131 全てが終わり、そして新たに始まる時。
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全ての罪を認め、愛した娘だと叫んだ元法王であり罪人トシリディは、最後は愛する娘だった筈の男性、ロスターナにより蹴りを喰らって頭から血を流し、泡を吹いて意識を失った。
愛した女性だと思っていたら男性だった……と言う悲劇は、その日のうちに面白可笑しくジュノリス大国の王都を駆け巡った。
法廷で倒れたトシリディはその後タンカで運ばれ城の地下牢に入れられ治療魔法を受けて深い眠りについていると言う。
全ての悪事が曝け出され、公開斬首刑となったのだ。
無論ロスターナに言った罪は無効である。
俺から頼んだことだったからな。
◇
「あの裁判からもう1週間よ? まだ目覚めないの~?」
「余程ロスターナが男性だったことがショックだったんじゃないでしょうか?」
「やだ、名演技だったかしら? 名演技過ぎちゃったかしら?」
「名演技だったなぁ……みんな男とは思わなかったと思うぜ?」
「ふふふ!」
「先生笑い事じゃないですよ。延命治療の為に態々城までやってきて地下牢まで行く私の身にもなって下さいよ」
「水野、すまんな」
あの裁判から一週間。
余りのショックからか、未だに目覚めることが無い罪人トシリディ。
延命の為に回復魔法は掛けているし、一応ニノッチ達にも魔法を掛けて貰ったのだが、目覚める事は無かった。
ニノッチとニノスリーが言うには「ココロ コワレチャッタネ」との事。
このまま死ぬまで目が覚めないそうだ。
その道を、トシリディは選んでしまった。
愛するロスターナが絶世の美女ではなく、男だった事が最後の決め手だったのだろう。
「仕方ない。延命治療は中止だ。もう1週間も経つ、僅かな水しか飲んでいない。後は自然に任せて逝かせてやろう。それが最後の救いかも知れんからな」
「陛下はそれで宜しいのですか?」
「ああ、それが一番あの者にはいい最後なのかも知れん」
何故かとても憐れんでいる。
それは演技をしたロスターナにはないが、カナエもかなり憐れんでいるように見える。
「流石にやりすぎよ……なんだか可哀そうに思えて来たわ」
「だが、沢山の命を奪った悪人でもある」
「そうなんだけど……」
「確かに初めて知った人の温かさだったり、信じて貰える嬉しさだったりはあったかもしれないが、そう言うのを沢山裏切ってきたのは奴だろう。俺は当たり前の罰だと思うが?」
「それはそうなんだけどね~」
「改めて、アツシが王太子で本当に良かったかもしれんと思ったぞ」
「そうですか?」
「正に、手加減のない裁き方ではあった」
そう言って溜息を吐いたのはジュノリス王だった。
しかし――。
「だが、誰もあんな死に方だけはしたくないだろうなと言う最後だったな」
「えげつないです、王太子殿下」
「私もちょっと引いてます」
「いやいや、ランディールとメルディールも酷くないか?」
「「いいえ?」」
「でも、これで我が家から一人卒業ね」
「ああ、ロスターナには今後聖女ハルゥを支えて生きていく義務があるからな」
「ごめんなさいね?」
「気にするな。幸せになるんだぞ」
「ええ、とっても幸せになってみせるわ」
そう言って嬉しそうに微笑んだ名演技をしてくれたロスターナは、愛しい恋人である聖女ハルゥと共に寄り添って座っている。
今日から二人はテリサバース教会に戻るのだ。
その為の作業は着々と王家でも進めていて、聖女がトップと言う新たな体制の下でスタートする。無論、新たな聖女が生まれた時は、成人するまではその親が担うと言う決まりは作ったが。
それから二週間後――。
罪人トシリディは地下牢の中で息を引き取ったと言う知らせが入ってきた。
最後は骨と皮だけになり、涙を零して死んでいたのだという。
葬儀は行わず、重犯罪人が眠る墓地に埋葬されたのは言う間でもなく、これで宗教問題も片付いたのだった。
