55 モルダバルド侯爵夫人と夫ロディを貴族の盾とし、シズリー辺境伯のドーナ様を相談役に出来た!
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「気合を入れて贈り物も選んだ。後は大丈夫だと信じたいが」
「頑張るのだ!」
「頑張りましょう!」
「そうだな……それとドーナ様には実はお願いがあるので、後でお話して良いでしょうか」
「うむ、時間は作ろう」
「ありがとう御座います」
こうして馬車はとても美しく巨大な屋敷に到着し、俺達は深呼吸して馬車を降りることになった。
ドーナ様とディア様は慣れたもので、馬車が到着して降りる頃には執事らしき人が既にいた。
「ようこそお越しくださいました、シズリー辺境伯ドーナ様とディア様」
「うむ、突然悪いな」
「いえいえ、滅相もありません。そして其方がかの有名なストレリチアのアツシ様、そしてそのお弟子のカナエ様ですね」
「「よろしくお願いします」」
「ロディ様とナディア様がお待ちです、どうぞこちらへ」
そう言って豪華な造りの屋敷に入ると、一階にあるサロンへと招かれた。
前は二階にあったそうだが、足の悪いレディも来る為、一階に移したそうだ。
綺麗なドアを開けると、グランドピアノが目に入る。
だが、あまり豪華とは言えない、なんだかどこにでもありそうなグランドピアノだった。
「やぁ、ドーナ様とディア嬢。久しぶりだね」
「お久しぶりです、ロディ様」
「お久しぶりですわ。そして其方がストレリチアの……まぁ、意外と美丈夫で若い方でしたのね。アツシ様でしたかしら?」
「お初にお目にかかります。貴族様の相手はしたことが御座いませんので不敬がありましたら申し訳ありません」
「いいのよ、あなた方のファンだから許しちゃうわ、ね? あ・な・た」
「ああ、君たちの売っているお酒に私も大満足だよ」
「それは良かったです」
「それで、折り入って私たちに話があるそうだね。なんだい?」
「ええ、実は私が村長を務めるストレリチア村の事でご相談があり、出来ればロディ様とナディア様を優先すると言う形で、ですが……貴族の盾になって頂けないかと」
「貴族の盾、君は面白い事を言うね。一体何がそこの小さな村にあると言うのかな?」
「実は、後でドーナ様に相談役になって貰うつもりだったので、もう言ってしまいますね?」
「俺を相談役に?」
「ええ、実は私は村をより良くする為に、スキルを使って村を作っているのですが、その中にまず、ロディ様が喉から手が出る程欲しい物が御座います。無論、盾になって下さると言うのでしたら、モルダバルド侯爵家の土地をご用意するのですが……」
「なんだい? 気になるじゃないか」
そこまで言うと、一旦溜めてからロディ様に向き合い口を開いた。
「実は、私のスキルで池を作ればそこで、海の魚でも川の魚でも、釣りをする事が出来るのです」
「――なんだって!?」
「ただ、この国にはディア様が仰るには魚が捕れる場所はあっても運搬が出来ずそこで消費して終わりだとか。池を作って釣りをするに適した環境を整えた場合、この国でも我がストレリチアにて魚屋を出店し、新鮮な魚を売りに出すことも可能なのですが、そうすると貴族がこぞって襲ってくるぞとディア様に言われまして」
「それはそうだろうね……確かにそれでは貴族の盾が無いと危険すぎる」
「もしロディ様とナディア様のお二人が貴族の盾になって下さるのでしたら、ナディア様にも素晴らしいご提案を二つ程」
「あら、何かしら?」
優雅に答えるナディア様に、俺がカナエに目を配ると空間収納から光すら反射する綺麗なバイオリンケースが一つ出てきた。
これには全員が目を見開いている。
そして、俺からは箱に入ったあの【カメオ付きオルゴール】を取り出しナディア様に手渡した。
まずは箱から手を付け、中から宝石のカメオが美しく細かい模様のある、匠が作ったであろう宝石箱を取り出す。
ナディア様に「裏にあるネジを回してから蓋を開けて下さい」と頼むと、ナディア様は恐々とネジを数回回してから蓋を開けた。
すると……。
「「「おおおお」」」
「なんて美しい音色……」
「今度、我がストレリチアにて楽器店を開く予定です。その店でこの【オルゴール】と呼ばれる商品も売りに出すことが決まっております」
「高級な宝石が使われた、匠の一品ね……溜息がでてしまうわ……」
「私も是非欲しい!」
「そう思い、モルダバルド侯爵様を紹介してくれたディア様にも一つ俺からプレゼントです」
そう言って箱を取り出すと、ディア様も目を見開き頬を染めて箱を開け、中から陶器で出来た人形のオルゴールが出てきた。
これにはナディア様も「そちらも素敵!」と口に手を当て驚き、ディア様は「ありがとうアツシ殿!!」と喜んでくれた。
そしてもう一つのケースを手にしたナディア様は、ケースを開けて息を呑んだ。
そう、俺とカナエ以外の全員がそのバイオリンを見て固まったのだ。
高かったぞ、そのバイオリン。
「こ、れは」
「何と美しい……」
「ディア様が、ナディア様にも貴族の盾をお願いしたいのならば良い楽器、特にバイオリンを用意すべきだと言われまして、当店で最も高い品を持って参りました」
「こんな……あぁ、なんて事、この世にこんなにも美しいバイオリンあったなんて」
「是非、弾いてみてください」
その言葉に誘われるようにバイオリンを弾くと、これまた美しい音色が鳴り響いた。
