82 独裁政権の終わりと、新しい太陽と復興と。
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こうして皆が二階上がってからカナエと一緒に風呂に入り、少し疲れた緊張を解しつつ今後の事が憂鬱だが今はどうしようもない。
風呂から上がり明日に備えて寝る事になったのだが、次の朝――。
ノスタルミア王国とラスカール王国の連名で、ダングル王国への横暴な独裁政権に立ち向かう宣言をし、また三つの国を纏める法でもあるジュノリス大国に、【我々はストレリチア村とストレリチア商会を支持し、その全てを統括するナカゾノ アツシを擁護する】と表明した。
ダングル王国は「逃げ出した国民がいるのならダングル王国の物」と言う主張をしたが、ジュノリス大国及び二国がそれを非難。そして否定した。
またジュノリス大国からは「国民が逃げ出す程の王政を認める訳にはいかない」と言う判断が下され、ダングル王国のバルガス王は酷く反発したらしい。
だが聞き入れてもらえることは無かった。
膠着状態が数か月続き、ダングル王国から逃げ出す国民は後を絶たず、国として成り立つことが最早不可能になって来たようだとノスタルミア女王は語り、またラスカール王も認め、ジュノリス大国はバルガス王がどう責任を取るのかという問いかけをしているようだ。
バルガス王は「しかし王族が居ない!! 俺しかいない!!」と宣言したことにより――ついにシュウとナノの事が発表された。
これにはバルガス王は驚きを隠せなかったが、いくら探しても見つかる訳がない。俺が拠点で匿っていたのだから。
「ストレリチアのアツシが、元オスカール王国で明日処分される筈だった王子と姫を知らなかったとは言え助け守っている。手出しは誰にも出来ない」
と言うノスタルミア女王の言葉にバルガス王は相当ぶち切れ、「子供に何が出来る!」となったが、「ストレリチアのアツシが後ろ盾になり、その後ろには我々が付いている」と宣言した。
それを機にダングル王国では内戦が勃発、バルガス王は更に追い詰められ―――
【バルガス王は前国王夫妻を殺し独裁政権をしている事。本来なるべき王族が守られて生存していた事。これらを踏まえバルガス王は国王としては不適切と判断。よって斬首刑とする】
法であるジュノリス大国が判断を下した。
これにより、内戦状態のダングル王国にジュノリス大国、ラスカール王国、ノスタルミア王国の三国より兵士が送られ、ジリジリと追いやられたバルガス王はついに捕えられ、斬首刑とされた。
。
それだけ三国が許さなかった事と、法律国家であるジュノリス大国の力がとても強かった事によるものだと判断される。
バルガス王と手を組んでいた者達は次々捕縛され、それぞれが斬首刑に処され、不穏要素が無くなってから、シュウとナノはノスタルミア王国から多くの護衛が守る豪華な馬車に乗せられ、ダングル王国に帰る事になったのだが――。
「うん、まさか俺達も行く事になろうとは! そんな気はしていたが!」
「俺たちの後ろ盾ですからね」
「きてもらわないと」
「でも良かったのか? ニノを俺に渡して」
「うん、ニノちゃん飴欲しいから行かないって」
「ははは!」
「でも時々つれてきてほしい。なでなでしてあげたい」
「分かった、ニノのご機嫌を取りつつ連れてこれたら連れてくるよ」
そう、あれからニノは俺と契約を結び直した。
俺はテイマーなんて持ってなかったのだが、ニノが俺の出す飴をトコトン気に入ってしまい、ナノがいなくなるならアツシと契約を結ぶと言ってきかなかったのだ。
そこで血を使った契約を行い、ニノは俺の従魔となった。
今もせっせと詰め替え作業に勤しむニノに、暫く忙しくて帰れないかもしれないからとチュッパの塔10個と飴玉を段ボール2箱で渡すと「イッテラッシャーイ」と言ってくれた。
シュウとナノが抜けた穴はニノが頑張って仕事をしてくれるらしい。
そしてカナエも一緒についてきているが、二人揃ってシュウとナノを助けた事もあり、俺達の旅は安全に進んでいる。
ストレリチア村に来ず小さな集落を作っていた獣人達が少しずつダングル王国に戻ってきているらしい。中には山の中に住んでいた者たちも結構いて、彼らもまたダングル王国に戻ってきているらしい。
「しかし、キャンピングカーならあっという間の距離だが……こう言う仰々しいのはむず痒いな」
「ダングル王国との国境に面したら別の馬車となります。あちらは雪国なので馬も客車も違う物になります」
