125 テリサバース教会の法王への裁判が始まった。①
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「うむ、それは良いかも知れんな」
「ええ、とてもいい案だと思います」
こうして、法廷がある日の夜にはとある人物を教会に送り、ほんの僅かな時間だけのある意味夢で、事情を知っていればある意味地獄を味わって貰う事にしたのだ。
それと同時に【テリサバース教会の法王がジュノリス王に裁かれる】と言う話題は、直ぐに四つの国に広がった。
テリサバース教会の前では国民が集まり法王に対して抗議行動をしており、法王が馬車に乗り込んでも声は大きく、生卵や石を投げつける国民も多かった。
その様子を、法廷の三階から俺とジュノリス王はカーテンの脇からジッと見つめ、この僅かな距離すら馬車で移動も難しい程に怒れる国民に押され、何とか馬車は法廷前に到着し、法王は神官に守られながら法廷に入ってきた。
途中生卵を投げつけられ神官諸共酷い有様だったが、着替え等ないだろう。
「アツシよ、そちらの首尾はどうだ?」
「ええ、ばっちりですよ。ノリノリです」
「ははは」
「今日はまず噂の事と、聖女様の事を聞いて揺すってみるでしたね?」
「ああ、次回は聖女と共に出廷せよになる」
「その次に毒の入った瓶での殺人未遂と、教会への強制立ち入り調査か」
「ああ、彼の出番は本日と次回、その前日となるな」
「やる気満々だったので大丈夫でしょう。化粧もばっちり綺麗に整えるそうですよ」
「ははははは! 聞く分には面白いが、やられると思うとゾッとするな」
そう笑っているとドアをノックする音が聞こえ、法王が法廷に入ったと言う情報により俺とジュノリス王は法廷に向かった。
裁判員として貴族・有識者・国民の代表、傍聴席も満席となり国民の関心の高い法廷となった。
俺達が法廷に入ると会場は静まり返り、国の法である国王が席に付き、王太子である俺は後ろに立ってから始まる事となった。
身奇麗にはしてきたのだろうが、法衣は卵だらけで大変な状態だ。笑わないようにするのに必死だった。
陛下が木のハンマーのようなものでトントンと机を叩くと、裁判が始まった。
「久しいな法王よ。よもやこのような場所で再会となろうとは思ってもいなかった。聖女様は息災か」
「はい、健やかに過ごしておられます」
どの面がほざくか。
ハルゥ様ならミスアーナの家で確かに伸び伸びと暮らしているが、お前の所じゃないだろう。
そう言いたかったがグッと口を引き締め、心を落ち着かせて様子を伺う。ニノッチとニノスリーにもおとなしくしているように言い聞かせている。
「四つの国全てに噂が流れているが、あの噂の内容は真実か?」
「まさか! わたくしめはテリサバース教会の法王。国の法であるジュノリス王になりたい等とは決して思っておりません!」
「では、何故このような噂が三国から流れ、ジュノリス大国にまで広がったのだ?」
「誰かの陰謀です! わたくしめはそのような気は一切ございません!!」
「ふむ……だが火が無い所に煙は立たぬと言うではないか」
「陛下どうか信じてください! わたくしめは誰かに嵌められたのです! このような老いぼれに何が出来ると言うのですか!!」
そう哀れな老人を装うが、お前がカナエを妻にしたい事も、ハルゥ様に娘を孕ませようとしていることも此方には筒抜けだ。
俺は決して許しはしない。
断固として追い詰めてやる。
「嵌められたと仰るが、一体誰に嵌められたのです?」
そう俺が口にすると一瞬だけ身構えた法王だったが、「そ、それは」と口にするだけで誰に嵌められたとは言えない。
そうだろうとも、誰もお前を嵌めて等いない。
ましてや俺や陛下に嵌められたとも言えない。
長い沈黙が流れた。
その後も噂の内容を一つ一つ口に出し裁判をして行くと、ドンドン顔色が悪くなっていく法王に余裕はなく「無実です!」「その様な事を言ったことはありません!」等と口にしているが、反対にその必死さが本音を表しているようで貴族たちも国民も顔は険しい。
「ふむ、本当に陰謀説だとしたら、どうやら教会内では問題が起きているようですね。聖女様が心配です」
「そうだな、聖なる心を持つ聖女様は本当に苦しんではおられまいか?」
「そ、それは大丈夫で御座います!」
「そうか、ではこの噂の出所を次の法廷にて、聖女様を連れてきて貰って調べて貰いたい。次の法廷は二日後だ。その時には必ず聖女様を連れて来て貰おう」
「な、なんですと!?」
「息災なのだろう?」
「は、はい!!」
「聖女様も今の状態を嘆いておられるのではないですか?」
「それは無論です!」
「では、二日後に聖女様も連れて是非法廷へ。その際誰が噂を流したのか、誰が法王に陰謀を企てているのかを調べて貰おう」
「は……はい」
「再度聞くが、本当に噂のように聖女様がこの国からいなく成った訳でもなく、教会におられるのだな?」
「そ、その通りで御座いますっ」
「それを聞いて安心した。では二日後待っておる。これにて閉廷!」
閉廷になったのだが法王は顔を真っ青にして動けずにいた。
歩くことも儘ならず、立っているのがやっとという感じだ。
意外と小心者なんだな。自分が表舞台でこんな目に遭うとは想像もしていなかったんだろう。
法廷騎士に連れていかれて行ったが、真っ青な顔の癖に歯を食いしばっていたのか血が口の端から流れていた。
これからを考えると頭が痛いのだろう。
大丈夫、その頭に少しの幸せを与えてやろう。
色ボケ爺には丁度いいだろうさ。
その夜、住民たちもテリサバース教会から離れていく頃、俺と彼はマントを頭から被り瞬間移動してきた。
彼は美しい美女のような顔を武器に妖艶に微笑み、誰もがうらやむ女性らしい歩き方で教会の中へと入って行く。
彼に頼んだのは二つだけ。
法王の味方の振りを少しの間だけする事と、男性だとは言わない事。
「頼んだぞ、ロスターナ!」
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もう直ぐ完結です!!
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