79 ラスカール王国の後ろ盾を得て、更に囮作戦へと移行する!
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こうして甘い物と甘い珈琲で糖分を取り、頭を働かせるといざ戦闘服のスーツに着替え、ラスカール王国の城へと向かう。
無論瞬間移動だが、時間的にはもう直ぐ6時。謁見の間前で待つ事数分、名を呼ばれ扉が開き中に入った。
すると上機嫌のラスカール王が玉座に居て「待っていたよ!」と声を上げた。
どうやら商業ギルドや農業ギルドから連絡が行っていた様で、まず農業ギルドからの報告から教えて貰えた。
現在農家や農業関係者による土の掘り返しと共に肥料を混ぜ込む作業をしており、今年は無理だが来年には畑に作物を植え付けられそうだという嬉しいニュース。
次に商業ギルドから頼まれていた銭湯を北と西の二か所に作ったことへの感謝。
更に治療院を出張でも作ったことや、産直と呼ばれるストレリチア村からの作物を売る広大な店を作ったこと。これにより民が飢える事は無さそうだと安心したそうだ。
次に孤児院への支援の感謝。
国も何とかしたかったが、財政状況的に厳しく手を出せなかったらしい。
そこで俺が動いて支援をした事で孤児たちが助かり、財政が整うまでは引き続き支援をお願いしたいと頼まれた為、それまででしたらと言う事で引き受けた。
「君は痒い所に手が届くように動いてくれるね! とても安心するよ! だがどうしても見返りが、」
「話の最中失礼します。実はもう一つ気になっていることがあるので許可を頂きに参りました」
「というと?」
「現在路上に捨てられているお年寄りの事です」
「ああ……国でも色々と重鎮たちが話し合っているが、今は手が出せない状態なんだ。何せ財政状況が悪くてね……心苦しいが」
「では、初めは我がストレリチアからの支援と言う事で、此方で動いても宜しいでしょうか? 国が立ち直り次第その運営は国にお任せします。」
「!? 良いのかい!?」
「ええ、老人たちの終の棲家。『老人ホーム』を大きく建てようかと思います」
「老人ほーむ?」
「そこに、人を雇うのは難しそうなので、獣人奴隷を雇い入れようかと」
「獣人奴隷を!?」
「お年寄りたちは死を待つだけではなく、世話をして貰い安らかに旅立って欲しいと思います。ですが、人間では仕事がキツイと雇おうにも雇えない未来しか見えません。そこで、ラスカール王国の奴隷市場を回り、重犯罪歴がなく、生活魔法や料理スキルなど老人ホームの運営に必要になるスキルを持つ者たちを一気に雇います。また、人数が足りない場合ノスタルミア王国の奴隷市場からも探して連れてきます」
「……獣人奴隷を使うのかい? ダングル王国は良い顔はしないだろうね」
「ソコが狙いです」
「と言うと?」
「何れ陛下には、ある二人の後ろ盾になって頂きたいのです。その為に俺も陛下の信頼と信用を得る為に此れだけ動いています」
「既にストレリチア村からの支援等で君たちストレリチアの後ろ盾になる気はあったのだが」
「それはそれで頂きますが、俺は命を狙われる気で動いています」
「!?」
思いも寄らなかったのだろう。ラスカール王は玉座に座り直し「話を聞こう」と声色を変えた。
「現在のダングル王国は、元国王夫妻を殺し、その子達すら行方不明と聞きます。村に逃げて来た獣人が言うには、バルガス国王の独裁政権の元で国民は飢えに苦しみ、国から逃げて来たと言う事です。実際、ストレリチア村は多くの獣人が逃げて来て今の村になりました。」
「それは聞き及んでいる。それで?」
「王子と王女が生きて見つかれば内戦に持ち込めると言う話もあるのです。既にダングル王国内部では内戦の用意が整いつつあると言う情報も」
「それと、アツシ殿が命を狙われるのに何故関係が?」
「……王子と王女を俺が匿って居るからです」
「い……生きていたのか!?」
思いも寄らなかったのだろう。
陛下は立ち上がり目を見開いて俺を見た。
「はい。俺も最近になって知りましたが、俺の持つ拠点の一つにて安全に保護しております」
「ああ……何という事だ! 生きておられたとは!!」
「お二人は俺に後ろ盾になって欲しいと言われました。ですが、俺一人ではとてもダングル王国とは渡り合えません。今もこのラスカール王国内には、ダングル王国の危険な人物たちがうろつき、王子と王女を探していると言う情報です。そこで逃げた獣人達を俺が束ねてストレリチア村を作り、豊かに暮らしているとなれば――」
「君を狙うには十分か」
「はい。その為にラスカール王国とノスタルミア王国の後ろ盾が必要なのです」