ホッと安堵したのも束の間、また忙しい日々が戻ってきてアイス工場の事や、様々なアイス作りに没頭する作業員たちに説明をしたり、本を手渡したり、試食したりしながらアイス作りは進められ、三か月後――ようやくジュノリス大国の首都にて【アイスクリーム】と【アイスキャンディー】の販売がスタートした。
無論、王家が作った商売な事もあって【ストレリチアのアイス屋】と言う名で店が出来たのだ。
アイスクリームもアイスキャンディーも飛ぶように売れ、次々開発が進んでいく日々。
そしてアイス用のミルクだけではなく、輸入も頼ってバターが作られ始めると、チョコレート工場が作られた。
ついにチョコレート工場も本格稼働を始め、更に忙しくなったのだが俺とカナエの日々は何時も一緒で変わらない。
そんな折、久々に『国同士の会議』がしたいと三つの国から連絡があり、ジュノリス王も来ることになって久々にミスアーナの家にて、会議が開かれた。
「我が国にも、罪人トシリディの記事がやっと届いたぞ」
「俺の国にもです」
「私の国にもだよ。本当に最後は凄まじい終わり方をしたんだね。俺だったら生きていけないしトシリディのように死んでしまうよ」
「本当ですね……。俺もきっと心を壊して死んだと思います」
「ほほほ、男は繊細だからのう」
そう言って語るノスタルミア女王とシュウとラスカール王に、俺は苦笑いしながらどう答えていいものかと悩んだが、「アレが一番の罰だったんだ」と答え、「流石法の国の王になるべき男の沙汰よなぁ」とノスタルミア女王は笑っていた。
「なんていうか、倍返しで倒しちゃった感のある最後でしたね」
「そうか?」
「やられたらやり返すのは当たり前の常套手段かも知れないが、先生とは絶対に戦いたくない争いたくないと思ったよ」
「ははは」
思わず笑ってしまったが、三国の貴族も国民も「ジュノリス大国の王太子殿下を怒らせてはならない」と専らのうわさだとか
まぁ、確かに滅多に怒る事などはないが、それにしても怯えすぎではないだろうか。
「俺、ちゃんとします。ちゃんと賢王となりますので……」
「私ももっと励まねば!!」
「そうだな、我々もまだまだやるべき事は残っておるからのう」
「でも、宗教問題が片付いて良かったよ。難癖付けられるのも無いだろうし、これからは色々な開発なんかを頑張れる」
「アツシよ、頑張るのは良いが忘れてはおらんか?」
「何をです?」
「落ち着いたら子作りを励むと、ワシに言うていたではないか」
その言葉に俺とカナエが顔を見合わせると、確かに最近は落ち着きつつあるし……と言う話はしていたのだ。
そう、所謂「そろそろ励みませんか?」と言う奴だ。
「ジュノリス王、心配には及ばないわ」
「ん?」
「だって、励んでるもの!」
「こらカナエっ!」
「「「「おおおおおおおおお」」」」
思わず顔を赤くしてカナエに注意したが、カナエはニコニコしていて怒るに怒れない。
確かに最近は励んでいるが……。
「こうしては居れんな。私も早く王妃を持たねば!!」
「私はカナエさんの産む娘を希望してますので!!」
「歳の差大分出来ちゃうけど大丈夫?」
「はい! 愛せますし愛し通します!!」
「その意気は良いんだがなぁ……まぁ、シュウとナノなら安心か」
「はい! 義父様!」
思わずワッと笑い声が上がったものの、もう心に憂いは無い。
今はテリサバース教会にも通いロスターナが出迎えてくれて色々話をしてくれる。
そんな折、聖女ハルゥが『一つの星を見た』のだと言う話を俺は皆にした。
その一つの星と言うのは――。
「実はな――」
そこから続いた言葉に皆は喜び叫び、その日のおやつは特大のケーキで皆で祝った。
そう、カナエが妊娠していたのだ。
全てが終わってからのカナエの妊娠は喜ばしく、安定期に入ってからジュノリス大国に王太子妃の妊娠の発表を行った。
国民は喜び、ジュノリス王は涙を流して感動し、やがて時は過ぎて行った――。
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