65 反省していない二人に呆れかえる菊池(菊池side)
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――菊池side――
その後夕飯を食べて子供達もお風呂に入った後、二階と言っていたが全員二階に行った為、一階のソファーで話をすることになったのだが、あの二人は相変わらずな様子だったのだった。
今日態々会いに行ったのは、本当に反省してやって来たのかどうかを確認する為だった。
本当に反省していれば先生とカナエに話をし、解放してやればどうだと言うつもりだった。
俺だって何も聞かずに「助けてやるっすよ」とは言えない。
俺だって守るべき家があって、皆がいて、仕事があって、守りたい笑顔の為に日々働いている。
まだ18歳のガキだし、守れる範囲なんて先生程大きくなんてないけど、それでも本当に反省しているのなら考えなくは無かった。
けれど実際会ってみると――。
「菊池!?」
「テメー菊池!! さっさと一人で逃げやがって!! お前がこの国にいるって言うから来てやったのになんで奴隷墜ちさせられんだよ!! 責任取れよ!!」
「言っておくっすけど、俺は冒険者ギルドにも宿屋にも商業ギルドにも足を運んで、街で聞き込みもある程度して先生たちの足取りを追ったっす。あんた達はどうやってきたんっすか?」
「この前ノスタルミア王国の女王が来たんだよ。その時この国に菊池も先生たちもいるって聞いて……それなら、ノスタルミア王国まで向かう馬車にコッソリ乗り込んでオスカール王国を脱出しようって思った訳」
「だって先生お金持ちなんでしょ!? そしたらもう戦わなくても済むし~? 働かなくても済むし~? 自由に贅沢三昧できるでしょ!? 菊池だって贅沢三昧してるんでしょ? 生意気―」
「は? 言っとくっすけど、俺メッチャ働いてるっすからね? 遊んで暮らせるなんて、ある訳ないじゃないっすか。楽な生活なんて出来ると思って来たんすか?」
「そうよ?」
「そうだけど? 一日中酒飲んで寝て、先生は汗水たらして働いて貰って俺達を養う訳よ」
「呆れたっす……」
「なんで呆れるのよ。てか貴方、働いてお金持ってるなら私たちを自由にして!」
「悪いっすけど、あんた達みたいな使えない奴隷要らないっすわ」
「「は?」」
本当に呆れてモノが言えない。
自分たちは先生に寄生して後は贅沢三昧して寝て暮らそうなんて、考えが幼稚すぎて笑ってしまう。
しかも奴隷墜ちしたのに全然反省すらしてない。
「俺は心の底から反省して、運よく助けて貰ってこの国に入ったっす。先生に心から謝罪して、自分がどれだけ酷い事を口にして、どれだけ残酷な事をしたのか分かって先生に謝罪したっすよ。でもアンタらはそれすらない。助ける義理すらもないっすよ」
「「!?」」
「そもそも、俺が不名誉な死を迎えたってオスカール王国で流れた時、アンタ達何してたっすか? 少しでも俺のこと探してくれたっすか? 酒飲んで女と遊んでたんすか? 王太子に騙されているのにニヤニヤしてたんすか? 最低っすね」
「それは……」
「……」
「そんな薄情者を誰が助けるっていうんすか? 自分の都合のいい事ばかり口にして、誰が助けるっていうんすか? ああ、でも焦らなくてもオスカール王国から助けが来るみたいっすから、そのままオスカール王国で奴隷として人生終わればいいっすよ」
「「な!?」」
「オスカール王国に戻ったらまた前みたいになるじゃない!」
「なぁ、悪かったから機嫌直せって。俺達を出せよ菊池―」
「嫌っす。来た意味もなかったすね。俺帰るっす。もう二度と会う事もないっすから」
「「菊池!!」」
「どうぞこれからもオスカール王国で幸せに?」
そう言って反省すら全くしていない二人を無視して帰宅した。
助けても先生や子供達を奴隷みたいに扱うのが目に見えていた。
そんな奴ら助ける義理もない。
今更「反省したからー」と言っても無駄だ。
心からの謝罪をした俺には解る。
口先だけの言葉だと。
本当に謝罪する気があるのなら、奴隷になんて落ちなかったはずなのに。