そう語ると陛下は暫く考え込んだ後、意を決した瞳で「良いだろう」と答えた。
「君は王子と王女に悪意の目が向く前に自分にその目を向かせると言うのだね」
「その通りです」
「そして、王子と王女は安全な場所で匿い、自分が囮となる事を選んだ」
「はい」
「そして、私の信頼を勝ち得る為に此れだけの支援をしてくれた」
「はい」
「分かった……我がラスカール王国はストレリチアのアツシの、そしてストレリチア村の後ろ盾となろう! そして君が言う二人の後ろ盾にもなろう」
「宜しいのですか?」
「これだけして貰えたのだ。君にどう返せばいいのか…。この先何十年何百年と死んだ土地で生きていくのだと思っていたのに、その土地を蘇らせる方法を教え、民が飢えないように大きな市場すら作ってくれた。もう十分だよアツシ殿。老人たちの事は国を挙げて何とかする。君はもう既に狙われるだけの事はしてしまっている」
「「……」」
「ピシエールが君たちに付かなくなったのは、獣人と思われる連中に襲われたからなんだ」
「「え!?」」
初めて聞く話に俺とカナエが声を上げると、事の次第を教えてくれた。
少々手荒な真似はされたが、彼らは俺の事を色々聞きたがっていたようだ。
そこで「ストレリチアのアツシと言う者で、逃げて来た獣人達をまとめ上げストレリチア村を作り逃げた獣人達は幸せに暮らしている」と聞いた彼らは怒り狂い、「奴を捕えて二人の居場所を吐かせよう」と言っていたらしい。
つまり、もういつ何処で狙われても可笑しくはないのだ。
だが、俺は直ぐに瞬間移動していなくなる。
足取りを掴めない事で苛立っているらしい。
「そこで君が襲われた場合、君に恩ある我々ラスカール王国とノスタルミア王国は獣人を手配したダングル王国を非難する声明を出す。そしてその声明を中央のジュノリス大国にも通達する。そうなればダングル王国は三つの国から睨まれ、一つでも動けば元オスカール王国の王族の様に斬首刑となる。それをバルガス国王は避けようとするだろう。だが王子と王女が生きている以上、秘密裏にでも君から情報を聞き出そうとするはずだ」
「そうですね」
「だが、声明を発表した時点で三国はダングル王国からの難民は受け入れても殆どの獣人は入国出来なくなる。入国拒否されればダングル王国は身動きが取れない。その際、三国でダングル王国から逃げて来た王子と王女を保護していると言う話を出せばどうなる? そこで内戦が勃発する」
「なるほど、そこに繋がりますか」
「想定ではそうなるね。内戦が勃発すれば確かに獣人の国は大変な事になるだろう。内戦を早期鎮圧出来なければバルガス国王は大陸の法律の下、裁かれる事となる。三国から兵が押し寄せ、反政府軍を支援しながらバルガス国王を追い詰め、捕えて斬首刑とする。その際新たな王として、その王子と王女が正統なる王として三国から認められるだろう。その際の後ろ盾としてストレリチアのアツシが、そしてラスカール王国とノスタルミア王国が王子と王女の後ろ盾になる」
そう言う筋書きになるのか……と言う事は、一度は襲われないといけないと言う事だ。
剣術10がどれほどの物なのかは分からないが、多少の傷なら我慢は出来る。
危険察知が働いてくれればいいが。
「少なくともラスカール王国にはまだ奴らがいる。最早焦っている状態だろう。隙を見せながら囮となるかい?」
「なります」
「そうか……君には沢山支援して貰った。命だけは無駄にはしないようにしてくれ」
「心得ております」
「奴らはよく奴隷市場のある方にいるそうだ。治安はとても悪い、見回りの兵士は常にいるが強化しておこう。その上で奴隷市場に行くかい?」
「ええ、此方で働いて貰う獣人も欲しかったので構いません」
「そうか、ならば存分に囮になると良い。後の事は私とノスタルミア王国とで話をして纏めておこう」
「ありがとう御座います」
「うむ! しかし国二つの後ろ盾を持たせるなんて……君もかなり豪胆だね」
「恐れ入ります」
「だが気に入った! アツシ殿は面白い男だ。私も歴史的な場面を味わった一人だが、もう一人同じ仲間がいても良いと思っているからね」
「ありがとう御座います! では早速奴隷市場に行こうと思います」
「どうか気を付けて。奴隷市場には兵士詰め所が一か所ある。何かあればそちらに」
「はい」
こうして俺とカナエは次なる目標に向かって歩き出す。
まずは奴隷市場にある兵士詰め所の場所を確認した上で――囮作戦だ。
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