115 孤児院と終の棲家を作ったものの、俺達に暗雲が……。
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「全く仕事が早いなお前達は」
「ははは、ノスタルミア王国でストレリチア村を作った時が一番辛かったですからね……これくらいは平気です」
「そ……そうか」
「あの時は私も先生も寝る間を惜しんだわね」
「ああ、本当に気合いでなんとかなるのも若い内だけだなと思ったよ」
「もうアツシさんったら!」
「「ははははは!」」
そう笑いあう俺とカナエを見て何処か遠い目をしていたジュノリス王がいたのは、言うまでもない。
そして翌日、俺達はランディールとメルディールを連れて南地区へと向かった。
確かに暑い。
南は結構暑いんだなと思いながらも進み、予定地まで向かうとかなり広い土地がズラリと並んでいた。
これなら庭も作れそうだし子供達が遊ぶ分には問題は無さそうだ。
遊び道具も色々用意しておこう。
200人が入る孤児院となるとかなり大きな建物になる為、火災などは俺の拠点では起きない為大丈夫だが、窓からの転落防止等も用意しなくてはならない。
子供に配慮した作りで、出来れば木製の大きな家が良い。
そんな事を想像しながら四階建ての大きな学校をイメージして作り上げると、庭には怪我の少ない遊具や砂場があり、日よけに水飲み場も設けた。
無論綺麗な水がでる拠点ならではの不思議システムだ。
外遊び道具を入れる倉庫も用意してある
孤児院は一階に大きな玄関があり、靴箱が並んでいる。
一階には風呂場と食堂と厨房がある。
風呂場は小さな子供が溺れないように浅いお風呂場と銭湯と同じ深さのお風呂場がある。勿論男女別だ。
食堂と厨房はストレリチア村の食堂と似た作りだ。ただ食事エリアは子供達がメインなので、テーブルや椅子の高さ、食事を受け取る場所や食器を返却する場所など全体的に低めに作られている。厨房は勿論大人の高さだ。
ちなみに孤児院には18歳未満まで暮らせるらしい。結婚が18歳から可能なのでソコまでは…っと言う事らしい。
二階は幼い子供達用で年齢別に別けられた部屋。
そこには粉ミルクや哺乳瓶と言った備品も多く用意し、ウォーターサーバーも各場所には用意してある。
子供たちの喉が乾けば何時でもコップで飲めるようにしたのだ。
無論ミルクとしても使えるように温度設定もシッカリ整えたウォーターサーバーだ。
三階は10歳を過ぎた子供たちが過ごす部屋を作った。無論男女別だ。
トイレや洗面スペースも各階に何カ所か用意している。
四階は職員たちが集まる職員室と夜勤の職員が仮眠出来る仮眠室や職員用の風呂場も男女別で用意した。保健室と病室も作りそこは無菌室だ。
粉ミルクと哺乳瓶は妃殿下からの品として出す為、定期的に俺達が来れるように扉も繋げた。
この世界にもテリー達が言うには哺乳瓶と粉ミルクはあるそうなのだが、値段が高いらしい。
取り敢えずはこれで様子を見て、都度話を聞こうと思う。
次は隣に終の棲家を作る訳だが、同じように作らず三階建ての横長の建物を作った。
一つ一つは個室となっており、プライベート空間は大丈夫で、重篤な患者は一階を中心に。
また、お風呂も一階に介助用の椅子も用意して入れるようにした。
無論風呂場は広く、寝て入る風呂場は動けない老人達用で、動ける老人達は転倒防止の手すりのついた場所から風呂に入れるようにした。
床や足元は滑らないようにも気を付けた。
風呂の入り方もちゃんと書いてあるので大丈夫だろう。
安定の銭湯仕様と一緒でお湯や水は常に綺麗なモノになる。
トイレも充実していて、バリアフリー仕様の手すりが多い建物にした。
これは孤児院も共通してだが、階段は無い。転移の扉で各階を移動して貰う仕組みだ。エレベーターの導入も考えたが何かあった時メンテナンス出来る者がいないから諦めた。空調は冷蔵庫や冷凍庫で経験をつめば魔導具師でメンテナンス出来るようになると思うから採用している。
食堂と厨房も完備しており、時間になれば朝昼晩と食べられるようにしてある。
二階にはまだ動ける老人達の部屋となっていて、孤児院と終の棲家は扉一つで庭は繋がっている。
互にボール遊び等して貰えればいいが。
「空調も問題ないな」
「ええ、薄っすら汗をかくけれど夜はこの分だと寝苦しさはないと思うわ」
「南区でも夜は寝苦しいのを何とかしたくてな。夜になると空調が寝やすい気温にまで下がるようにしてみたんだ。これは孤児院もそうだが」
「至れり尽くせりの孤児院と終の棲家ですね……」
「この様な造りを考えられるのが素晴らしいと思います」
「俺たちの世界でも、昔は姥捨て山っていってな? 老人たちを山に捨てていた時代があったんだ」
「山に捨てるんですか!?」
「ああ、そう言う時代もあったらしい。それから時代が進んで、老人たちが最後まで安心して住める老人ホームと言う施設が出来て、安心して最後を迎えられるようになった」
「良い時代になったんですね」
「まぁ、そうだな! 言いたいことは色々あるが、戦争が無い国だと言う事だけは幸せな事だと思う」
そう真っ直ぐ俺が口にすると、カナエを含めた三人が「戦争だけはね」と呟き、俺は振り返り笑顔見せると「だが、この島国でも戦争だけはもう無いだろう!」と笑顔を向けると、三人はホッとした様子で笑顔を見せた。
少なくとも俺が生きている間はきっとない。
その先は分からないが、俺が亡くなった後の場合、シュウなら何とかしてくれると思う。
きっとあの子は賢王となる。
だからきっと大丈夫だ。
――国を挙げてやらねばならない第一段階までは終わった。
俺が出来る事など後は支援位だが、土台は出来たのだ。
「よし、帰って陛下に報告だな!」
「「「はい!」」」
こうして翌日には国の孤児たちが孤児院へ、そして道端に捨てられた老人達は終の棲家へと運ばれ支援が始まった。
銭湯に始まり学校や治癒院、それに孤児たちの孤児院に老人達の終の棲家と、次々に国民の為に働いたジュノリス王と、発案した王太子と付き添った王太子妃には人気が集まり、次の未来は明るいと誰もが口にするようになるのに、そう時間は掛からなかった。
それと同時に――、本当に困っている人々を助けるのは【法の国のジュノリス王とその王太子である】と言う声はテリサバース教会にも届き、黒い渦を作り始める。
「テリサバース教会って、弱い立場の人間には何もしねぇよな」
「金持ちばっかりにヘコヘコしやがって」
「それで何が神様がーだよ。一番困っている人を助けないで何が宗教だってんだよな?」
そう言う国民の声は根強く、大きくなっていくうちに――テリサバース教会内では静かに、静かに俺を陥れる為に何かできないかと動き出す者たちが増えていくことになるが、この時俺はその事に全く気付いていなかった。
「これで王太子も安心して子作りが出来るだろう」
「いえ、まだやる事はありますよ?」
「なに!?」
「ノスタルミア王国での漁業開発がまだですし、ジュノリス大国のストレリチア村もまだですし」
「お前達は良い加減少しは休むことを覚えたらどうだ!?」
義理の父であるジュノリス王にそこまで言われるとは思わず「心外!」と口にした俺だったが、ジュノリス王は苦笑いしつつ「まぁ、そこがお前らしいのだがな」と笑っていたのが、とても印象的だった。
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