124 ニノッチとニノスリーの大活躍!
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――ジュノリス王side――
『緊急会議』後、内心疲れ果てつつも、「カラダ ゲンキ ハッスル!」「ココロモ ゲンキ チリョウ!」と物語で聞く魔王のような声で呪文を唱えると、いくつか薬を渡され、飲むと疲労感が無くなり心がスッと軽くなった。
「ありがとうニノスリー」
「アルジノ オチチウエ ダカラネ!」
「うむ、そうだな」
「オチチウエ ニノスリー アマリ ヤクニタタナイ カモ ダケド。 デモ ニノッチ イル! ガンバレ! ガンバレ!」
「うむ、ニノッチが息子を守ってくれると言うのなら心強い」
そう言ってレンジェンドモンスターだと言うニノスリーを撫でると気持ちよさそうにしていた。
そうだとも、毒見係等させるのだ。
もっと丁寧に扱わねば……。
ワシの命を守るために貸してくれたアツシには、本当に頭が下がる思いだ。
もし、妻が生きていてニノッチたちの治療魔法を受けていれば死ななかったかもしれない。
そう言えば――と思い、ワシの子種が治療できるのか聞くと、ニノスリーはフルフルと震え「ジカン タチスギテル……」とションボリさせてしまった。
つまり治療はもう出来ぬと言う事だろう。
残念な事だが……致し方ない。
「なに、今は王太子もいる。アツシがいる。次の世代はアツシ達に任せたのだからな」
「オチチウエ」
「それにそなたたちもいる。次の世代からはきっと、健やかなる未来しか訪れぬように努力しよう」
その為にも、命を狙われる事なく生きて行かねばならない。
アツシが聖女を保護してから三ヶ月がたった。最近では我が国にも例の噂が回っているらしい。
三日後に王の権限でテリサバース教会の法王を【法律裁判所】に出廷させることを決め、その文書を書き届けて貰った。その際一人のメイドが忍び込んだ事等露知らず、ロスターナが用意した二つの水筒からコップもついている不思議な水筒の蓋に飲み物を注ぎ、珈琲を飲んだ。
うむ、落ち着く。
「陛下、命を狙われているからとその様な」
「いや、アツシも持っているぞ。だがこれがまた何とも……中の珈琲が落ち着くのだ」
「そうなのですか」
「程よい飲み口と言うのかな。全く、ミスアーナの家から帰りたくない国王たちの気持ちが痛いほどわかる。あれだけ居心地がよいとついつい長居してしまいたくなるな」
とはいえ政務は沢山だ。
午前の仕事を終える為働き、アツシの部屋も出入りが激しい為頑張っているのだろう。
ミルクの量産体制はまだ完璧には進んでいないが、アイス作りが始まった。
冷凍冷蔵の魔石を山のように購入している為、アイス工場の稼働が始まったのだ。
アイス作りに関してはアツシが担当している。
氷を作る事も出来る冷蔵機能のお陰で、城下町にはかき氷屋が沢山出来たと聞いているが、きっと国民達は幸せに食べているのだろう。
無論、ワシも食べたくなると作って貰うのだが……。
――アツシのいない時代、いや、冷凍の魔石が出る前は【氷】とは大変貴重品であった。
夏の地方だからこそ尚更だが、その氷は今も城に納めて貰い、冷蔵用に使わせて貰っている。
その技術は無くしてはならないとアツシに言われたからだ。
「便利さは重要、だが元々この世界にある技術は残して行かねばならない」と口にしたアツシの表情は真剣だった。
故に、それに携わる者達の給料も王家が出すことになっており、彼らは職を失う事も無かった。
王家御用達となった氷職人達の顔は明るい。
それもまた、一つの救いの方法だったのだろう。
そんな事を考えながら政務をしていると、宰相のフィリップから昼の時間だと言われ、アツシがノックをして入ってくると共に昼を食べに向かった。
アツシの用意した出汁等スープの本は正に革命で、料理が更に美味くなった。
仲睦まじく本当の親子ではないが、一緒に歩きながら王族用の食堂へと入り、席に着くと料理が運ばれてくる。
一度毒見役が食べてから持ってくるのだが、その時には何も問題は無かったそうだ。
しかし――。
「コレトコレトコレ ダメ――!!!」
と、スープ皿とメインの肉料理、そして飲み物をスサァ――ッという勢いでワシとアツシの前から違う席に移し、ニノッチが飛び上がると一人のメイドをパァァアアアン! と叩き飛ばした!
