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⑤上村信人


「あっ、もしもし、聞こえてる?」


「...」


「...もしもし?」


「...あっ、聞こえてる、聞こえてる」


「あぁ、ならよかった」


「うん...」


「さっき、やばかったよな?」


「うん、今、2人だけだよね?」


「うん、2人だけ。だから大丈夫、大丈夫」


「ほんと、そわそわしたわ、うち」


「だよね、俺も」


「てか...これで会話するのも変な感じだね」


「だな、さっき園くんにバレそうだったけどな」


「怖かったわー。だから、もう普通にスマホから連絡してよ」


「うん、そうするわ。そっちの方が安全だからな」


「うん、じゃあまたね」


「おう、また」


「ばいちゅ」


「ばいちゅ」


上村はゲームの電源を切った。プレイしていたのはFPSで、なんでもサークルの仲間内のチームで音声を繋げて戦っていたのだ。


ゲームが終わると、上村はスマホを手に取り、カーペットの上で仰向けになった。


つい先ほど一緒に戦った茜から連絡が着ていたので、簡単に返信しておいた。


「いいなぁ、俺以外、皆一人暮らしかぁ、俺も一人暮らしがしてぇー」と上村は何度も見上げた部屋の天井を見ながらそう言った。




実家暮らしならお金が浮く。


バイトをまだ何もしていない上村は、これから何をしようか迷っていた。



フーデリヤ?


白崎にも勧められたが、上村はそんな自転車で街中を駆け回るような面倒なことはしたくなかった。

だが、早くバイトを見つけないと、高校の頃にバイトで貯めた貯金ももうすぐ底をついてしまう。


だから上村は、お金節約の為にもゲームばかりをしていた。


白崎にもサークル内でのFPSチームに参加してよと誘ったのだが、白崎はそもそもゲームを買うような、金銭的な余裕がなかった。




最初、上村は白崎のことを、実家から通えるのに一人暮らし?とバカにしていたが、今ではあいつの方が正しいように思えていた。正直、実家から大学に通うのはだるい。近いようで遠いのだ。


そんな上村は、大学に入学すると色んな人に話かけ知り合いを作り、まだよく素性も知らない人たちの家に転々と居候をすることも多かった。それがサークルに入った理由でもあった。


サークル選びの際、熱血そうなサークルは全部除外し、それに女性が多いサークルに入れる事が出来ればいい。そこで浮上したのが、なんでもサークルだった。


どうやら活動もあまりしていない噂があったし、古瀬という部長は物静かだったからそこに決めた。あと、希望通り、かわいい子が何人もいた。


居候させてくれる人が多いなら多い方がいい、それで中学ぶりに会った白崎もサークルに誘ったのだ。



「なんか他におもしれぇことないかな~」と上村はスマホをカーペットの上に雑に置き、顔を横に向け、今度はゲームのコントローラーを見た。



ゲーム配信でもいいかもな?



FPSは上村にとって、久しぶりにハマったゲームだ。


チーム戦では誰かが足を引っ張ると、全体の士気が下がる。


だから、誰もが慎重に、そしてマウントを取られないように、己のポジションを獲得する。


運転でハンドルを握った途端、その人の新たな一面が見える事と同じようにして、ゲームの中でもその人の黒い一面が現れる事もあるのだ。



上村は目を閉じると、まだ銃声が遠くの方で鳴っている錯覚に陥った。



バンバンバン!!と銃声が鳴る。


「何してんすか~」と上村は笑いながら言う。


「ごめん」と弱気な声が返ってくる。


バンバン!!と再び銃声が鳴る。


「あっ、ごめん、死んだ」


「あっ、もう!」と上村は隠さず、苛立ちの声を上げる。


「ちょっと救助してくれないか?すぐ近くにいるだろ?」


「いや、無理無理」と上村は断り、ゲームの中で先を急いだ。



そのゲームは、なんでもサークルの完敗だった。



「誰のせいかな?」と上村はマイクに向かって言う。


「3回目も即死」


誰も返事をしなかった。



上村は薄目で蛍光灯の光を捕らえる。


なんだろうこの感覚と記憶を辿ると、他でもない、中学の頃を思い出したのだ。







まだ続きます。

誤字脱字などがあれば、教えて貰えると助かります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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