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⑨白崎海斗



白崎海斗が坂下日奈子と食事をするお店は、最近になってフーデリヤに登録をした、この近辺では割かし有名な洋食屋だった。


小洒落た店内に入った日奈子ちゃんの様子を見ていると、どことなくこの洋食屋に来た事があるような雰囲気があった。


その様子を見て、「来た事あった?」と白崎は聞いた。


「いや、ないよ」と日奈子ちゃんは言った。


「そうなんだ。この店、ここ以外にもこの市内に数件と隣の県にも店を出してるところだから、案外あるかもと思ったよ」



2人は席に着くと、店員にメニュー表を渡され、白崎はメニュー表を開きながら「どんな気分?何が食べたい?」と日奈子ちゃんに聞いた。


「なんでもいいけど、何かおすすめはある?」


「いや、俺も初めて来たからわかんないけど、セットでいいんじゃない?」


「うん、そうしよっか」と日奈子ちゃんは開いたメニューをあまり見る事なくセットに決め、店員さんを呼んで同じ注文をした。



2人が集合した時間は予定より一時間早くなっていた。


だからか、開店して間もなくだった為、店内には2人以外にお客さんはおらず、貸切状態だった。



「今日何してた?会うまで?」と白崎は少し疑問に思っていたことを素知らぬふりをしながら聞いた。


「いや、まぁ色々とだよ。白崎くんは?」



白崎は話を誤魔化されたと思ったが、「おれはフーデリヤだよ」と答えた。


「えぇ、すご。偉いね」


「稼がないといけないからさ」


「まぁ、そうだけど。体力あるね」


「そう言えば、日奈子ちゃんは何かバイトしてたっけ?てか探してたよね?」


「うん、探してる。早くしないと色々とヤバいけどね」


「そっか、まず、この街に慣れる事からだよね」と白崎が言うと、


日奈子ちゃんは「はは」と笑った。



それからしばらくして料理が届き、2人は食べ始めた。


すると、「白崎くん、食べっぷりいいね」と日奈子ちゃんは言ってきた。


「うん、今日食べたのはコンビニのおにぎり一個だけで、あとは自転車漕いでたからね」


「へぇ凄いね。大変だったね。それじゃ、お腹空くね。これあげようか?」

と日奈子ちゃんはプレートに乗った大きな白身魚のフライをフォークで指して言ってきた。


「えっ、いいの?」


「うん、いいよ」


「ありがとう。あれ?日奈子ちゃん、お腹空いてない?」


「空いてるよ」


「けど、いいの?」


「うん」


「じゃあ、ありがとう。貰います」



その後、2人は大学生活についてや、サークル活動などの話をした。


入学早々、勉強が疎かになっており、卒業後の未来が不安だとも笑いながら話した。



そうしている内に店内は人で溢れかえるようになって、話声が色んな所から聞こえるようになっていた。


あるタイミングで、日奈子ちゃんは鞄を持ちながら、「ちょっとトイレに行くね」と席を立った。


白崎は一人になると、この後どうやって自宅に誘おうか考えていた。だが、いい提案がいまいち浮かばないでいた。


そうこうしているうちに、日奈子ちゃんがトイレから戻って来た。


白崎はその時になって、日奈子ちゃんがいつも着ている服より気合が入った女性らしい服装をしていた事に気が付いた。


コツコツと鳴るヒールと揺れるスカートの裾に、白崎の鼓動は高鳴っていた。


今日の日の為だろうか?



日奈子ちゃんが席に戻ると、白崎は映画の話をし出した。


「日奈子ちゃん、映画が好きなんだよね」


「好きだけど、そんなにいうほどでもないよ」と日奈子ちゃんは言ってから、水を一口飲んだ。


「えっ、そうなんだね。けど何が好きなの?」


「好きな映画というより、ジャンルの方かな?」


「何、何?何ジャンルが好きなの?」と白崎は興味ありげに聞いた。


「...サスペンスかな」


「えっ!!意外なんだけど」と白崎は軽くのけぞり、ビックリしたリアクションをした。


「意外かな?けど、好きなんだよね」


「ちょっと意外かも」


「まぁよく言われるけどね」と日奈子ちゃんは笑った。


その後も、2人はしばらくレストランで話を続けた。



デザートを食べ終わって20分が経つと、


そろそろお店を出るか、それかもし次に行く場所があるならそこに行こうと白崎が話し出そうとした時に、

白崎はある事を思い出し「あっ、そうだ、そうだ。これ見てよ」とスマホの画面を日奈子ちゃんに向けた。


それは、白崎が今日のお昼に大ノ森公園で子猫を撮影した動画だった。


「何それ?」


「大ノ森公園の猫だよ。ほら、これ、これ。ここにいるでしょ?」


「えっ、嘘!?本当?まだいたの?」と日奈子ちゃんは驚いた様子で言った。


「うん、まだいたみたい。しかも子猫だと思う。俺ら見逃してたんだね」


「それ今日の動画?」


「うん、今日だよ。今日の昼」


「えーそっか、そうなんだ」


「日奈子ちゃん、いいリアクションだね、本当に猫好きなんだ」


「...うん。まぁ...」



すると、日奈子は「噓でしょ?と思うかもしれない話だけど...」と話し出し、

なんでもサークルで猫を保護する事になった一連の話を白崎は聞く事になった。



続きます。

誤字脱字などがあれば、教えてもらえると嬉しいです。

ありがとうございました。

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