メイドは訳も分からず混乱しているようだが、ニノスリーもシュルシュルッと手を伸ばしスープに手を付けると……。
「シビビ…… ソクシ ドク ハイッテルネ!」
「ニノッチカラ ニゲラレルト オモウナ! コノ! オオバカモノメ!!」
そう言って鞭のように手を出してシュパパパパン! と叩いているニノッチに、ニノスリーが近寄りメイドの元へと向かうと「製薬と解呪スキル ハツドウ。 コレヨリ ドレイノイン ケシマース!」とメイドに雨のように輝く水を掛けると光がフワリと舞い、メイドは声を上げて泣き始めた。
先ほどまでニノッチに叩かれ続けても泣かなかったメイドが声を上げて大泣きし、アツシがニノッチの動きを止めた。
「申し訳ありません陛下! アツシ様!! 奴隷の印まで消して貰って本当に……ですがこうする他、家族が助かる道が無かったのです!!」
「落ち着きなさい。誰か、その娘を席に座らせ水を飲ませよ」
そう言うとメイドたちは直ぐに動き女性を椅子に座らせ水を用意し、泣きながらメイドは水を飲んで少しだけ落ち着いたようだ。
此処まで取り乱すとは……家族を守りたい一心だったのだろう……。
「ニノスリー、彼女の心が落ち着くようにして貰えぬか?」
「イイヨ? デモ オウサマタチ コロソウト……」
「理由があっての事だろう。それを聞きださねばこれからも我々は命を狙われ続ける。だからこそ、頼めまいか?」
そう告げるとニノスリーはプルンと頷き女性に治療魔法を掛けると、心臓を抑えていた女性は少し落ち着いたようで深々とこちらに頭を下げて来た。
どうやら元々はテリサバース教会のシスターだったらしい。
テリサバース教会では身分の低い者もシスターや神父になれる。
だが、それは表向きで生活に困窮している家族に声を掛け、見目の良い者や教会に必要なスキルを持つ者はシスターや神父にし、他の家族はテリサバース教会の地下に連れていかれるそうだ。
そこでは毎日のように様々な実験が行われており、法王はこの毒薬を作る為に多くの住民を苦しめ殺して行ったのだと言う。
――法王がそのような事を。
それは、絶対にあってはならぬ事であった。
「それで、ワシとアツシの食事に渡された瓶の中身を混入せねば、そなたの家族が毒薬の餌食になると?」
「はい。……法王の言う事に逆らえないように奴隷の印を押されました。法王以外と口をきいてはならない、王と王太子の食事に得体の知れない何かを混入するようにと」
「それで先ほどまで喋れなかったんですね」
「だがニノスリーのおかげで奴隷の印が消えて、喋れるようになったのか…」
「はい。――法王に渡されたのは此方です」
そう言って小さな瓶を胸元から出して置いたので、警備兵が瓶を回収すると、直ぐにどんな毒を作ったのかの調べが始まる事となった。
即死の毒であることは伝えてある為、中の成分を調べる事になりそうだ。
「君の家族を救いたいが直ぐには難しい。他に捕らわれている者がいる以上慎重に行動しなければならない。そこは理解してくれ」
「っ!」
「君を奴隷に落としてまで我々を殺したがっているのは法王であることは、逃げ出した聖女様から聞いている。それでも君が刑を受ける事は免れない。だが奴隷であった事と素直に話してくれた事で君の刑は減刑出来るだろう。――君の家族が見つかれば必ず君に会わせよう、これは法の番人として君に約束する。」
「ありがとうございます。……あの、聖女様は生きて?」
「聖女様も色々とお辛い生活を強いられていたようだ。それもあって、今は保護されている。無論我が国ではない。何処の国にどうやって保護されたのかは言えぬが、聖女様は安全に過ごされている。」
「そうなのですね……てっきり法王に殺されたのかとばかり」
「法王は陛下と夫が死んだら、自分がこの国の国王になって、私を妻にして世継ぎを産ませ、聖女には次の聖女を産ませるつもりだったらしいわよ」
「法王が!?」
「気持ち悪いったらないわ。私、会わないから」
「ああ、カナエは法王に会わなくていい」
「気持ち悪いだろうからな」
思わぬ言葉だったのだろう、「気持ち悪い」と呟いた元シスターの言葉にその場にいた全員が頷いた。
法王はガリガリの姿で見た目は80歳と言われても頷ける60代で、悪鬼のような顔をしている。
法王と名乗るには見た目もさることながら諸々悪かった。
「さて、明後日には法廷に来るように伝えているが、どうしてくれようか?」
「まずは軽い挨拶から行きましょう。俺も参加します」
「うむ、二人揃って参加としようか。だが直ぐ追い詰めるのも面白くない。ジワジワと追い詰めつつその間に法王の気を引く物か人物がいればな…」
「それならば――」
その後口にしたアツシの言葉にキョトンとしてしまったが、それはかなりいい案のように思えた。
色ボケした法王には大打撃を与えることが出来るだろう。
「うむ、それは良いかも知れんな」
「ええ、とてもいい案だと思います」
こうして、法廷がある日の夜にはとある人物を教会に送り、ほんの僅かな時間だけのある意味夢で、事情を知っていればある意味地獄を味わって貰う事にしたのだ。
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とても多くてすみませんm(__)m