44 怠慢な人間の兵士を震え上がらせ、ボロボロの避難所で俺は村長になる。
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三人に説明をおえた後は、飲むゼリーとお茶を取り、弁当と昼食作りをしているロスターナに「ダグラスに後で護衛を頼むと伝言しといてくれ」と頼むとキャンピングカーに乗り込みエンジンを掛ける。
サングラスをしていざ出発だ。
まずは何事もなく首都の門を抜けて目的地に到着すればいいがと思っていると、そう言えばキャンピングカーもレベルを上げておいたんだったなと思い出す。
カーナビもついてるし、少し弄ると目的地をこの世界で選べるようになっていた。
そこで音声で「ノスタルミア王国の獣人の避難所」と伝えると、ナビはシッカリと動いてくれた。
これなら迷わず行けそうだ。
街を走るキャンピングカーはとても珍しいので人が立ち止まったりと色々あったが、門を出る際に俺がストレリチアのアツシと分かると顔パスだった。
そのままナビに従って車を走らせるが、ミスアーナから離れれば離れるほど道はどんどん悪くなる。
だがしかし、バージョンアップしたキャンピングカーなら結構な揺れでも抑えてくれるようで運転はしやすかった。
馬車で3日と言っていたから車で9時間程だろうか?おやつの時間前には着くか?
そんな事を思いつつ運転に集中していると、息切れを起こしたカナエと菊池が入り込んできた。
「何かあったのか?」
「もう直ぐ獣人の避難所に着くかと思って、二人でフルマラソンで」
「納品してきましたっす!」
「此処で本気を出すんじゃない」
「懐かし~。先生と二人、いや、シュウくんとナノちゃんもいたけど、オスカール王国ではキャンピングカーで過ごしてたんだよね~」
「そうだったのか。快適だよな」
「動く乗り物があると聞いて俺参上!」
「「「ダグラス!」」」
「護衛が必要だと聞いたぞ?」
「君の仕事はもういいのか?」
「いつも以上に張り切って仕事してきたぜ」
「それならよし。座って乗り心地と外でも見ていてくれ」
そう言うと弟子たちとダグラスは椅子に座り、キャンピングカーを物珍しそうにしていたが、「先生これバージョンアップした?」とカナエに聞かれたので「したぞ」と答えた。
「前より広くなってる」
「そっちまでは見てないんだ。広くなった感じするか?」
「うん、大人で8人は乗れるんじゃない?」
「子供だともっとだな」
「まぁ、後で見る時間があったら見よう。結構走ったからもう直ぐ到着すると思うぞ」
更に車を走らせていると、ナビが「目的地周辺です」と知らせてくれた。少し前方には確かに寂れた村のようなものが見える。
そこで一旦車から降りて車を消し、四人で歩いて向かうと――確かに寂れていた。
門らしき前には兵士が居たが……。
「こら、不要な立ち入りは禁止だ!」
「陛下から頼まれてきたんだが?」
「陛下から?」
「連絡漏れか? 大事な連絡をぞんざいな扱いをしているようだな。陛下に報告せねば」
「い、急いで確認して来ます」
「それまでは此処で待機を」
「分かりました。ですが時間は有限です。急いで下さい」
そう厳しく伝えると兵士は怯え上がっていた。
この様子からするに……こ奴ら、まともに仕事をしていないな?
