126 テリサバース教会の法王への裁判が始まった。②
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――法王side――
不味い! 非常に不味い!!
聖女を今度連れてこいと言われても、とてもじゃないが何処にいるのかもわからない!
三国の何処かと言うのだけしか分からない中で、どう連れて行けばいいのだ!!
着替えを済ませ、法衣を徹底的に洗うように指示し、風呂でガタガタと震えながら身体を洗った。
温かい筈の湯なのに冷たく感じる。
今日のジュノリス王はまるで、何もかもを知っているかのような視線だった。
まるで「お前が隠していることを全てこちらは把握しているが?」とでも言いたげのオーラが出ていて、何とか堪えながら怯えた老人の振りをした。
「くそっ!! あの無能聖女め……一体誰に囲われているんだ!」
バシャンとお湯を殴りフルフルと震え、乱暴に顔を洗い頭を洗った。
何度洗っても卵の匂いが落ちない気がしてイライラする!!
こう言う時は奴隷墜ちしたシスターや神父の家族で発散するに限る。
そう思えばと風呂から出て楽な格好をし、居住区から教会に向かうと、ギイイ……とドアが開き、一人の美しい女性が入ってきた。
フードを払い退ける姿すら艶っぽく、ウサギの耳がまた似合った獣人族のようだ。
「あら? 神父様? もしかして法王様かしら?」
「そう言うお前様は冒険者かな? フン、ワシにまた文句でも言いに来たか!!」
「あら、一体何のこと? 確かにテリサバース教会の法王ともあろう方が、王家に云々は聞いたけれど、皆他の人から聞いた、街の噂で聞いたってばかり。それって法王様に限ってあり得る話なのかしらって思ってたわ」
「ほう」
どうやら話の分かる娘のようだ。
ワシは気分よく歩いて近寄ると、彼女の頭からつま先までチラリと見つめた。
――実にいい女だ。
胸が無いのはアレだが、顔は飛びぬけて美人、少し垂れ目の目元には泣き黒子まである。
美しい銀髪は緩くカーブしていて腰は引き締まり足はアスリートのように少し筋肉質だが、肉体美と言う美しさを感じることが出来た。
「お前さんは冒険者か?」
「いいえ、私は今は家政婦よ。まぁ働いている所はお店なんだけれど、そこで働いている皆さんの洗濯をしたりお料理をしたり、部屋を綺麗にするのが仕事ね。やっと一息つけたから来てみたんだけれど、あっちもこっちも法王が云々どうしてやろうか云々。気が滅入るのよねー」
「ほっほっほ」
「あら、ついついごめんなさい? 法王様相手に。でも私偉い方とお話する為の言葉や作法なんて知らないのよ。気に障ったら謝るわ」
「なに、そなたのような美しい者がワシを思ってくれると思うだけで気が晴れる。そなた、名を何と申す」
「ロスターナよ」
「ロスターナか。実にそなたに似合う美しい名だな」
「あら、嬉しい」
少しだけハスキーボイスだが色気のある言葉使いに仕草だ。
彼女を前にするとカナエも霞むな。
これだけ色気があれば男も放ってはおくまい。
「しかし、こんな夜更けに一人で来るのは歓迎せんなぁ。そなたはとても美しい、何かあってからでは遅いのだぞ?」
「心配してくれるのかしら?これでも力は強いんだもの、何とかなるわ。それにこの時間の教会って来てみたかったの! 蝋燭で輝いた大聖堂! 正に圧巻ね! とても素晴らしいわ!」
そう言って嬉しそうにウットリとした表情を見せるロスターナの為ならば、毎晩のように金のかかる蝋燭を置くのも悪くはないとさえ思って来る。
夜は蝋燭をケチろうかと思ったが、彼女の為につけておくのは別に構わんだろう。
「あら、法王様を立ちっぱなしにするなんて私ったら、宜しかったらお隣に座りません?」
「ほほほ、この様な爺に気づかい等」
「あら、素敵なお爺様にこそお優しく……でしょ?」
ああ、なんと艶っぽい。
そっと隣に座るととてもいい香りがする。
はぁ……イイ女とは匂いすらも絶品なのだな。
「でも、法王様も大変ね。沢山の神父様やシスターに目を配ったり、聖女様の親代わりだとも聞いたわ。」
「あ、ああ」
「聖女様のご両親が亡くなってからずっとでしょ? 子育てはとても大変だと言うのに、法王さまったらとてもお優しいのね……」
「甘やかすまいと一人で出来る事はさせているが、聖女様も年頃だからな……中々に反抗期もあって難しい」
「あらあら、とても苦労なさっているのね? 三ヶ月位前に教会の神父様やシスターが朝から聖女様を探し回っていたのは、ソレも反抗期かしら?」
「そうなのだよ……」
そもそも聖女は行方不明のまま。
一体どうやって二日後の出廷をクリアすればいいのだ……。
「まぁ、そんなに思い詰めるほどに?」
「そ、そうだな……次の出廷には聖女様を連れてこいと言われて、あのような場に聖女様を連れて行くのは気が引ける」
「そうね、国王ともなれば、威厳も凄いでしょうけれど……無論法王様も威厳はあるのよ? でも私には可愛いお爺様に見えてとってもステキ」
「んほ!!」
思わず声を上げて喜んでしまった。
こんな美女にそこまで言われたら悪い気はしない!!
