121 【聖女失踪】と聖女保護。
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「民の間でも今の法王は見た目もそうですが『悪の化身』『金の亡者』と呼ばれているんです。聖女様が心配ですね」
「結婚式で会ったくらいだが、ベールで顔は隠れていたが、まだ16歳くらいの少女だったぞ」
「酷い目に遭ってないと良いですが」
その翌日――【聖女失踪】の新聞に俺とジュノリス王は茶を噴き、一体何が起きてるんだと頭を抱えることになる。
しかし聖女失踪……大きな新聞の見出しにあるこれは何を意味するのか。
あの聖女が失踪しそうには見えなかったが……。
そう思っていると水野から連絡があり「困ったことになっているので来て欲しい」と連絡があり、俺とカナエ、そしてランディールとメルディールは治療院へと朝から急いだ。
早朝と言う事もあり街中に冒険者の姿は無かったが、あちらこちらから「聖女様―!!」と叫びながら走っているテリサバースのシスターや神父の姿があちらこちらで見かける。
「異様な空気だな」
「本当ね」
「聖女失踪は本当の様ですね」
「でも何故失踪なんてなさったんでしょう」
「聖女が教会から逃げるって余程の事がない限り考え付かないが」
そう会話しながら治癒院に到着すると、水野は「先生こっち!」と俺をカウンターの中に案内した。
するとそこには一人のシスターが蹲っており、長い前髪の所為で顔は見えないが――。
「……まさか、聖女様?」
「アツシ様!」
まさかの聖女様が何故治癒院に!?
驚きを隠せないでいると聖女様は蹲ったまま俺に手招きするので俺もしゃがみ込む。
すると、何でも法王の暴走が止まらず、自分もついて行くことは不可能だと感じ、コッソリ夜中に抜け出してきたのだと言う。そして――。
「私をストレリチアで保護して貰えませんか!? 暫くジュノリス大国から姿を消すのです」
「それはまた……どれだけ俺に被害が来るかはご存じですよね? 聖女様を隠しているなんてバレたら宗教戦争ですよ?」
「……知っています。ですが私がいない間はあなた方に危害を加えることはしないでしょう。お願いです、私を保護して頂けませんか?」
「余程の理由があるんですね? その理由は後で聞かせて貰えるのかしら?」
「はい! 必ず!」
「アツシさん、奥からシスターが来ます。こちらに来そう」
「アツシ様!」
「直ぐに移動します。カナエはランディールとメルディールを連れて来てくれ」
そう言うと俺は聖女様を連れて瞬間移動の魔導具でミスアーナの家へ転移した。
俺に続いてカナエがランディールとメルディールと一緒に瞬間移動してきた。
きっと水野はシスターとやり取りして出て行って貰うつもりだろう。
早朝に俺達が来た事で朝ごはんを作っていたロスターナとテリアは驚いていたが、シスター服を着た女性を連れてくるとは思っていなかったようで「あら、どうしたの?」と心配そうに此方にやって来た。
「実はこちらの方は訳アリでな。名前は……えーっと」
「ハルゥと申します。暫くの間お世話になります」
「ハルゥちゃんね。朝ごはんはまだよね?」
「はい!」
「訳アリなら仕方ないわよ~。ハルゥちゃんの分もご飯作ってあげるから、そのダサいシスター服じゃなくて可愛い服を着ましょう? カナエちゃん、ハルゥちゃんに可愛い服用意してあげてくれない?」
「そうね……。こうなったら仕方ないっか! ハルゥ様、部屋も用意するからついて来て貰える?」
「はい!」
そう言うとメルディールと共に二階へと上がって行ったが、ランディールはロスターナを見て頬を染めているが……。
「何と美しい」
「うん、男性だけどな」
「え!?」
「すまん、ここに来る男性の皆さんはこの道を通るんだ。ロスターナを見て大体一目惚れするんでな」
「くっ! あの美しさと色気があるのに男なんて!!」
僅かな希望なんて与えないぞ。
悪いがロスターナは女性が好きな美女……じゃない、美男だ。
そして男であることに誇りを持っている!!
少々扱いに困るが、慣れれば平気だ多分!!
