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短編 16 タイムジャンパー

作者: スモークされたサーモン


 最初のタイトルは時間跳躍でした。なんのこっちゃ? 





 ある日のこと。姉に階段から突き落とされた私は力に目覚めた。


 いや、落ちた後で力に目覚めたのだ。


 なんかこう、不思議なパワーに目覚めたのだ。まぁ目覚めた後で死んだけど。


 だから特に意味は無かった。


 薄れゆく意識の中で姉の高笑いを聞いた気がする。


 そして気付くと私は生まれ変わっていた。


 いくらに。


 まさかの魚卵である。


 まぁこの場合『鮭』に生まれ変わったと言えるのだろう。


 すぐに正油漬けにされてパッケージングされたけど。


 そして発泡スチロールに入れられて出荷された。最後は美食家のデブに食われて儚い『いくら人生』は終わりを迎えた。


 そしてまた気付くと今度は別のものに生まれ変わっていた。


 業務用洗濯機である。


 ピカピカのおろしたてで工場から出荷……される前に忍び込んだ強盗団に盗まれた。どうやら生まれた地域は治安が良くなかったようだ。


 最終的に爆弾を中に詰め込まれて船に乗せられる事になった。中々に刺激的な人生である。腹の中の爆弾が爆発する前に船は沈没。何が何やら分からないうちに『洗濯機人生』も幕を閉じた。


 そして気付くとまた別のものに生まれ変わっていた。


 今度は当たりだと思う。


 なんと幼女……の頭にある髪留めである。そこは幼女で良かったのに。

 

 可愛い感じの髪留めに生まれ変わった私は長い髪留め人生を送ることとなった。


 幼女が幼女から少女へと変わり、さらに大人の女性へと変わりゆく様をずっと側で見ていた。つい最近まで幼女だった女の子は女となり、妻となり、母となった。


 子供が産まれたのだ。私も喜びがひとしおである。


 その子は女の子だった。その後、何処かで見たような女の子に成長した。そして何年か経つと、もう一人子供が産まれた。今度は男の子である。その子も何処かで見たような男の子だった。


 ある日のこと。女の子は男の子を殺してしまう。母親を男の子に取られたと思い犯行に及んだのだ。


 それは不幸な事故だった。


 というのが大人達の見立てである。実際は『これで遺産は私だけのもの』という笑えないものだった。女の子はまともな女の子ではなかったのだ。


 しかし私はただの髪留めである。


 真相を知っていてもそれを伝える術がない。男の子は死んで、女の子は一人高笑いをする。母親である持ち主の髪を留める、それしか私には出来なかった。


 そして数年が経った。


 私の持ち主である幼女……だったお母さんは息子を失ったことで失意のまま過ごす日々を送っていた。母親だからなのだろう。以前に比べて痩せていた。資産家っぽい旦那はそんなことを気にもせずに美食に耽っていた。


 今夜も海鮮丼をもりもりとデブが食っている。資産家って勝ち組なんだなぁとただの髪留めである私は思ってしまう。


 デブの今日のお食事はイクラてんこ盛りの海鮮丼である。


 プリン体とか尿酸値とか大丈夫なのかなぁ、と思ったが遠くで少女が邪悪にほくそ笑んでいるのを見て確信した。


 なるほど。今度は父殺しか。


 そんな人生も人生だよね、と髪留め人生を謳歌する私は感じている。


 人生は川のようなものだ。逆らうことなど出来ないし、一度流れてしまえば止まることも変えることも出来ない。


 だが持ち主に笑顔でいて欲しいと願うのは自由だろう。


 近々少女の誕生日会がド派手に開かれる事になった。客船を借りきってのセレブパーティーだ。ちょっと異次元過ぎてびびる。


 母親もパーティーに参加する予定だったがあまりにも辛気臭い面をしてるとして乗船禁止となった。


 あんまりじゃね? と思ったが母親はむしろホッとしていた。


 まぁ子供が死んでまだ二年とちょい。普通ならお祝いとかキツいよね。だって息子を殺した子の誕生日だし。


 しかしパパさんはそんなこと、気にもしてないようで。


 父親としては娘が可愛くて仕方無いみたいだ。その娘さん、あなたの命を狙ってますよ?


 一人お留守番となった幼女……だった母親は息子の写真を眺めて一日を過ごしていた。


 ……やはり何処かで見た覚えがある……ような気がする……ような?

 

 写真には母親に抱きついて幸せそうに笑う『私』の姿があった。


 うむむ。やはり何処かで見た気がするんだが……私は無機物である髪留めだ。記憶媒体とか付いてないし。


 母親が息子さんの形見……大切に仕舞われていた白のブリーフに手を出したとき、丁度電話が鳴った。形見でそれを残しちゃダメだよ。いや、確かにブリーフの年代だけどね?

 

 電話をとった母親は崩れ落ちた。なんとパーティー会場だった客船が沈没してそのあと大爆発をしたらしい。母親が急いでテレビを付けたらライブ映像でやっていた。

 

 海には船とおぼしき残骸が多数浮かんでいた。


 ……何処かで見たような機械のパーツも浮いている。なんだっけ、あれ?

 

 母親は泣いていた。


 あんな夫と娘なのになんて優しくて慈悲深い人なのだろうと私は思った。


 とりあえず自殺しないように見守る事にした。


 側にいることしか出来ないけど君の全ては知っている。どんな生き方をしてきたのか。あなたがどんな人なのか。


 たとえ世界があなたを否定しても私だけはあなたを守ります。


 と格好着けてたら髪留めが壊れた。つまり今回の寿命である。


 そして気付くと私はまた生まれ変わっていた。


 今度は……うん。人間っぽい。


 多分人間だ。赤ちゃんだ。ベイビーっぽい。


 もしかすると種族がゴブリンかもしれないがそれはそれで楽しそうな人生である。


 母親はどうやらシングルマザーっぽいから今度の人生では親身になって支えようと思う。まだ目も見えないし、どんな人かは分からないけどね。


 でも何となく知ってる人な気がするのは何故だろう。


 とりあえず母ちゃんおっぱいおくれー。ばぶー。




 今回の感想。


 分かりにくいかな。分かりやすく書いたけど。


 

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