127 テリサバース教会の法王への裁判が始まった。③
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ロスターナは本当に頑張ってくれた。
大好きなハルゥの為に、身を削ってくれたのだ。
盗聴器を忍ばせて話を外で聞きながら、あの法王を見事落とし切った!!
「こっちだ、ロスターナ」
「今行くわ」
ぼそぼそっと話ながら闇夜に隠れてロスターナの手を取ると直ぐに瞬間移動する。
そしてコッソリと俺の執務室へと戻ると、そこにはジュノリス王と宰相であるフィリップ。カナエとランディールとメルディールが待っていた。
「しっかりあの法王を落とし切ったな! 本当に無理をさせてすまない!」
「ええ、とっても気持ちが悪いけど、とっても遣り甲斐のある仕事だと思うわ。ふふ、私に最後はゾッコンだったわねぇ……本当、あのクソ爺どう料理してやろうかしら……」
目が据わっているロスターナに思わず恐怖でゾクリとしてしまったが、無理をさせたのはこっちだ。甘んじてその溢れ出る怒りを受け止めようと思う。
しかし、提案したのは俺だったが本当に即ロスターナに落ちてくれた法王。
これで暫くの間は地下にいる人間の命も無事な筈だ。
俺達の食事に毒を混入したリンの家族もまだ助かってくれていると良いが……。
「あの爺、ハルゥがいない癖に教会にあたかもいるように言うのよ? 信じられる?」
「まぁバレたら不味い案件だからな」
「あんな爺の元にいたと思ったら……ハルゥが可哀そうすぎるわ!」
「しかし、この状況に陥っても聖女の事はどうにかなるとでも思っているんですかねぇ? 教会に聖女がいないと分り、国民に伝われば事だと言うのに」
「ロスターナ、悪いが明日は聖女の事を中心に聞いて来てくれないか?」
「ええ、気分が悪くなるけど仕方ないわね。後で徹底して潰してやるわ」
「ニノッチ、ロスターナが襲われた際に備えて製薬魔法で無味無臭の意識を失う薬を作れるか?」
「ツクレルヨ ナグラナイヨウニ スルノ タイヘンダケド 我慢シテ ロスターナ マモルヨ!!」
「ありがとうニノッチ! 蹴り飛ばせば早いんだけど、まだ蹴り飛ばす時期じゃないものね、我慢するわ!!」
ウサギ獣人のキックか、相当痛そうだな……思わずロスターナのアスリートのような足を見て遠い目をしてしまう。
今回頼む際、ロスターナは一つ条件を付けた。それは『法王に対して一撃は足で入れたい』と言うものだった。
ハルゥから色々聞いて行くうちに相当頭に来たらしい。
しかもカナエまで狙っているとなれば怒りは完全に怒髪天だったようで、「アツシさんのカナエちゃんまで狙うなんて許せないわ!!」と、美人の怒り顔はとても迫力があった。
だが、初日はまずロスターナにゾッコンになって貰う事が目標だったが、本当にあっと言う間に落としてくるロスターナも凄い。
元々美人な顔立ちだが、化粧をして身だしなみを整えると絶世の美女となり、法王を数分で虜にしてしまうのは「流石ロスターナ……」と思わず呟いてしまった程だった。
あらゆる男性のハートを奪い地獄に落としてきたロスターナだからこそのやり方だったのだ。後で男性だと分れば法王の心はポッキリ折れそうだ。
「次回の法廷ですが、聖女様を連れてこなかった場合どうしましょうか」
「もし寝込んでいると言うのなら見舞いに行くと言って慌てさせてやろう」
「いいですね、王族の見舞いともなれば断れない」
「ハルゥはずっと小さな物置部屋で過ごしていたと言っていたわ。そんな所にあなた方を連れて行くとは思えないけれど」
「カモフラージュの部屋になるだろうが、直ぐに用意できるのかね」
「治療師も連れて行こう。そこで治療するふりをして本物ではないと慌てて貰えれば問題ない」
「ですが、聖女様の顔を見た事がある治療師はいるんですか?」
そう俺が問いかけると渋い顔をされたので、それなら――と水野の事を話した。
最初にハルゥ様を保護したのは水野だ。
その上で城の治癒師の恰好をさせて演技をして貰おう。
「それは名案だな。だがそんな咄嗟の演技など出来るか?」
「水野なら出来ますよ」
「カナエのお墨付きです」
「そうか。そのミズノと言う女性には頼めそうか?」
「事情を話せば必ず」
「その時は盛大に狼狽えて貰うとするか」
こうして着実に法王を追い込みつつ、ロスターナに依存していく様に仕向けて行く
追い込まれる度にロスターナに甘やかされ、甘く囁かれ、今の法王の座にしがみ付くのか、それとも――。
何方にせよ地獄しか待っていない。次の日の夜も同じ時間にロスターナは法王の元に向かい、沢山褒めて、沢山甘えさせ、沢山誘惑して、押しては引いての駆け引きをさせてギリギリラインを攻めさせた。
「明日とても大変だと思うけれど、私、応援してるわ……」
そう言って頬にキスでもしそうな程の近くで囁いて去って行くロスターナに、最早二日で骨の髄まで落ち切った法王。
頭の中は半分は明日の裁判の事で、半分はロスターナが占めているだろう。
まともな判断が出来ようがない。
こうして二回目の裁判が始まった訳だが、碌に言い訳も考えられない頭だったのか「あー」や「うー……」と言葉を詰まらせる回数が増えた。
明らかにロスターナの影響だな。そう思うと俺は内心ガッツポーズをしたくなった。
「時に聞くが、聖女様が寝込まれたと言う話だが」
「は、はい。そうです!」
「では、王家から見舞いに行こう。そして王家の主治医に見て貰おうと思う。良いな?」
「え!?」
「この国の一大事だ。聖女様が寝込まれてしまわれたのならば見舞いに行くのが道理。そして一刻も早く治って頂く事も大事な事だ。なぁ? 王太子よ」
「その通りですね。腕利きの俺の治療師を連れて行きますので、直ぐに手配いたします」
「は、はひ……」
「どうした? お主も顔色が優れないが、お主も診てやろうか?」
「めめめめめ……滅相もあ、ありません」
「そうか、では直ぐに裁判を終えて王家より聖女様の見舞いに向かおう。これにて閉廷! 刻は一刻を争う! 直ぐに聖女様の為に動くのだ!」
こうして顔面蒼白で法廷兵士に連れられて行く法王を他所に、居もしない聖女の為に『王家より倒れた聖女様への見舞い』と言うイベントが始まった。
無論昨夜のうちに水野は来て貰っている為、王家の治癒師の恰好で待って貰っていたのだが――、さてさて、法王はどういう手を使ってくるだろうか?
一応形ばかりに薬の入ったカバンを手に俺達は馬車に乗り込みテリサバース教会へと向かったその頃――。
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もう直ぐ完結です!!
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とても多くてすみませんm(__)m