31 オスカール王国(菊池side)
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――オスカール王国(菊池side)――
先生達の足取りがドンドン分かってきた。
先生達は宿には泊まっていなかった。
となると外で野宿していたんだろう……自分が不甲斐ない。
その後も足を運び、まず冒険者ギルドで先生の名を告げると確かにあった。
だが戦闘はしていないようで、ギルドランクは上がっていなかった。
ならばと商業ギルドに行くと、驚く情報を手に入れた。
何でも、砂糖と胡椒を売ってくれたのだと言う。
そのお金で奴隷を買ったらしい。
獣人の子供を二人。
先生らしいと思った。
俺が先生の生徒だと言うと、商業ギルドのマスターは気をよくして色々話してくれた。
何でも先生は今、ノスタルミア王国の首都ミスアーナにいるらしい。
そこで『ストレリチア』と言う店をしているのだとか。
「先生に会いたい」と言うと流石に困られてしまったが、誰にも言わないならとコッソリ教えてくれた。
「ストレリチアのアツシ様は、ボルドーナ商会と懇意にしているそうで。その会長が1週間後、この国に到着します。その際、ボルドーナ商会に行って、ボルドと言う店長と会えればもしかしたら……」
それは藁にも縋る情報だった。
もしかしたら先生の元に行けるかもしれない!!
心に希望が少し湧いた。
商業ギルドマスターに御礼を言い、俺はやっと生きた心地で城に帰り、自室に閉じ籠った。
するとノックする音が聞こえ、水野が入ってきた。
「菊池、最近外に出歩いてばかりだけど」
「ああ、気分転換したいんすよ。城にずっといると気が滅入るっていえばいいのか、とにかく城の外にいるほうが精神的に落ち着くんすよね」
「精神的に辛いのね」
「まぁな。井上はどうしたっす?」
「綺麗処を集めてお酒飲んでるわ」
「井上なりの気分転換なんっすかね?気楽なもんっすね。俺達まだ未成年だろうに……。異世界に来たから解禁って馬鹿じゃないっすか?」
「菊池が神経質なだけよ。学校にいた頃はあんなに楽しかったのに、皆変わっちゃったわ」
「俺は楽しいと思える事はドンドンするっすけど、魔法の訓練やここでの生活は楽しいだけじゃないっす」
「そうかな……」
「だから午前中は修行に励んで、午後は気晴らしに外へ行ってるんすよ。ここで働く人達は俺には堅っ苦しいんす」
「そうだったの……てっきり先生の足取りを追ってるのかと」
「先生はジュノリス大国に行ってるって王太子が言ってたじゃないっすか」
「そうだけど……私も先生に会いたい。ジュノリス大国って遠いのかな……」
「電車もバスもないっすからね……、水野は王太子はもういいんすか?」
「それは……」
「兎に角、俺の気晴らしは今後も続けるっす。せっかくの異世界、冒険者らしい事も興味あるし、美味しい食べ物も見付けたいっす。宿屋に泊まるのも面白いかもしれないっすね」
「城には帰らないの?」
「気が滅入るって言ったっすよね。俺なりの気分転換はしておきたいっす。今精神的にナイーブなんす」
「分かったわ。何かあったら教えてね」
「ありがとな」
――よく言うぜ。王太子に言われてきてたんだろ。目が泳いでるから分かるってーの。
だが、俺が先生の場所を知らないと言う事は伝えてあるので一応は大丈夫だろう。
それに精神が落ち着かないからと言う理由も使える。
1回宿屋に泊まっておけば、俺がこの国を出る時も問題はなさそうだ。
まずは1週間後。
ボルドーナ商会の店に行って、ボルドさんを探す。
先生の名を出せば直ぐ分かるだろう。
俺はもう、勇者と言う肩書を捨てる。
名前を捨てても構わない。
別の名で生きていくのもアリだ。
それに、この国は絶対に信用できないと言う事が分かった以上、長居する気はない。
それから1週間の間に一泊宿屋で眠り、何時もの不味い朝食を食べてその辺をぶらぶらする。
危険な所には入らない。
公園で遊ぶ子供たちを見たりして過ごす。
多分俺には監視役が付いているだろうからな。
下手な動きはしない。
それから1週間後、ボルドーナ商会に荷馬車が来ていた。
俺は気になる商品があるかのように装って中に入り、一人の男性に声を掛けた。
「すみません、今宜しいっすか?」
「はい、如何されました?」
「あの、ボルドさんと言う方を探しているんっす」
「ボルドは私ですが?」
「では、ナカゾノ先…、違うなアツシ先生はご存じですよね?」
俺のその言葉に彼は俺の手を引いて急いで個室に入り、椅子に座るよう指示を出した。
慌てて椅子に座ると――。
「アツシ様を御存じと言う事は、別の世界から来た、この国の勇者ですね?」
「俺は勇者をやめる為にここに来ました」
「理由を伺っても?」
「王家が信用できないんっす」
「もっともな意見ですね。私もそれについては同意します」
「それで、出来れば先生の元に行きたくて……」
「なるほど、アツシ様のおっしゃった通りになりましたね」
「え?」
「アツシ様を先生と呼ばれる方が居たら、助けてやって欲しいと頼まれました」
「!?」
「荷物を降ろし終えたら、私はその足で馬車に乗ってノスタルミア王国に戻る予定です。乗って行かれますか?」
「良いんっすか!?」
「オスカール王国でやる事などありませんからね」
「では、お願いしたいっす!」
「良いでしょう。他ならぬアツシ様のヒミツのお願いです。叶えましょう」
その言葉に何とか絞り出した声で「せんせぇ……っ」と口にすると、ボルドさんは小さな溜息を吐いて、暫く店に置いてくれた。
そして荷物の搬入が終わると、その足で俺は服装を変えて眼鏡をし、フードを被ってボルドさんと馬車に乗ると、馬車が走り出した。
王都の門を出れるか不安だったが、ボルドーナ商会の会長が乗っていて通行書も持っていたことから、俺が乗っていても怪しまれることなく外に出られた。
それからの数日は追手が来るかもしれないと冷や冷やしたものの、追手は来ず。
そのままノスタルミア王国に入り、先生のいる首都まであと少し。
受け入れてくれるかは分からない。
だが……シッカリ心から謝罪しよう。
そう強く想い、ボルドさんから先生の素晴らしさを耳にタコが出来る程聞きながら過ごしたのだった――。
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