「ってな訳で、全然全く反省なんてしてなかったっす。寧ろ俺達全員奴隷の様に働かせて自分たちは豪遊しようとまで考えてたっすね」
「本当、屑っているのね」
「そう言う事だったのか。反省すらしていないと」
「してないっす」
「は――……。反省していたのならと思ったが、それすらないとは」
「だから言ったでしょ? この家には入れさせないって」
「確かにカナエの言う通りだな」
「アイツら入れたら、皆が悲しむっす。だから俺も助けなかったっす。それにもう直ぐオスカール王国から使者が来て連れ帰る筈だし、放置してていいっすよ。ただ、うちの店には来る可能性はあるっす。レアスキル持ちなら国に連れて帰ろうとは思うだろうから」
「その対策は必要ね」
「まぁ、女王陛下がいるところでの話になる可能性も高い。流石に相手も無理難題は言わないとは思うが、言ってきたとしても俺達はオスカール王国には恨みしかない。手伝う気も、手助けする気も更々無いしな」
「そうね」
「そうっす」
「オスカール王国の使者が来る前に女王陛下に話を付けてくるよ。後ろ盾はデカい方がいいからな。何かの有事の際助けて貰おう」
「はい」
「はいっす」
こうして、俺達も魔道具のある部屋に行くと、先生は、そろそろ陛下もお休みだろうから夜の挨拶を入れてオスカール王国の使者がストレリチアや俺達に難題を言ってくる場合の対処についての相談を書いた手紙を送った。
すると、陛下はまだ寝ていなかったようで直ぐに返事が届き、ストレリチアと俺達三人の後ろ盾に陛下がついて下さることになった。
というのも、塩や胡椒と言った香辛料の納品がなくなるのは困るからと言う理由だったが、女王陛下らしいと言うべきか、美味しいものを知ってしまった故と言うべきか。
無理難題を何とかクリアさせた俺たちの頑張りが功を奏したと言うべきか。
少なくとも『オスカール王国の使者がストレリチアの元へ単独で向かうのは避けさせる』と言う返事を聞いて、俺達はホッと安堵した。
それから数日後――。
オスカール王国の使者がノスタルミア王国へ入ったとの連絡があり、三日後俺達三人は王城に来るようにとの連絡があったので、全員戦闘服と言う名のスーツで向かう事になったのだが、そこで一波乱あるのは間違いなく――。
「取り敢えず先生は私と婚約したと言う事にしておいてください! 水野対策です!」
「お、おう! そうだな、二人も嫁はいらないからな」
「そうですよ! 浮気駄目、絶対!」
「浮気なんてしない。俺は大事な女性は一人で充分なんだ。よくある異世界小説みたいにハーレムになんて興味はないし、もしあったら子供達じゃなくて可愛い女の子を選んでるだろう?」
「そうですけどー」
「はいはい、甘いのは良い事っすけど、これから波乱が待ってると思うっすから、気合入れて行きましょ」
「そうだな」
「本当、アイツらって足引っ張るのだけは得意よね。菊池の目が覚めてくれただけでも大分違うけど」
「俺はあいつ等と違って本当に反省したっすからね。それにオスカール王国は勇者を殺しにかかってくるっす。なんでなんっすかね?」
「そうなのか?」
「遠征時に王太子から魔物寄せの鈴を水野が持たされてて、壊さなかったら本当に危なかったっす。勇者を召喚したのに何で殺そうとするんすかね?」
「「……」」
理由は分からないが、何か裏はありそうだなとは思ってたけど、アレは驚いた。
まるで勇者を召喚して、勇者が死んだから責任を全部押し付けようとしてるような、そんな感じがしたのは確かだ。
勇者が死んで和平に持って行くつもりなのかは分からないが、何て面倒な。
「取り敢えず、様子を見るか。でも助けはしないぞ」
「当たり前よ。あいつ等反省って言葉が頭にないんじゃないの?」
「多分無いっす」
こうして俺たちは戦闘服用のスーツに着替え、気合十分で王城へと向かった。
そして謁見の間にて待つ事数分後――。
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