89 【異端なる知識を持つ者】
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ラスカール王も皆と一緒に食べているオヤツに感動仕切りで大変だったが、「ボルドーナ商会に是非色々と頼もう」と目を輝かせていたのは言うまでもない。
その後、授業で教えた内容を二人は直ぐに実行したらしい。
専門家を交えた話し合いに重鎮たちは歯軋りし、重鎮たちが隠したい事を曝け出す専門家の意見はとても貴重で重要案件が多かったそうだ。
「君たちは重鎮なのにそんな事も知らなかったのか。ならば要らないな」と慌てる重鎮たちの入れ替えも行い、やる気のある若い者達が増えて行き、会議は驚くほど進んだと言う。
それはラスカール王国でも同じで、専門家の意見と重鎮たちの意見がかみ合わないことが余りにも多く「君たちは重鎮だと言いながら国の事を何もわかっていないではないか」と入れ替えをしたらしい。
同じように重鎮に歯軋りしていた若い世代に交代したお陰で国内をどう循環させていくのかも議題に上がり、専門家の意見も交えて話し合いが行われていると言う。
重鎮達にしてみれば「至らぬ知識を得て帰ってきた」と言っているらしいが、こちらからすれば「馬鹿め、当たり前の知識だ」としか言えず、絡んでくる重鎮にはカナエが「私のような女子供でも分かる内容なのに、あなた方は何も知らないんですね?」と苦笑され顔を真っ赤にしながら去っていた。
若い世代が知っている内容だと言えば重鎮たちは恥ずかしくて何も言えないだろう。
新しい風がどこまで国に掛かっていた靄を晴らすかは不透明だが、明らかに両国は変わりつつあった。
国にとっても、民にとってもいい方向に。
だが、それをよしとしない重鎮だった者たちは多く、「国が変わると言う事は恐ろしい事ですぞ!」とまで言い、「では、何故変わろうとしないのか教えて貰いたい、恐ろしいだけでは分からない」と答えると返答に詰まる。
そんなやり取りが数か月続いたある日――。
「異端者による知識等、この国には必要ありますまい!」
と言う声が追い出された元重鎮達から上がった。
だが皆白けた顔をし、溜息を吐かれ、俺の事情を知る者達から「あなた方はどれだけこの国がアツシ殿に支援されているのかも御存じでないと見える」と言い返し更に追い詰められた。
俺に一泡吹かせようとする元重鎮たちは多くいたが、これと言った物が見当たらない。
偽装しようと奮闘しても、俺がしたという確固たる証拠がないものばかり。
歯軋りをしながら国の足を引っ張ろうとする者たちに対し、二つの国のトップであるシュウとラスカール王は元重鎮たちを牢に入れた。
――国を陥れようとする反逆者とされたのだ。
これには驚き慌てた重鎮たちだが、彼らの家からは利権絡みの権利書や多くの出所不明の金品が見つかり、彼等の言い分はドンドン曝け出され、逃げようとすれば自分の首を絞め、身動きが取れない状態へとなっていく。
真っ新な政治家等はいないのは確かだが、これだけよく貯め込んだなと言いたくなるような状態で、二人の王は呆れかえっていたらしい。
その後両国の司法の判断により、元重鎮たちはその役目を除籍とされ国に今後関わる事は不可能となった。
一度反逆者とされれば一族は路頭に迷う。
彼らはソレだけの事を今までしてきた自覚があるが故に受け入れるしか他無く、一族が静かに衰退していきながら消えていくのは仕方ない事でもあった。
それからナノの事だが、ダングル王国で午前中に受ける授業の先生は分かりやすく良い先生だったようでスムーズに授業は進み、午後からはナディア様から教えられる事に新鮮で面白い事も多く、淑女としての教育も楽しんで我が家でやっている。
ナディア様から「ONとOFFの使い方は大事ですよ?」と言われ、子供らしく遊ぶこともあり、ナディア様は小さい我が子の様に母性を感じる瞳でナノの成長を見守られていた。
そして度々我が家で開かれる「国の報告会」は、ラスカール王とシュウによる報告会で俺も参加することになっており、詳しい専門家の意見は随分と役に立っているらしく、国が国民への還元までもう少しと言う所まで着ているらしい。
また、ラスカール王は財政を立て直す為にまずは鉱山の視察に向かい専門家の意見を聞き、鉱山夫達への治療の配慮や給料を上げるなどの対策をしつつ、冒険者を基準とした政策も進めているらしい。
そうすることで国は潤いつつある様で、路上に捨てられるお年寄りも減り、それでも身寄りがなく生活が立ち行かない老人の為に、俺がかつて話した【老人の終の棲家】を国が建て、そこで最後を過ごして貰うと言う事を始めたそうだ。
また、子供たちが文字の読み書きや計算が出来るようにと学校も建て、勉強が好きな子供には次の担い手となって貰う為に専門家の下に付かせて勉強させ、次の世代を作る事を始めたようだ。
子供は好きな事をドンドン吸収し、子供目線だからこそ気付く点をあげて専門家を困らせ、共に学ぶことで更に専門的な知識が増えていく。
良い循環が出来上がって行った。
