57 ストレリチア村の建設ラッシュと一ヶ月半の地獄の忙しさを乗り切り……。
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「貴殿は頭もいい、頭の回転もいい、土壇場の勝負強さもある。実にうちの娘の婿にならんのは惜しい男だ」
「それはどうも。ではストレリチア村に行きますよ」
「うむ、行こう」
こうして俺達は扉を開け、何時ものストレリチア村へと入って行った。
それから一ヶ月弱、怒涛の建築ラッシュになったのは言う迄もなく――。
俺の村のスキルボードを見たドーナ様は、まず村役場を更に大きく宿屋大並みにさせた。
作りは村に合うお洒落な木造建築の二階建てで、二階では商談スペースや応接室が設けられた。また女王陛下が文官を派遣してくださるので、彼らが寝泊まりする集団住宅を用意し、そこは住民向けとは違う外観にし、中は2DKにしてお風呂もありトイレもあり、キッチンには冷蔵庫も完備だった。
一階の一部屋は壁をブチ抜き、お風呂はなくし、ソファをいくつかと大きなローテーブルを用意した。文官達の共用部分として飲み会など好きに使って欲しい。リクライニングのマッサージ機も数台用意しておいた。まさに至れり尽くせりの職員住宅になったのは言うまでもない。
そして諸々考えた結果らしいが、まず拠点を借りる家の場所を決め、ドーナ様は少し高台にある土地にシズリー辺境伯家の避暑地を建設させた。
見た目はドーナ様ご希望通りの物があり、それ一択だった。
内装も実に解放感があり、それでいて豪華で落ち着く屋敷だった。
言うなればタウンハウスに近いだろうか。
キッチンも広く冷蔵庫は大きく、食卓と広いリビングには木目調の美しい机と座り心地の良いソファー。
緑溢れる屋敷に大満足の様で、二階にはドーナ様の寝室とディア様の寝室、ゼバスさんの寝室にその他の使用人の寝室らしい。
二階にもトイレが二つあり、ドーナ様とディア様用と、使用人用とで別けるらしい。
まぁ、その辺りは貴族でないと分からない感覚だ。
「使用人は何処から手に入れるんですか?」
「シズリー辺境伯領から連れてくるに決まっているだろう」
「まぁそうですが。掃除係くらいは欲しいですしね」
「そうだな」
そんなのんびりした会話も束の間、それからは本当に建設ラッシュだった。
新しく女王陛下から送られてきた文官たちは呆然とし、取り敢えず仕事はして貰った。
食堂には5人の文官が朝昼晩ご飯を食べに行くが、日に日にやる気を出して仕事をするようになり、俺は更に文官からの情報も元に仕事をし、時にドーナ様に相談して決める事もあったが、その後直ぐに他の避難所にいた180人の獣人もやってきて、集合住宅を作り、更にカナエと俺とで必要な物を支援したりと、日々オーバーワークだった。
そこで俺とカナエが飲んだのは、薬局に売っているユン〇ル。
アッチの世界ではそう効果があったか分からないが、此方の世界では効果テキメンであった。
倒れそうになるとユン〇ル。
困った時のユン〇ル。
それで一ヶ月半駆け抜けた結果――。
中央にある大きな池は子供がウッカリ落ちないように柵がされ、釣り用の拠点が立てられ、そこで釣りをするストレリチア村の村人以外の者は釣代金貨50枚を払う。子供は一人金貨10枚だ。
そこでは釣り竿と釣り用のアイスボックスを借りることが可能。
氷は自由にアイスボックスに入れてOKで、氷を作る機械も置いた。
更に言えば、この釣り竿で釣れば餌が無くとも魚が釣れる為、餌代は掛からない。
釣った魚は持ち帰りもOKだが、捌いて食べる事も可能だし、焼いて食べる事も可能で、食堂や温泉宿に頼む場合は別料金を支払う必要がある。
村人の場合は無料だが。
一度池をもう一度詳しく鑑定したところ、毒のある魚と泥抜きをしなくてはならない魚はいないらしく、どれも美味いらしい。
それを聞いたドーナ様とリウスさんは、後に暇さえあれば釣りをしている姿を目撃されるように成るが、それはまた別の話で。
貴族街予定地に近い場所には、温泉が作られた。
それはもう堂々たる日本風の温泉で、笹の葉の音色の美しさと流れる水の音の心地よさは耳が幸せになる。
温泉宿に入る前に通る小さな川には小さな魚が泳いでおり、紅葉やカエデと言った木々が門まで続き、暖簾をくぐって自動で開くドアの中に入れば、靴を脱いで靴箱に入れ、温泉宿となっている。
詳細は省くが、男湯と女湯は一日交代で入れ替わり、温泉の湯は美肌の湯から各種治療に適した温泉になっており、湯治として使える事も分かり、その事をドーナ様に話すと一度に泊まる貴族は大金を払えば一週間連泊出来るそうだが、そうでない者は一泊二日のみと決まった。
