第十六話 罠発見
三日後。
最初の部屋に入り、左側の扉に再挑戦。
今日は左側の扉の先にある、緩い登り傾斜のカーブを上っていって、その先に有るものを見ようと思う。
正直、自分自身で直接見に行くのは恐い。
だがリモコン偵察できないので、自分で行って見てくるしかない。
先ず、通路からこの最初の部屋に逃げ戻ってくる事を想定して準備する。
右側で行ったような、転倒罠を設置。
扉の脇の壁際に幾つか、【訓練場】から移設したぐるぐる螺旋状のバラ線フェンスを立たせてある。
垂らしてある紐を適切に引けば、横に倒れて障害物をすぐに設置できる。
今回の扉は左半分を閉めておき、右半分だけ50cmほど開けて、閉まらないように細い楔を下に打ち込む。
楔には紐をつけて、最初の部屋の中から引っ張って外せるようにしておく。
紐をつけられるような細工をしてなかったので、その場で急遽、鋸で溝を挽いた。
通路から最初の部屋へ逃げ戻ってきて、狭く開けた扉の隙間を鉄鎖の下を潜って滑り込む時に、少しでも引っ掛かりがあると、それが生死に関りかねない。
そこで、扉の縁に巾10cm程度、予め片栗粉で作っておいた薄いとろみ液を、潤滑剤として薄っすら塗りつける。
家からの運搬には安いポリ袋を使い、塗りつけるのにもポリ袋で手首から先を包んで、揃えた指先で少し掬ってぺたぺた。
時間経過と共に、次第に垂れてくるだろうから、一番下の方は塗らない。
鉄鎖を潜ろうとして、ヌルヌルの水溜りに突っ込んだら大変な事になりかねないから。
最初の扉にもヌルヌルを塗っておく。
自分の肩から肘にかけても塗り、背中は扉の縁にごしごし擦りつけて、縁に塗った奴を背中に移す。その後でまた縁にぺたぺた塗りなおし。
少しでも身軽に、また引っ掛かりを生じさせないように、あらかじめ背中の追加装甲と腰のベルトは外して、【訓練場】に置いた。
せめてと思い、枝切れと釘と紙類とボロキレで製作したカカシを通路に持ち込んだ。
顔を頭巾で隠して盾と武器を構えているように見せている。
またあの半魚人みたいのが待ち構えていて突撃してきた時に、向きを変えてカカシに襲い掛かってくれれば、扉まで辿りつく時間を僅かでも稼げるかもしれない。
暗い通路へ入る。
鋤で罠チェックしつつ進んでいく。
床だけでなく、壁も叩いたり押したりしつつ進む。
天井にも警戒の目を向けている。
右カーブしながら緩やかに登っていた通路は、入ってきた扉が見えなくなる辺りで今度は緩やかに下りながら左カーブしだした。
その辺りで一旦引き返し、カカシを運んできて設置した。
一息つく。
更に先へ。
この辺りは扉から洩れる光が見えないので、点灯したミニランタンを一つ置いておく。
その少し先で、鋤で床を押した途端に、上下からパシーンッと放電!
予期していなかったから、ビクーン! と心臓が飛び跳ねた。
一瞬、硬直する。
今度は棒で軽く叩いてみる。反応なし。
こわっ。
どうなってるんだ……
壁や天井も押してみるが、反応なし。
もう一度、押してみると、再びパシーンッ!
びくっとしつつも、更にもう一度押してみると、反応なし。
少し時間をおいて発動する感圧スイッチのようだ。
コンデンサでも使ってんのかな?
よくよく注意してあちこち見てみたけど、解除スイッチなんて見つからなかった。
解除なんて出来る気がしない。
その後、どこからがヤバいのかは分ったので、赤マジックで線引きして、
「電撃の罠」
と床面にメモしておいたけど、どこまでヤバいのかは分らなかった。
あまり近づきすぎると自分の身体で電流を受けることになるし。
一応ね、リード線は2mほど巻いて持って来てあるんだ。
それを鋤の柄の、握ってるところより先に、被覆を破り剥がして巻きつけて、他端を床に接地すれば、多分アースがとれて少しは安全になるとは思うんだ。
それでもやっぱり長さが足りない。
リード線が瞬時に焼けきれる惧れもあるし、そうなったら自分の身体──大部分はチタン表面を伝わっていくだろうけど──を強烈な高圧電流が流れる。
リード線が切れなくても、飛び火する惧れもある。
10フィート(約3m)なんて長すぎると思ってたけど、やはりそのくらいの長さがないと、簡易チェックすら充分にはできないようだ。
電流と云えば、前に小鮫魔術師から喰らった雷撃。
金属製の鎧に電流が大部分流れて、肉体へのダメージは相当軽減されていたと思われる。
合成樹脂の軽量防具だけだったら、多分、電流の大部分が肉体を通過して、一撃で葬り去られてた。
ともあれ、これでは通れない。
諦めて引き返す。
途中でミニランタンとカカシを回収。
背後に戻ってくる闇にビクビクしながら、最初の部屋に戻った。
扉を鉄鎖と閂で締め切る。
ふう……やっと一安心。
室内に仕掛けた罠仕掛けを、円形の部屋の壁際に片付ける。
部屋の真ん中に仕掛けっぱなしだと、自分がうっかり引っ掛かりかねない。
本日はここまで。
色々持ち込んだ物資は部屋にそのまま置いて引き揚げる。