それはダングル王国でも同じようで、専門家の意見は更に専門的になって行き、「新たに考える事やひらめきと言うのは素晴らしい事ですね」とお互いが高め合う関係が作られつつあるのだとか。
いい方向に進み始めた二つの国に、今後色々な試練があっても何とかなりそうだと思っていた時――嫌な手紙が届いた。
それはノスタルミア王国の女王陛下からの手紙で、俺の活動がジュノリス大国の目に留まったらしい。
法律国家と言いつつ古臭い考えを持つジュノリス大国では、【異端なる知識を持つ者】と呼ばれているようでいい気はしない。
確かにこの世界の知識ではないが、ジュノリス大国から【異端者】と呼ばれるのは気に入らないと陛下に返すと、陛下は『実力主義と言いつつ、一番変化が怖いのはジュノリス大国である』と返事が返ってきた。
頭の痛い問題である。
どうやら元重鎮たちが持っていた【出所不明金】の多くは【ジュノリス大国の何処か】から出ていたことも分かり、シュウたちは「何故ここまでして変化を恐れるのでしょう」と首を捻っていた。
するとラスカール王は「困った時は神頼みすれば大抵の事は解決すると俺は元重鎮に言われたことがある」と言われ、ジュノリス大国にお願いすれば大抵の事は解決する。とでも良いたげな内容だった。
それだけ大国は凄いのだと言うアピールにしても度が過ぎている。
国同士が平和になれば争いごとも減り平和になると言うのに、その平和が迷惑なモノであると言ってきているようなものだった。
そんなある日女王陛下から呼び出しを受けた俺とカナエは一緒にノスタルミア王国の謁見の間に呼ばれたのだが――。
「アツシ、貴方の持っている知識を二つの国の王に教えたことは素晴らしい事でした。国同士が平和になり、循環していくと言うのは我々では考え付かなかった事。しかし、それを異端とするのがジュノリス大国なのです」
「何故異端なのでしょうか?」
「自分たちの存在が危ういと思ったからでしょう。法律を犯してはいませんが、彼らにとっては面白くない話なのです」
「ですが、テリサバース宗教はこの四つの国を治める為に作られた宗教で、戦争をしてはいけないと言う同盟であると聞いています。その為の事をして何がいけないのでしょうか」
「それは表向きですよ。かの国は争いがあってこそ成り立つのがジュノリス大国だと信じて疑っていない」
「!?」
「その争いを根元から断ち切った貴方は私達三国からすれば素晴らしい事を成し遂げた。正に救世主と言えるでしょう。ですがジュノリス大国、いいえ、テリサバース宗教からすれば異端者だと見られているのです」
「随分と矛盾していますね」
そう投げやりに口にすると、女王陛下は暫し黙り込んだ後、口を開いた。
「私達三国からしてみれば、何故戦争や争いを回避しているのに睨まれねばならないのか。と言う疑問が湧くのは必然。アツシを異端者と呼ぶのも、我々からすれば不自然です。よって、三国でアツシを【異端なる知識を持つ者】と言う不名誉な名を付けられたことに対し、異議申し立てを行います」
「なっ!」
「貴方のした事は素晴らしく平和に最も近しい事。三国が平和に仲よく今後も暮らしていく為の架け橋と礎を築いた事はとても大きい。故に、我ら三国は【異端なる知識を持つ者】と悪意を持って口にするジュノリス大国及びテリサバース教会を許せません」
「それでは、三国が危うくなりませんか? 法の下でなんたらと言われかねませんよ?」
「何故です? テリサバース宗教はこの四つの国を治める為に作られた宗教で、戦争をしてはいけないと言う同盟を作る為の宗教。その教義を最も遂行しているのはアツシ、貴方ですよ」
確かにそうなのだが――。
法律国家の考える事は俺にはよく分からない。
頭を抱えて溜息を吐くと、女王陛下はクスクスと笑い次のような事を口にした。
「最たる異端者は、ジュノリス大国と背後にいるテリサバース教会のようですね」
「女王陛下、それは余りにもあの国を敵視し過ぎでは?」
「三国の王は皆同じ気持ちですよ。その為に三国で異議申し立てを行うと決まったのですから」
「………」
「流石に三国から言われるとはジュノリス大国もテリサバース教会も思わないでしょうが、その後どうなるのかは分かりません。テリサバース宗教の元、間違ったことは何一つしていない。それ故に私たちは【明らかに奇妙しい】と意義を申し立てるのです」
「それはそうですが」
「今後のジュノリス大国の動きがどうなるのか気がかりではありますが、我ら三国はアツシ、貴方に縁があり、恩があり、それは国民を幸せにすると言う私達の役目をもっと強めるものとなりました。アツシを異端審問にかけると言うのであれば三国が黙っていませんよ」
「……ありがとう御座います」
こうして、思わぬ方向からの攻撃に対し、三国は非常に腹を立てていることは理解出来たし、女王陛下もまた笑顔で「貴方の事は三国が守ります」とハッキリ宣言した。
そして程なくして三国による俺に対するジュノリス大国への異議申し立てが行われたのは言う迄もなく――。
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