107 実はこの大陸は島国であることを初めて知る。
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本当に、そう言う人達がいるからこそ生活と言うのは成り立つのだと頷きつつ心の中で感謝を告げ、ジュノリス城に戻ると、騎士団であろう人物に声を掛けられた。
「王太子殿下!」
「どうしました?」
「城の老朽化していた風呂場を素晴らしい物に変えて頂きありがとう御座います!」
「ああ、疲れは取れましたか?」
「ええ、不思議な風呂場ですね……。打ち身や打撲も痛みが減るんですよ」
「ははは。とは言っても傷には対応していませんからね。ちゃんと怪我をしたら医務室で見て貰って下さい」
「色々な配慮、本当に痛み入ります」
「こちらこそ、あなた方がいるからこそ安心して生活が出来るのですから、これからもよろしくお願いします」
「はい、必ずや!」
「では俺は陛下に此れまでの仕事の報告をせねばなりませんので失礼しますね」
「王太子様もお仕事にいっておられたのですか?」
「ええ、此処の所休みは無いですね。只管走り回っていると言う感じでしょうか?」
「国をより良くする為に……」
「それもありますが、そこで働く人やそこで生活する人の【幸せ指数】は上げたほうが良いと思うんですよ」
「幸せ指数……ですか?」
思わぬ言葉だっただろうか?
人間というか、国がまさにそうだが【国民の幸せ指数】と言うのはかなり大事だと思う。
幸せ指数が低ければ経済は沈滞し回らない。
ならば、幸せ指数を上げていけば少しは変わるのではないだろうか。
歴史上でも平和は基本だが、国民の幸せ指数が高い時代は国が富んでいたと言うのがある。
俺はそれに基づいて動いているんだが――。
「誰だって幸せだと感じた方が、生き甲斐や、やり甲斐と言うのは出てきやすい……。そう俺は思いますし、それが俺の信条でもあります」
「……」
「その為の努力でしたら惜しみませんよ」
そう言うと「では失礼します」と口にして陛下の元へと向かう。
その言葉が後に「王太子殿下は誠なる指導者である」なんて騎士たちを通じて外に流れ出す事になるのだが、それはまだ先の事で――。
ジュノリス王が仕事をしている執務室をノックし、中に入るとランディールが俺の仕事の事を既に報告していたようだが、再度俺から詳しい話を聞く事となり、【モンバル】シリーズについて色々と詳しい報告をすると、「鑑定が出来るからこそ分かった点だな」と頷きつつ、今冒険者たちに命令し国を挙げての【モンバルモー】捕獲作戦中らしく、今後どれだけ増えるかによっては牛舎を増やして欲しいと言う事だった。
それは全く構わないが、まずは冷蔵と冷凍の出来る家電……冷蔵庫を作り、各家庭に普及させたり、業務用冷蔵庫も開発して店や大きな商店が持つことが出来るようになった方がいいのではと言う話もすると、それはジュノリス大国の魔道具師たちに王命を出し、一気に作る事を約束してくれた。
「しかし、アツシ殿は本当に博識ですね。貴方の居た世界では当たり前の物だったのですか?」
「そうですね、当たり前の物です」
「馬車よりも早い乗り物もあるとか」
「ええ、ありますね」
「やはり異世界と言うのは発展しているのですねぇ……」
「俺達からすればこちらの方が異世界ですよ。見た事もないモンスターはいますし、色々謎も多いです」
「謎と言うと?」
「ここは四つの国が纏まって一つの四季、春夏秋冬となっていますが、それもまた謎ですね。船があるのなら海を渡れば違う世界があるのかとか考えてしまいます」
「なるほど。そう言う話は聞かれたことが無いのですね」
「そうですね」
確かにこの世界に来て謎だとは思っていたが、その辺りは誰も教えてくれる人が居なかったというか、多分当たり前の常識なのだろうと思って聞く事を躊躇っていたのだ。
この機会に聞けるなら聞いておきたい。
「この四つの国は島国なんですよ。無論船を使えば他の大陸や島々もありますが、いかんせん此処は特殊な島国な為、島の外から入る事が出来ないのだとか」
「そうなんですか?」
