国にない物はないと言う程、モノに溢れておりそれもレアスキルのお陰なのだとか。
「過去の勇者召喚でレアスキルを持っていた娘と当時の王族が婚姻したことで、とても発展したのだと言う」
「「ほお」」
「今国が栄えているのは陛下のその力のお陰でもあるのだが、王太子が亡くなってからはその力を使えるものがおらず困っているそうだ。アツシ殿やカナエ殿も持つ【ネットスーパー】のようなスキルだと聞いている」
「「なるほど」」
「他の王族に近しい人では使える人はいないのですか?」
「居るにしても劣化版と言う感じらしい」
「「劣化版」」
「それでも無いよりはマシと言う考えの元、劣化版が使える二人の次の候補がいるのだが、余り良い方ではないと聞いている。とても欲深いそうだ」
「法律国家で欲深い王ねぇ……」
「王も王太子の婚姻を認めていれば、こんな事にはならなかったものをなぁ」
とはいえ、既に王太子はこの世にいない。
王も若い側妃や愛妾をもうけ、そのスキルを引継ぐ子を産ませれば話は早いのだろうが、憔悴しきっていて次の子を作ると言う余裕も無いのだろう。
そこで問題があるが劣化版を用意したと言う事か。
何処の国も問題があるなぁ……と思いながら、俺は馬車に揺られジュノリス大国に入って行った。
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