「しかし、ここが王太子の持っている本来の拠点と言うか、家ですか」
「ああ、ノスタルミア王国の首都ミスアーナにある家だ」
「先生達はご飯食べてきたの?」
「ああ、今日は城で食べて来た」
「そうだったのね、それじゃ飲み物を用意しますね、先生と護衛の人?は、珈琲でいいかしら? 朝から先生達がいるのは久々だから皆も喜ぶわ」
「ん――……そうだな。珈琲で頼む。色々聞かねばならないこともあるし…、というか菊池たちはまだ起きてきてないのか」
「昨夜は抜き打ちテストがあって……。赤点取った子達は補習があったの」
「なるほど。だが菊池と井上は」
「男同士で仕事の話で盛り上がっていたわ」
「そうか、まぁそう言う事もあるか」
「そろそろ私起こしてきますね」
そう言うとボコボコになった鍋とお玉を手に階段を上がって行くテリア。
暫くするとカンカンガンガン!! という激しい音がし始め、子供達のバタバタする音と菊池たちの声が聞こえてくる。
「テリア耳が痛いっす!!」
「早く起きて下さーい! 顔を洗ってスッキリしましょうー!」
「ねーちゃん煩いよ! 起きたから!!」
「はいはい、サッサと着替えて洗濯物は何時もの所にねー? 起きた順番に顔を洗ったりと身支度してくださーい!」
ガンガンカンカン!!
その音は5分程続き、子供達や菊池たちはバタバタと階段を下りて洗面所に行ったようで、笑顔でボコボコになった鍋とお玉を手に降りて来たテリアに、朝はこんな感じなのかと頭を抱えた。
「なんかすまんな、テリア」
「ふふ、ここでの日常ですよ。先生がいないと皆腑抜けるんだから。困ったものですね?」
「本当にねぇ? もっとシャキッとして貰わないと」
そう言いつつエプロンを付けて料理の乗ったお皿を配膳し、大きな寸胴鍋に入れたスープをドンッと机に置いてスープ皿に野菜たっぷりスープを入れていくロスターナ。
俺がいるとは思わなかったのか「先生! おはようっす!!」「おはようございます!」と声をかけてくる面々に挨拶をし、俺達は王たちが座って『国の報告会』をするソファーの方に座って暫く待っていると、ロスターナから珈琲を用意され、ランディールと共に飲む。
朝から子供たちは食欲旺盛らしく、ニノとニノツーもやってきた。
ニノとニノツーは職場で寝るのが好きらしく、猫用のベッドを用意してやったらそこで寝ているらしい。
「アルジー!」
「オハヨ アルジー!」
「おはようニノにニノツー」
そう言うと二匹も今から朝ごはんらしく、ロスターナから飴玉を貰って食べていた。
暫くするとハルゥ様とカナエ達が降りてきて、すっかりミスアーナに馴染んだ服を着て来た。
「はい皆さーん。暫く我が家で面倒を見る『ハルゥ』様です! 仲良くしてね?」
「あの……ハルゥです! 炊事洗濯は出来ます! あの……それくらいしか出来ませんが」
「あらあら、掃除も洗濯も大事な事よ? ふふ、一緒に料理を勉強しない?」
「――はい!!」
「じゃあロスターナはハルゥ様の護衛も込みでお願い出来るか?」
「あら、私結構強いけど相手が死なないかしら?」
「ウサギのキックは痛いよな」
思わずスラリと伸びた長くてアスリート的なロスターナの足を見てしまったが「エッチ」と言われて苦笑いが出た。
「相手が死なない程度に蹴りはOKとしよう!」
「分かったわ」
「ハルゥ様、少し鑑定させて貰っても?」
「はい」
「その間にご飯にしましょう?」
「はい! ロスターナ!」
こうして朝ごはんを食べ始めた皆にホッとしつつハルゥ様を鑑定する。
すると――。
【ハルゥ(テリサバースの聖女):光魔法・聖魔法・生活魔法スキル8・料理スキル5・悪意察知8・危険察知9・未来を予測する能力(現在テリサバース教会から逃亡中)・呪いのアイテムを着用中】
と出て来た。
逃亡中なんだ……いや、それもそうか。
待て待て、その前に呪いのアイテム着用中ってなんだ!?
「こんな豪華な朝ごはん初めてです! それにとっても美味しい!」
「うふふ、シッカリ食べてね?」
「はい!」
そう言ってロスターナと仲良く語り合うハルゥ様。
さて、それも後で話し合いだが……取り敢えずジュノリス王には連絡しておくべきだろう。
そう思い部屋を出て応接室にて陛下に連絡すると、10分後に陛下がやってきてハルゥ様が本当にいることに息を飲みつつも、何時もの席に座りロスターナに珈琲を用意されると、お礼を言って飲んでいる。
そして小さく溜息を吐き……。
「アツシ」
「ええ、分かっております」
「そうか……後で三国の王に緊急召集を」
「分かりました」
そう言うと俺も溜息を吐き、これは大きな問題になったなと頭を悩ませたのは言う間でもない――。
読んで下さり有難う御座います!
連載頑張れ! とか 続きを楽しみにしてます! 等ありましたら
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とても多くてすみませんm(__)m