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⑦白崎海斗



白崎海斗の今日の予定は、坂下日奈子との食事だった。


しかし、会うのは夕方からと、事前に日奈子ちゃんから連絡が来ていた。


白崎はそれまでに空いた時間を有効に使おうと、フーデリヤのバイトをし、朝から自転車を漕ぎ、配達をしていた。


途中、午前中までに「配達6件完了」とツイートしたが、今日も反応は全くなかった。

白崎はもうこのツイートを辞めようかなと思っていた。反響がなきゃ意味がないのだ。




昼前になると大ノ森公園の中華屋の前に待機し、注文が来るのを待っていた。

相変わらず中華屋は人気で、どんどん注文がきていた。


その証拠に白崎以外にも2人、中華屋に目を付けている男がいた。だが、白崎は今日は焦る様子もなく、心に余裕があった。



白崎は日奈子ちゃんとの食事終わり、どうしようかな?とまだ悩んでいた。


もしかしたらワンチャンある可能性にも賭けており、白崎は昨日の夜、入居してから初めて部屋の掃除をしたのだった。


食事終わりの妄想が何度も頭の中で繰り返されていたが、その妄想も一旦収まると、白崎はふと公園の方に目を向けた。



その時、白崎の目は何か動くものを捕らえた。



その何かに焦点を合わすと、一匹の猫が公園の中央、枯れた噴水辺りにいるのが見えた。


白崎は「えっ、嘘?」と言って、勢いよく立ち上がり、慌てて手に持っていたスマホで動画撮影開始ボタンを押した。


「うそ、うそ、おい、おい」


保護から漏れた猫だろうか?


ただの迷い猫なのだろうか?


白崎はゆっくりと、警戒されないように猫の方へと歩き出し、カメラ越しでその猫を見ていた。


その距離、約30m。



その猫の身体はまだそんなに大きくなく、子猫のようにも見える。


「子猫か?」


子猫は人気のない噴水の周りで、何かを探すようにして彷徨っていた。



これは凄いぞ。と白崎の心臓はバクバクし、歩くときは肩さえ揺らさず、警戒を悟られないようにさらに近づいていった。


だが、白崎は足元に転がっていた空のペットボトルを勢いよく蹴ってしまい、ゴロゴロとペットボトルが転がる音が辺りに響き渡った。


子猫はそれに驚き、一度素早くこちらを見てから、向きを変え、公園の隣にある小山の方へと走っていった。


その時、白崎はスマホを構えるを止め、子猫を肉眼で確認してから、「あぁ!もう!!」と言い、動画撮影を止めた。



大ノ森公園のすぐ隣には、市の管轄外、誰かの私有地の小山があるみたいで、猫を保護する際に、本当に野良猫なのか?という疑問を解消する為に、小山の所有者に団体と市の方から連絡が行ったみたいだった。だが、所有者は違うと返答してきたらしい。



白崎は公園とその小山の私有地の境目、無断立ち入り禁止のロープが張られた付近にいた。


子猫は小山の間の方に走っていったから、もう見つけるのは難しいかもしれないなと堪忍した。



白崎は一度ため息をつき、先ほどいた、中華屋の前に戻ると、ツイッターにさっきの子猫の動画をすぐさまアップした。


勿論、これでまたいいねが稼げるだろうか?という期待を込めていた。



それからしばらくしてさらに3件ほどの配達を終えた白崎は、一旦、大ノ森公園に戻ったが、今日はこれで終え、自宅に帰ろうと思った。



だが、また再び注文の連絡が入った。


スマホの画面を見た白崎は、今回は調べる事さえしなかった。


届け先はあの空き地だった。


その時、白崎は流石にこれは何かあると思い、不気味になり公園を離れた。




白崎は自宅アパートに戻ると、薄っすらと掻いた汗を流すためにシャワーを浴び、まだ時間に余裕があるが、服を着替え、髪をセットした。


そして、ベッドの上に座って、スマホを手に取り、先ほどツイッターに上げた子猫の動画を確認してみると、いいねが1つだけ付いていた。


「たった1つかよ。猫もしょぼいな」と白崎は言った。



その後、いいね!をしてくれた相手のページに飛んでみると、プロフィールに写真もなく、文字もなく、フォローしている人0、フォロワー0で捨てアカのようだった。


そんなヤツからいいねを貰っても嬉しくない。白崎はそう思い、ツイッターを閉じた後、日奈子ちゃんに再度、待ち合わせ場所などの連絡を入れておいた。


当日になって忘れられたら困るからだ。


すると5分も経たないうちに日奈子ちゃんからの返信がきた。


「ちょっと時間早くになっても大丈夫かな?」と。



別にレストランを予約していた訳でもなかったし、早く会えるならラッキーだと思い、白崎はその場で立ち上がってから、「もちろん!!」と返信をした。




誤字脱字などがあれば、教えてもらえる助かります。

読んでいただき、ありがとうございました。

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