「そうなのか」
「馬に近い魔物を飼育していて、それが客車を引いて行きます。」
「客車も今乗っている車輪のある物ではなく、雪道を滑って進む物になります。」
「雪国ならではって事だな」
「ボロボロになった国を見るのは辛いけれど、シッカリと目に焼き付けねば」
そう語るシュウの横顔は既に王としての自覚を感じる。ついにシュウもナノも本来の姿に戻るのだと改めて実感した。
初めて会った時は死にかけていた二人だが……きっとこうなる運命だったのだろう。
それから数日かけてようやくダングル王国とノスタルミア王国の国境に到着し、此処からは馬車を乗り換えてダングル王国の城へと向かう事になる。
既に一面雪景色なんだが……。
「確かにこれじゃ作物よりは畜産に力を入れるな」
「ええ、獣人族は肉が命ですからね」
「畜産関係は詳しくはないが、畜産用の建物を作る事なら出来る筈だ。既にストレリチア村で鳥の魔物用に鶏舎を作ってるしな」
「ハウス栽培ですが、自分達用の麦や畜産用にトウモロコシなどを作っているんです。後は刈終えた野菜の端切れ等も餌に使います。野生の魔物も多い為狩りをした魔物の肉も食べたりしますね」
「ノスタルミア王国では魚が主だが、ラスカール王国では普通に魔物の肉は売られていたしな」
「父上は畜産に特に力を入れていて、それが成し終えた所で殺されました。美味しい所をバルガスは持って行ったんですが……果たして機能しているのかどうかは不明です」
「美味しい所を持って行っても、使い方が分からければ使い物にならないからな」
「ええ」
「畜産にはどういう魔物が居たの?」
「鳥系に牛系、ブタ系でしょうか。全て魔物なのですが肉質が美味しい物を選んで繁殖させ、大きくなったらオスは肉にしてメスは子を産ませていました」
「そこは俺達の世界と変わらないんだな」
「そうね」
「種雄は数匹残すくらいで。後は種雄が弱ってきたら世代交代って感じですね」
「なるほど」
「他国に出せる程まで大きくした畜産でしたが……ノスタルミア王国でも見なかったので多分……全部自分のモノにしようとしたのでしょうね」
「本当に碌でもないな」
「後は塩が掘れる山が幾つかあって、そこが主な収入源でした」
そう語りながら魔物の引く馬車は進んでいき、三日もするとダングル王国の王都に到着した。
アチラコチラ壊れてはいたが、修復作業をする獣人達の顔は明るく、馬車が通るとシュウとナノの名を呼びながら万歳したり拍手をしたりと喜んでいる。
「良かったな、復興は無事進んでるみたいだ」
「ええ、ホッとしました。戻ったらやるべきことが沢山あります。どうかお力を貸してください」
「ああ、出来る限りの事はしよう。もし俺達で無理だと思ったら、二つの国の王に相談するといい」
「はい!」
こうして――、俺達はついにバルガスが奪い取った城へと到着し、降りて拍手と剣の道を通り城の中へと入って行った。
城の作りは頑丈な木材で作られており、石造りにしなかったのは冷えるからだそうだ。
確かにこれだけ雪深いと石造りは冷えるだろうなと理解した。
謁見の間に入り、荒れ果てたと思っていたが随分と綺麗になっているのは、城で働く者達が懸命に直した後らしい。
「今後、私はこの玉座に座るのですね……」
「重いか?」
「重たいです……。もっと父上や母上に色々な事を教わりたかった。ですが、父上と母上に負けないくらいの賢王となって見せます」
「なら、俺もそれを支えられるくらいにはならないとな?」
こうしてその後は【シュナイダー王】と名乗り、宰相もバルガスに仕えていた者ではなく、亡き王に仕えていた宰相が戻ってきて、今国は変化の時にある。
バルガス王に仕えないと言って出て行った、元国王の下で働いていた者たちが次々戻ってきている状態らしい。
シュウの横に立ち、彼らの挨拶を聞きながら危機感知を張り巡らせていたが、全体的に問題は無かった。
王の帰還で祝いの宴を本来なら催す所だが、今はその段ではないと判断し、シュウは国をまず安定させることからスタートした。
特に畜産がどうなっているのか気になるらしい。
そこで畜産関係の担当であるブースと言う男がやってくると、顔を青くしながら「実は」と語り始める。
その内容に俺達は大きく溜息を吐くことになるのだが――。
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