66 王族に薬を使った罪で捕まった王太子と、ギリギリになって反省した二人を連れて一応は帰るが……。
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――待つ事数分後、汚い姿では陛下に会わせられないと水野と井上は風呂に入れられた後で着替えを済ませたのか、オスカール王国で見た王太子と兵士たちと一緒に入ってきた。
そして俺を見るなり涙を零しながら駆け寄ってきた水野に、カナエが立ち上がり立ち塞がる。
「ちょっと姫島どいて! 折角先生に会えたのに!」
「悪いけど、私と先生婚約しているの。婚約している相手に抱き着こうなんて止めて頂戴」
「は? 先生マジで?」
「ああ、俺とカナエは婚約してる」
「嘘でしょ!? こんなのの何処が良いの!?」
「君よりは数百倍も上と思うが?」
そう蔑んだ目で見ると呆然とした水野が立っていて、王太子に腕を掴まれるとその場に座らされていた。
カナエも直ぐに俺の隣で陛下に頭を下げてから敬意ある座り方で対応したが、陛下は「よいよい。夫となる者が毒牙にかかるとなればそうなるのは必然」とカナエの行動を褒めた。
「して、奴隷ではなく普通に帰してやることにしたが宜しかったか? オスカール王国の王太子よ」
「はっ! この度の二人の不始末に対し、寛大なお心ありがとう御座います」
「別に構わん。その二人がこの国に居ようがいまいが、大した差ではないし、そこのストレリチアの三人はこの国に必須な人材だが、そちらの二人は不要な人材。好きにして貰って構わんからな」
「その事ですが、我が国が召喚した三人です。お返し頂ければと」
「ほう? 雑魚スキルだと言って金を持たせて追い出した癖に、返せと申すか?」
「そ、そうです!」
「断る」
笑顔でお断りを入れた陛下に王太子は慌てた様子だったが、陛下の口は止まらなかった。
「この三人のうち、二人はそちらの国で要らぬと言って放逐した。故に我が国に来て商売を始め、今や王家御用達にまで昇りつめ、後ろ盾はこの私だ。そしてキクチと言う元勇者は、不名誉な死を其方が国民や周辺に流した。既に死んだ者を何故取り返そうとする」
「それは……」
「無論、キクチの後ろ盾もこの私だ。私が納得する言葉で返すが良い」
「……レアスキル持ちだと分かっていたならば、国にて保護するのが普通かと」
「だが、要らぬと放逐したのだろう? その事実は変わらぬ。そして私がオスカール王国で発した三人の言葉で慌てて取り戻したくなった……違うか?」
「う……」
「悪いが、この三人とストレリチアは渡さぬ。そこの不要な二人だけを連れて帰るが良い」
「不要な二人って何よ!!」
「水野!!」
「ねぇ先生、お願い助けて? オスカール王国の人たちは何故召喚した私達勇者を殺そうとするの? 何で魔物寄せなんて持たせるの? 私たちは何の為に召喚されたのよ!!」
「口を慎め水野!」
「だって事実じゃない!!」
そう王太子に噛みついた水野に、本当に勇者の死を求めているのがオスカール王国なのだと理解したが……助けても寄生するだけ寄生して働かないのは目に見えている。
それにカナエも菊池も許さないだろう。
すると――。
「ほう? 態々召喚したのに殺そうとしているのか。オスカール王国の面々は可笑しな頭をしていると思っていたが、本当に可笑しいのだな」
「ち、違います!!」
「嘘よ!!」
「まぁそう声を荒げるな。ふむ……二人共薬物中毒は消えているな。我が国に来てオスカール王国で出された薬が抜けたのだろう。それでまともな判断が出来るようになっても、何故アツシ達に心から謝罪もせず、寄生だけして自分達は楽をしようと考えているのか判断に困る。キクチでさえ心から謝罪して懸命に働いていると言うのに」
「「それは……」」
「元々アツシ達より自分たちが上と思って生活していた癖なのだろうな。なんとも馬鹿な頭をした勇者か。聞いて呆れるわ」
陛下の言葉に顔を真っ赤にした二人だが、これはきっと事実なのだろう。
学校でも先生達より自分たちが上と思って生活していた癖と言うのは、中々抜けない。
それ故に傲慢な態度が取れるのだと理解出来た。
「でも、教師なら困っている生徒を助けるべきよ!」
「あら、先生は言ったわ。貴方たちは先生から卒業したのだと。今更生徒面しないでくれる?」
「なっ!」
「都合のいい時だけ生徒。馬鹿じゃない? 本当に馬鹿だから分からないのね。呆れた」
「呆れたっす」
「そうだな、確かに君たちは俺の手から離れた旨は伝えている。今更教師だから助けろと言われても困るな」
「先生!!」
「頼むよ、オスカール王国で死んじまう」
「生徒が死んでもいいの!?」
「そもそも、俺の生徒ではもうないからな」
そう冷たく伝えると二人は震えながら俺を見ているようだが、俺は淡々と無視する。
本当に都合のいい事ばかりしか考えないのだと理解出来たからだ。
これでは助ける気も起きない。
溜息を吐いて陛下を見ると、陛下は眉を下げて「困った者達よのう」と口にし、俺は小さく頷いた。
「お前たち二人はオスカール王国にて自由に生きて自由に死ぬが良い。我がノスタルミア王国の知らぬところでな」
「ひ、酷いです……こんなに謝罪してもまだ足りないんですか!?」
「本当に謝罪してるならそんな言葉すら出ないんっすよ。ふざけんなっす」
「菊池は黙ってて!!」
「俺たちの人生が掛かってるんだぞ!?」
「タダ飯食らいはうちには要らないっすよ。あんた達よりも小さい子供も働いて頑張ってるっていうのに、何自分達だけ楽しようとしてるんっすか? 恥ずかしいとは思わないっすか?」