「一度だけ入ってきた国があるが、その国も二度目は無かった。その国が持ち込んだのがテリサバース宗教だ。元々四つの国は特に信仰している神もいなかったが、彼等は神は一人であるべきだと言う考えが強くてな。煩いので四つの国は一つの宗教にする事を承認した。だがそれが絶対と言う訳ではないのだ」
確かに宗教問題は何かと戦争だの問題になりやすい。
それにその信仰が強い人たちは他の宗教等絶対に受け入れない事も知っている。
色々紆余曲折あって今の形になったのだと理解は出来た。
だが、陛下曰くテリサバース宗教を絶対に信仰しなくてはならないと言う義務はないらしい。
理由を聞くと、所謂孤児院のある教会だが、そこをテリサバース教会がしているかと言えばそうではないらしい。
そう言う所こそテリサバース教会がすべきなのだが、彼らは金持ち相手の商売の方が好きなのだとか。
故に、本当に信仰している国民は四つの国でも少ないらしい。
「法の国ではあるにはあるが、四つの国を纏める為に最も古い国であるジュノリス大国が三つの国を法で裁くと言うのは昔からある事なのだ。テリサバース教会には法王と名乗っている人物はいるが、実際に三国を裁く事が出来るのは、古来よりジュノリス王だけだ」
「そうだったんですね。その割には俺に対してかなりアレコレ言っていましたが」
「異世界人でこれだけ動き回って三つの国をまとめ上げる者がいるとは思えなかったのだ。まぁ実際にはいた訳だが。だからこそ法の国である王太子に是非とも欲しくなったのもある。だがそなたは賢いが無謀な所もある。今までは小さき場所を守る事で必死だっただからこそだろうが、これからは国の次の王として大きくならねばならん。それは苦痛を伴うぞ」
真っ直ぐ俺を見つめてそう口にしたジュノリス王に俺は強く頷き、幾ら俺が賢王だなんだと言われても、結局は一人の人間であることには変わりなく、また一人の人間故に間違いだって犯す事もあるのだと理解している。
全てを何でも出来る人間。完璧な人間なんて早々居る訳ではないのだから。
だからこそ、自分が常に正しいという考えを持つ事は危険だし、間違いを指摘してくれる友人や支えとなってくれる人物と言うのは大事になる。
俺にとってそういう人が多いに越したことは無いし、彼らの為ならいくらでも動ける。
それに――。
「苦い思いなんて嫌程してきましたよ。あちらの世界では色々ありましたしね」
「そなたも苦労が耐えんな」
「胃の腑に穴が開きそうな程のストレスなんて事はよくありましたし、柔軟な考えが出来ない大人も子供も凄く多かったと言うのもありますね。何に対しても【こうであるべき!】と言う自分の中の決まりを押し付けてくる者は嫌でもいますし」
「まぁ確かにそれはあるな」
「俺はそう言う考えは基本的に受け流すタイプなんですが、多少気を抜いて柔軟な考えが出来るようにしておかないと、いざと言う時に困るのは自分ですからね。俺は自分の首を自分で絞めたくはないです」
「アツシ様らしいですね」
「そうでしょうか? でもチャレンジは好きですよ。商売を始めたのもそう言う意味もありますし」
「それがストレリチア村と言う素晴らしい村にまで発展したと」
「俺だけの力では無理でも、助け合う事が出来る相手がいれば以外と乗り越えられるのだと思います」
そう素直に伝えるとジュノリス王は優しく微笑み「そなたは素直だな」と言って笑った。
確かに素直と言えば素直かもしれないが……。
「だが、そう言う人間だからこそ付いて行きたいと思う人間も居よう。今後も頑張ってくれ」
「ありがとう御座います。後は式まではゆったり過ごしつつ決める事は決め、今後の構想を練る時間にしても宜しいでしょうか?」
「ああ、まだ噂は流し切れてないようだからな」
「分かりました。では暫くは自由時間と言う事で」
こうして執務室を出ると王太子の部屋に戻り、ミスアーナにある拠点に帰りロスターナに洗濯をお願いすると「よく働いたのね~」と言われたが、嫌味一つ言わず洗濯してくれて助かった。とてもありがたい。
明日からは少し自由時間だ。
色々回ったり考えたりしたい。
式までの時間は自分への少しのご褒美時間として使おうと思ったのだが――。
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