そして、ストレリチア村産の野菜や果物だが、それは村でもミスアーナの店でも売る事が決定し、それ用の拠点も作ったのだが、モルダバルド侯爵達が連れてくる一泊二日の貴族によって買い占められ毎日完売していた。
無論、商業ギルドも来てギルド支部も建ったし、農業ギルドもやってきてギルド支部も建った。
そして商業ギルドの最たるお客様は、一泊二日では到底足りないと叫ぶ貴族が挙って土地と俺のスキルとの契約を希望し、建設ラッシュが始まった。新たに建設した拠点は各貴族の本宅と扉で繋げる事はせず、馬車で往復する貴族には途中のシズリー辺境伯領などでもお金を落として貰うつもりだ。その分毎月の賃料は安くした。モルダバルド侯爵とシズリー辺境伯は同じ中立派の貴族には扉を開放しているらしいが……。
その頃にはレベルが上がりすぎて、拠点は100個も作れる状態になっていたし、たったの一ヶ月半でこれなのだ。
さらに農地も広げられ、新しく来た180人の獣人うち、働ける100人は農作業と数名は大きくなった食堂にあてた。
畑で作る作物はさらに増え、砂糖の材料となるサトウキビ畑は壮観だった。
主な収入は砂糖と言っても過言ではないくらいには儲かった。
だがイチゴもリンゴも葡萄もサツマイモも負けてなかった。
農業をしている男性たちは皆、スクスク驚きの速さで育つ作物に、『レアスキルのお陰』と無邪気にスキルを持つ子供たちを大事にしてくれた。
働ける子供たちは朝は畑を手伝い、昼は学校を作ったので学校に通わせている。
そう、俺は先生数名を雇ったのだ。
学校と呼ぶにはあれだが、寺子屋みたいな感じで子供たちは仕事が終わってご飯を食べた後、眠そうにしながらも頑張って文字の読み書きを覚え、計算を覚える。
優秀な子には役所で働いて貰い、役所の人員不足も大分落ち着いた頃――陛下から手紙が届いた。
『そろそろ、ストレリチア村への支援は打ち切って良いのでは?』と――。
それは俺も感じていた為、必要な所には村から給料を出すが大体独り立ちできる状態にしたので支援の打ち切りを伝えると、彼らは残念がりながらも自分たちの足で生きていける土台を作った俺に感謝してくれた。食事についても食堂ではなく各家庭で料理を作り食べて貰って構わないことにした。勿論食堂でお金を払って食べて貰っても構わない。俺は詳しくないが獣人にも種族独自の食文化があるなら大切にして貰いたい。
やっと肩の荷が下りたのが、その話し合いが終わった夜。
俺とカナエはクタクタになりながら役所に到着し、ソファーに座ってお互いに甘い物と甘い珈琲を購入して食べた。
「やり切ったな……」
「怒涛の一ヶ月半でした……」
「温泉に入って泊って帰るか。あの温泉の効果は絶大だし」
「そうですね、村長権限で泊まらせて貰いましょう」
こうしてモソモソと甘い物を食べた俺達は温泉宿に向かい、俺たちの疲れた様子を見た獣人の女将は「是非泊まるように」と部屋を用意してくれて、温泉にユッタリ入り疲れを一気に飛ばし、少しだけ贅沢に長湯をしてから上がり、楽な服装で部屋に戻り、俺は久々にビールを飲んだ。
「あ――……ビールが身に染みる」
「先生おじさんくさいわよ?」
「カナエもお疲れ」
「流石にこの一ヶ月半は疲れたけど、これで軌道に乗ったのよね?」
「ああ、軌道には乗った。後は村人たちの頑張り次第だ」
「それなら、やっと楽器屋オープンね」
「そうだな、長い事待たせてしまった」
「明日二人で頑張って中身だけ作れば、明後日と明明後日は木曜金曜だし、お休みの日だからね。久々に子供達とゆっくりできるね!」
「ああ、そうだな」
「先生凄く眠そう。ベッドに行ったら?」
「今日は少し早めに寝るよ。流石に怒涛の一ヶ月半は疲れたな」
「私もお茶飲んで寝よっと、おやすみなさい」
「おやすみ」
こうして部屋は一つだがベッドはツインだった為、別々でグッスリ眠りについた翌日。
朝から美味しい旅館の料理に舌鼓し、支払いを済ませてカナエと共に拠点に帰ると、菊池がツツツっとやってきて俺の耳元で「ヤッタんすか?」と聞いてきた為、笑顔で耳を引っ張り「お前は何を言ってるんだ?」と怒ると「すみませんでしたー!!」と叫んでいた。
その様子を笑う子供達と久々に見る面々に、やっと拠点に帰ってきたなとホッと安堵したのは内緒にしておこうと思う。
その日も朝から菊池は頑張ってダグラスと一緒に納品をし、俺とカナエはついに――。
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