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出会い

少女が懸命に走っている。


雨上がりの森の中、一行の足跡が水しぶきを散らす。湿気のある空気を吸い込みながら、少女は冷静を保つために努力していた。


少女のマントが森の枝に引っかかり、濡れたマントは瞬く間に裂けてしまった。しかし、彼女は裂かれたマントを気にせずに前に進んでいく。湿った布の破片はすぐに水たまりに消えてしまった。


裂かれたマントの中から、少女の銀髪が覗いている。


「見つけた!そっちだ!」


荒々しい叫び声が響く。暗い空、湿った空気、滑りやすい地面。背後で追いかけてくる足音と怒号が少女の神経を焼き尽くす。少女はめまいを耐えながら、ただただ前に足を運ぶ。息が荒くなっていく。


パチン。


一閃する稲妻が彼女の耳際を通り過ぎる。少女は熱を感じ、焦げたにおいもわずかに感じ取った。しかし、彼女は振り返ることなく、ただただ走り続ける。激しい呼吸がますます荒くなっていく。


「リリアンナ様!前へ進んでください!こちらは私が阻止します!」


「っ…!」


背後で剣が交差する音を聞きながら、少女は歯を食いしばり、部下の助言に従って前に進む。


しかし、前に進んだ先で道は遮られていた。


一人の仮面を被った人物が木の陰から姿を現した。彼の手には寒々しい光を放つ長剣が握られていた。少女は足を止め、少しずつ後退し、目の前の敵との距離を保とうとする。


彼らはただの野盗ではない。心の焦りを隠しきれず、銀髪の少女、リリアンナ・ヴァンダビルトは身につけていた短剣を取り出した。緊張と疲労で彼女の体は非常に重く、短剣を握る手もわずかに震えている。


首都を出発してから、この一団を夜昼を問わず追いかけてきたのは、既に4日目に入っていた。


事件は瞬時に起こった。騎士団のパトロール範囲を抜けてニューワルド領に入った途端、リリアンナの一行は待ち伏せ攻撃を受けた。控えめかつ便利を期したため、ごく少数の護衛しか同行していなかったのが敗因となった。


4日間、リリアンナは戦いながら進み続けてきた。一行は領都に救援を求めようとしたが、そのルートは巧妙に遮断されていた。補給と睡眠の欠如、傷だらけの一行は最後の抵抗としてこの魔物が跋扈する森に進むしかなかった。


リリアンナは深呼吸し、ゆっくりと息を吐き出した。最後の勇気を振り絞り、彼女は短剣の先端を敵に向けた。


仮面を被った相手の表情は見えないが、リリアンナは嘲笑のような視線を感じ取った。迫りくる敵に対して、リリアンナは退却するしかなかった。彼女の背中はすぐに後ろの木に触れ、行くあてがなくなっていく。


自分の命の危険が迫っていることに気づいたリリアンナは、残された力を両手と両足に注ぎ込んだ。なるべく大きな目を開いて、目の前の敵の一挙一動を見逃さないようにした。


その時、小さな金色の輝くものがリリアンナの視界を引きつけた。


どういうわけか、通常の視力しか持つはずのリリアンナは、その物体の細部まで見えるのだ。


それは金色の指輪だった。金色で、細かい模様が刻まれた指輪。


指輪の上には、フラスコに入った太陽が描かれていた。


「助けて...助けてください!」


脳が完全に理解する前に、乾いた口が助けを求める声を発した。


「私はヴァンダビルト家の長女、リリアンナ・ヴァンダビルトです!ここで、フーラズ家に助けを求めます!どうか、私と私の部下を助けてください!」


そして、その頼みが届いた。


リリアンナが疲労困憊で視界がぼやけていたのかもしれない。黒い髪の少女が突如、まるで幻のように仮面の人物の後ろに現れた。少女は漆黒の髪と、整然と揃った前髪の下に赤い瞳を持っていた。


一振りの剣が仮面の人物の胸から突き出る。飛び散る血がリリアンナの青ざめた顔にかかった。地面に座り込み、濃厚な血の臭いがリリアンナの胃と脳を乱した。


「私のシマを荒らしとは、いい度胸だな。」


片手剣の血を横に振り払い、黒髪の少女の朱唇が微かに開いた。


「いくぞ。鏖殺だ。」


再び怒号と戦闘の音が響き渡り、リリアンナは意識を失った。


§


「地獄のような光景だな。」


戦場の中央に立ち、アデルは無関心に剣から血を振り払った。


「この地獄を作り出した人から言われると、聞きたくないな。」


周りを見渡し、ハンスはタバコを点火した。深く吸い込むと、紫煙が心に染み込むようだった。彼は長い息をついた。


二人の足元には、倒れた盗賊たちがいた。あちこちに横たわり、一向に動かない。雨の後の小さな水たまりには、暗い赤い血痕が浮かんでいる。森の中にはうめき声が微かに響いている。


「オジさんは、お嬢の甘酸っぱい*ラブコメ*を間近で観賞するためについてきたんだ。結果は甘酸っぱい恋愛味を味わえない代わりに、血の臭いをつけた。辛いね。マジで。」


ハンスは大げさに肩をすくめた。


「森の中で二人の若者が散歩すると何かしらの情愫が生まれると思ったけどな。お嬢が剣を振るう鬼のような姿を見ると、百年の恋も冷めちゃいそうだ。」


「私が鬼のようなんて、失礼極まりないわ。私は鬼より強い。」


「何を言っている。ったく。乙女らしくないな、あんた。『鏖殺』と言い出した時、俺のキンタマが縮んじゃったよ。」


「お嬢様の前で下品な言葉を使わないでください。」


「おっと。すまねぇ。」


「君たち三人は本当に余裕がありますね。僕の足がすでにガクガクしてきたというのに。」


ベルは地に倒れている盗賊たちを見つめ、顔色は青ざめていた。


「この連中、普通の盗賊じゃないわね。ハンス、まだ生きている奴がいないか確認して。何か情報を聞き出せるかもしれないから。」


「はいよ。お嬢は人使いが荒いな。」


「エリナ、他の襲撃された人たちの様子を見てきて。」


「承知しました。」


アデルは片手剣と短剣をしまい、木の幹に寄りかかっている銀髪の少女に近づいた。


それは美しい少女だった。


木漏れ日に照らされた銀髪は、宝石のような青い光をかすかに反射している。閉じたままの目には長いまつ毛がある。淡い青い光を帯びた髪の一房、鋭く曲線美のある目尻、繊細な五官。豊満な胸元が少女の呼吸と共に微かに揺れる。幻想的な容姿は太陽の光の中で輝かしく、しかし殺伐とした現場とはまったく調和していなかった。


アデルは少女の頬から血痕を拭いた。少女が握りしめていた短剣に目をやり、アデルはそれを調べた。


「バラと竜の紋章。間違いなくヴァンダビルト家のものだね。長女なら王子と婚約しているはずだ。どうしてこんな場所に逃げてきたのかしら?」


アデールはため息をついた。


「嫌なわね、陰謀の臭い。これでまた忙しくなっちゃったわ。」

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