「ワシを威厳があって可愛い爺様等、全く照れてしまうわ!」
「あらあら、お顔が真っ赤よ? やっぱり可愛いわ」
そう言ってワシの頬をツンツンするロスターナ……嗚呼ロスターナ。
匂いも良ければ声も心地よい。
年上を堕落させる術をよく知っている……何というツワモノだ。
「ロスターナは店に住んでいるのか? 何処に住んでいるのだ?」
「それは、ひ・み・つ?」
「むう、ひ・み・つ・にする事は無かろう?」
「あら、私にだって秘密にしたいことは一つや二つくらいはあるわ? 法王様もじゃなくって?」
「むう、そう言えばそうだな」
「でも、【秘密の共有】も、素敵だと思わない?」
「ロロロ……ロスターナ」
そう言って迫ってくるロスターナに、ワシはドキドキしながらゴクリと唾を飲んだ。
そして人差し指をワシの唇にあてると――。
「また来るわ、法王様。今日は様子見だけ……ね?」
「よ、よよ、様子見!?」
「あら、言わなくても……何のことか分かるでしょう?」
誘うような仕草、ツウッと頬を撫でる感じ……わ、ワシは今誘われているのか!?
こんな美女に!?
ああ、聖女もカナエもどうでもいい!!
この娘だけが欲しい!!
「明日の夜もこの時間に来るわ……待っていて下さる?」
「うう、うむ! 待とう、待とうとも!!」
「嬉しいわ。会った時はとってもご機嫌斜めで不安だったの……明日は笑顔でお出迎えしてね? じゃなきゃ嫌よ?」
「うむ!!」
「あと、私鼻がとてもいいの。クンクンしたけど卵の匂いなんてしないじゃない。とってもとっても……イ・イ・香り」
そう耳元で囁かれ顔を赤くしながら口をパクパクさせると、「変な臭いなんて付けてこないでね?」とても悲し気に言われワシは無言で頷いた。
「そろそろ帰らないと駄目だから帰るけれど、法王様、とっても名残惜しいわ」
「ああ、ロスターナ……ワシもじゃよ」
「嬉しい……ではまた明日の夜に会いましょう?」
そう言ってフワリと優しく微笑んだロスターナは長い髪を靡かせマントを羽織ると外へと出て行ってしまった。
まるで夢のような出来事だった。
そうか、獣人だから鼻がいいのか。
これでは地下には行けそうにないな。
仕方ない、ロスターナを手に入れたら地下を綺麗にしよう。
「ぐふぅ……っ! それにしても良い女だったのう!!」
何処に住んでいるのかは秘密らしいが、あんな美人滅多に拝めるもんじゃない!
しかもワシに気があると見た!
気分が良い! 奴隷たちを殺すのは止めにしよう。
変に匂いをつければロスターナを悲しませてしまう。
嗚呼、ワシの事を唯一慰めてくれるロスターナ……。
明日も来てくれるのか。
明日は一線を越えてくれるのか?
楽しみで仕方ない。
ロスターナを前にすれば聖女等子供過ぎて駄目だ。
カナエも見た目は良いが、それ以上でもそれ以下でもない。
あんな極上を知ってしまえば、どしようもない!!
しかもワシを好きと見える!!
「よいよい……今日はゆっくり寝て、聖女の事は明日考えるとしよう。今日はワシの女神に出会った日だ。祝い酒でも飲みながら寝るとするのう」
そう言っていそいそと自分の部屋に帰り、ワインを開けて幸せに浸った夜の事――。
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