「「なっ!?」」
「こいつらにテリアの作る料理とか食べさせたくないっす」
「確かにねー」
「はぁ……本気で反省しているのならと思ったが、この場に来てもまだ反省をしようともしない凡夫だ。悪いが助けられないな」
「「先生!!」」
「と、言う訳だ。この三人の後ろ盾は私、そちらは手出し無用」
「くっ」
王太子も引くに引けないのだろう。
多分国王辺りから連れて帰れと言われているのがよく分かる。
だが、悪いが俺達は帰るつもりもない。
「では、せめてオスカール王国にこの三人の持つ店を、」
「悪いが、俺達はオスカール王国に恨みがあるんだ。店を出すつもりもなければ帰るつもりもない」
「それこそそちらの傲慢であろう!? 店を持つものなら依頼されたら、」
「聞こえなかったのか? 俺達はオスカール王国に恨みがある。そう言ったんだが?」
「くっ!!」
「何故恨みのある国に態々店を出さないといけないんだ? お断りする」
「それではせめて塩や胡椒と言った物をオスカール王国に、」
「断る」
「くそ!! なんなのだお前たちは!! 王族の私が言っているのだから言う事を聞け!」
「ほらね? これが本性っすよ」
「くだらない」
「出す気はない」
「~~~!!」
「既に我がノスタルミア王国の王家御用達だ。オスカール王国に出すのも、我が国を想えば、なぁ?」
「ええ」
「と、言う訳だ。そちらはサッサとその二人を連れて帰るが良い。二度とこちらには来て欲しくないものだな」
「――失礼する!! 帰るぞ水野に井上! お前たちにはまだまだして貰う事が」
「いやあああああああ!!!」
そう叫んだ水野は王太子の腕を振り払い這いずりながら俺の元へとやって来た。
「先生お願い!! あの国で死にたくないの!!」
「水野!! まるで我が国がお前たちを殺そうと」
「してるっすよね? なんすか? 魔物寄せの鈴持たせて魔物の討伐させて。王太子は俺達をどうしたかったんすか?」
「それは……っ」
「まぁ、剣術7の俺にしてみれば雑魚ではあったけど、納得いかねぇよなー」
「え! 剣術7しかないんすか?」
「は?」
「先生は剣術10っすよ?」
「は!?」
「ならば尚更我が国で、」
「でもハズレだから放逐したんですよね?」
「きっとあの石板が壊れていたに違いない! 頼む、君たちには是非、」
「お断りします」
「私もお断りだわ」
「俺も今の方が断然楽しいっすから嫌っすね」
「先生お願い……本当にお願い!! 私たちを助けて!!」
「水野……」
「また薬物でまともな判断なんて出来なくなって、オスカール王国の良い様に扱われて死ぬんだわ……。オスカール王国なんて滅べばいいのよ!!」
「水野なんて事を言うんだ!!」
「触らないで人殺し!!」
そう言って王太子の腕を振り払う水野に、王太子は信じられない者を見る目で水野を見つめていた。
それは井上も同じで、水野の横に来ると土下座して「助けてください!」と頭を下げる。
だが――。
「謝罪が遅かったな……。もう助けることは出来ない」
「「そんな!!」」
「今更心から謝罪してもっすねぇ……」
「遅すぎるのよねぇ……」
「嫌よ、死にたくないわ……オスカール王国に戻ったら殺されるわ」
「また薬物でラリッちまう……」
その様子を見た女王陛下は、王太子に問いかけた。
「そちらの国では、召喚した勇者だけではなく、他国の王族にも薬物を使っていたな。何がしたいのだ?」
「!」
「ああ、この事は既にジュノリス大国とダングル王国には通達しておる。大変激怒しておった。王族が変わるのも時間の問題だろうな」
「なんてことをした、」
「それは此方の台詞であろう? 何故そのような真似をしたのだ?」
凛とした言葉に王太子の周りを兵士が囲い込む。
それもそうだろう。
他国の王族に対して薬物を使うなど、あってはならないことだ。
「王族に対しての無礼千万。しかと話を聞こうかのう? その間、悪いがその勇者二人をアツシにお願いしてよいかな? 無論遊ばせてならんぞ? シッカリ悔い改める為に働かせよ」
「……分かりました」
「え――? 連れて帰るのー?」
「いやっすねぇ」
「頼む菊池も姫島も……俺達が悪かった」
「雑魚って言ってごめんなさい……私達の方が本当に馬鹿だったのね」
「クソくらいの屑くらいの馬鹿だと思うわ。言っておくけど、私は何時でも貴方たちを路上に投げ捨てていいと思ってるから。あと水野、先生に近寄らないで」
「――っ! 分かったわ」
「先生も、この二人が他のエリアには行かないようにだけして。拠点だけにして頂戴」
「う、うむ、分かった」
「働くんっすかねー本当に。ま、陛下に頼まれたら断れないし、家に帰ったら鑑定してくださいっすよ?」
「そうするか……。水野、俺に色目を使ったら即追い出すからな」
「はい……」
「井上は子供たちに上から目線で馬鹿にしたら追い出すぞ」
「はい……」
「取り敢えず帰るか……」
「そうっすね」
「では王太子たちはごゆっくり」
「待てお前たち!!」
こうして陛下の御前を後にし、水野と井上を連れて一旦は戻る事になったのだが、陛下より「話し合いが終われば後はお前たちに任せる」と言われた為、二人をオスカール王国に戻すも助けるも好きにせよと言う事らしい。
二人は意気消沈してついてきたが、拠点に着くと目を見開き、渋々俺達は二人を中に入れた。
すると――。
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