俺の怒りを感じ取ったのか、兵士は怯えた様子で俯いている。
すると――、ガシャガシャと音を立ててやってきたのは、この村に派遣されている王国騎士団の男性のようだが。
「俺はゴズ。この避難所を纏めている王国騎士だ」
「俺は女王陛下に頼まれてやってきた、ストレリチアのアツシと申します。陛下からの手紙が来ている筈ですが?」
「先ほど拝見いたしました。中にどうぞ」
「入らせて頂きます。それとあなた方の普段の働き具合もチェックするよう言われてますので、村人から話を聞きます。いいですよね?」
「それは……」
「聞かれて困るような事をしているんですか?」
「……」
「まぁ良いでしょう。聞けば分かるだけの事です。俺の邪魔はしないで頂きたい」
そう言うと村の中を確認する。
壁にもたれ俯いている獣人、昼間から動かないで寝床で寝ている獣人。
環境は悪い……。家も吹き曝しと言う感じだ。これでは身体を壊すものも多く出る。
余りの様子にカナエと菊池は下を向いている。
「ご老人、お聞きしたいことがある」
「人間との話などしたくもない」
「では俺ではどうだ? お前たちと同じ獣人だ」
「――ダグラス様ではありませんか!!」
この声に耳の良い獣人達は飛び起きたりと集まってきた。
どうやらダグラスは有名人らしい。
ダグラスは人間に捕まっていると聞いていたそうで、今は深い訳あって俺の奴隷として丁重に扱われていると話すと、やっと俺の事も見てくれた。
「俺の名はアツシです。女王陛下にこの避難所を調べてくる様に言われ、ここを任された者です」
「ここを?」
「ここは避難所なんてもんじゃない、廃村だ。あっちの人間達も廃村だの奴隷だの言いたい放題だ」
「それは良い事を聞いた。陛下に報告するとしよう。彼らは職務怠慢で処分は免れないだろう」
俺の声が聞こえたのか、まだ門にいる三人は震えているが、知った事ではない。
人の不幸を笑えば自分に返って来る。ただそれだけだ。
「まず家をどうにかしないといけないな……。衣食住あってこその人生だと俺は思っている。ここの住民の人数を教えて貰えないだろうか?」
「えっと……大人が60人、子供が80人、孤児と教会の者が20人位です」
「その中に家族はどの位いるんだ?」
「基本的に家族で逃げて来てるものばかりですよ」
「つまり、だいたい30家族は住んでると言う事だな」
「片親だったり、子供の数はバラバラだけどな」
「そうか……。俺が今後の衣食住を約束すると言えば、俺を此処の村長に認めて貰えるだろうか?」
「出来るのか? 本当に?」
「寧ろ、此処に王都から人を呼び寄せるだけの物を数年あれば作れると断言できるが?」
「ほう?」
「いうじゃねーか」
「流石ダグラス様が見込んだ相手だな」
「おう、そうだとも! 俺の主はスゲェからな! ストレリチアのアツシと言えば、この国の首都では貴族も庶民も知らない者が一人もいないくらいの有名人だ!」
「それって凄いの?」
「ああ、凄く凄い事だぞ」
「皆さんに村長と認めて頂ければ、まずは農業になりますが此処での仕事も提供します。此処の特産品を作りましょう。どうですか?」
そう言うと、子供が一人俺の手を握った。
そして――。
「毎日殆ど食べてないの……ご飯一杯食べれるようになる?」
その言葉に俺は膝をついて子供の頬を撫でる。
「お腹いっぱい食べたいよな? 大丈夫、俺が村長になったら何とかするよ」
「本当に?」
「ああ、炊き出しも殆どして貰えてなかったろう?」
「うん……毎日お腹ペコペコだったの」
「そうか……辛かったな」
そう言ってその子を抱きしめて涙を流すと、自分が半年後と考えていた事に怒りが湧いてくる。
こんなに幼い子が苦しんでいたのに!!
――すると。
「俺は……アツシ様を村長に認める」
「俺もだ」
「あたしも」
「信用できる気がするんだ……ダグラス様だって奴隷だって言うのに、首輪もないし、やせ細ってないし」
「栄養満点のご飯を食べさせて貰ってるからな! 仕事はきついが遣り甲斐もある」
「俺も仕事したい! 家族を養いたい!」
「お願いします、村長になって下さい!」
「仕事を!」
「住む場所を!」
「子供が病気になった時の薬を!」
「分かりました! なりましょう村長に!」
その途端ワッと声が広がり、俺の中に大量の音声が流れ込んだが気にせず頷き、やるべきことを考える。
だが気になる言葉があった。
【村長となり、村を得ました。街まで発展OKにすれば建てられる物が増えます。どうしますか?】
無論「YES」だろう。
そう心で考えると、俺は光に包まれ、俺の中でスキルが大きくなり、別枠のスキルが出てきた。
これには周りも驚いていたが、俺が笑顔で「村長になったお祝いで神から何か授かったようです。確認してから色々進めます」と言うと、安心したようだった。
直ぐにでも確認せねば。
「ダグラスは皆の話を聞いておいてくれ。知り合いもいるだろう?」
「ああ、でも良いのか?」
「スキルチェックを急いでやって、暗くなる前に建てる物は建てないとな」
「分かった。出来るだけ急いでくれよ」
「ああ! 行くぞ、二人共。まずは車内でチェックだ」
「「はい」」
こうしてキャンピングカーに乗り込み、俺はソファーに座ってスキルボードを出す。
――するととんでもない事になっていた。
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