ナディア様は暫く弾いてからバイオリンを抱きしめ、涙を浮かべつつ「とても良い物をありがとう……」と口になさった。
だが、もう一つあるのだ。
「それが一つ目の贈り物ですが、先ほど私が申し上げた【モルダバルド侯爵家の土地をご用意する】ですが、実は露天風呂のある温泉がありましてね。様々な効果のある湯処をスキルで出す事が可能なのですが、美を追求する女性ならではの、ダイエット効果や美肌効果などもありまして」
「なんですって!?」
「「「!?」」」
儚げ美人からの気迫美人。
思わず全員が少し仰け反った。
「温泉があると仰るの? しかも様々な効果があってダイエットに最適で美肌ですって!?」
「正確には今はありません。池同様私のスキルで作る事が出来ます」
「貴方、 その釣り用池と温泉とを、わたくしたち夫婦を盾にしてこの国の貴族を上手く動かせ……と言う事かしら?」
その言葉に「半分は当たりです」と答えると、二人は俺と向き合った。
「確かにお二人が貴族の盾となれば我がストレリチア村は貴族からの猛攻撃は避けられます。『お話があるのでしたらモルダバルド侯爵家にお話を。』とこちらは言えますからね。そしてモルダバルド侯爵は一緒に行きたいと言う相手を『選んで』連れてくることも可能になる」
「確かにそうだ。釣りは紳士の嗜みとも言われる程だからな。私の友人達にも釣り仲間は多い」
「ええ、ついでに釣り竿も、モルダバルド侯爵家からのお客様でしたらいい品を無料で貸し出す事も可能です」
「ほう……」
「疲れれば温泉宿か、モルダバルド侯爵家の持つストレリチア村の屋敷にて過ごされればいいでしょう。どちらも悪い話では無いと思いますが?」
「「……」」
この話に乗って来るか否かは分からない。
だがここに今は賭けるしかない。
貴族相手は何かあってからでは諸々遅すぎる場合が多いと聞く。
さぁ、どうでる?
「良いではありませんか。モルダバルド侯爵家は中立をモットーとする貴族です。何方かの派閥争い等とは無縁……と言うのを貫いているのをディア様も知っていたのね?」
「ええ、我がシズリー辺境伯家も中立派ですので。争いをしている方々を面白おかしく見る分には、最高のご提案をアツシ殿はしたと思いますが如何ですお父様」
「うむ、して相談役と言うのはそれら諸々をどう扱っていいか迷っていたと言う事と、どれをどれ位必要なのか分からないと言う、そう言うことだな?」
「平たく言えばそうです。ドーナ様でしたら的確なアドバイスを頂けると思い、是非相談役にとお願いしたく」
「我がシズリー辺境伯領にもそなたの持つ拠点を作れば移動は簡単だと言っていたな?」
「はい、二度手間にはなりますが、一旦ノスタルミア王国にある俺の拠点に来て貰い、そこからオレンジ色の扉を選んで潜れば、そこはストレリチア村の役所に繋がっております。シズリー辺境伯領の拠点からの移動時間は遅くて3分かと。むしろ辺境伯家のお屋敷から領内の拠点への移動の方が時間が掛かるかもしれませんね」
「良かろう、相談役になってやる」
「ありがとう御座います」
「では、私からも良いかな?」
そうロディ様が笑顔で口にすると全員がロディ様を見つめた。
「君の拠点を一つ借りる事と言うのは出来るだろうか?」
「拠点を借りるですか?」
それは考えたことが無かった。
出来るかどうか鑑定してみると、一応出来るらしい。
但し、貸した場合ミスアーナにある俺の拠点との道は出来ないそうだが。
その代わりに、その貸した拠点とその家の本家と言うのだろうか? 拠点との道は出来るらしく、問題なく移動は可能だとか。
そこも踏まえてロディ様に話をすると、「それでもいいから、温泉旅館に近い屋敷を作って欲しい」と言う事だった。
確かに出来ない事は無いだろうが。
「その拠点を借りるのに、一ヶ月金貨10万枚出すよ」
「「金貨10万枚!?」」
「諸々揃えたり工事したりを考えたら、どう考えても安上がりだろう? 出来上がった物に文句は言わないと言う約束もしよう」
「では、後日商業ギルドにて賃貸契約書を」
「うん、是非そうしてくれ」
「俺も借りた方が良かったか?」
「ですが金貨10万枚ですよ、お父様」
「むう、それくらいならなんともないが?」
「シズリー辺境伯家もいかがですか? 辺境伯家のお屋敷内から直接行き来が可能になりますし、空いてる時間に村を見て回ることも出来るようになりますし、ディア様の働きぶりもご覧いただけます。私も今は大体ストレリチア村にいますし」
「良いのか?」
「ええ、相談役ですので諸々詳しく相談し合いたいですし、ディア様もストレリチア村で働いておりますから」
「ならば、有難く借りよう」
こうして明日出発の前に賃貸契約を二軒結ぶことになり、商業ギルドで待ち合わせしようと言う事になった。
モルダバルド侯爵家はストレリチアの後ろ盾となり、良い関係を今後も続けていけそうだ。
それに相談役のシズリー辺境伯。ある意味鉄壁の守りでもある。
何より二つの家が派閥争いのない中立派である事も運が良かった。
王家の事は良く知らないが、争いに巻き込まれるのは遠慮したい。
こうして挨拶をして俺達はそれぞれ戻る事になり、明日の朝商業ギルドに集まる事になったのだが――。
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