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⑰沼田圭


沼田圭が会った女の子は全員で6人だった。


そして、6人目の坂下日奈子を相手として決めた。


なぜなら、坂下日奈子の容姿が一番好みだったからだ。


多分、偽名ではなく本名だろうし、田舎から出てきた女の子だから擦れていない。

他のがめつい奴らとは違う印象を受けたのだ。

いつも申し訳なさそうにしているのが好印象だった。


だからお金も弾んだ。総額十万以上、食事代やプレゼント代を含めると15万円ぐらいだろうか?

会ってから短期間であげていた。


日奈子ちゃんがお金に困っているのなら協力してやってもいい。


だがしかし、この前会った時、日奈子ちゃんは私の提案に難色を示した。



これまで会った時の私の言葉遣いや所作に問題があったとは思わない。


だから、なんで同棲を断られたのかもわからない。


ゆとりがある大人に見えなかったのだろうか?



しかし、今はそんな事はどうでも良かった。



私は日奈子ちゃんに対して、失望してしまったのだ。



日奈子ちゃんは嘘をついていた。


彼氏はいないと。


だが、私にはそれが嘘だと分かった。


私といつもの駅近のレストランで食事し、別れた後、日奈子ちゃんは住んでいる街に戻って、そこで同年代ぐらいの男と会っていた。


はじめ私は驚いたが、ただの大学の友達かもしれない。


私はそう願った。


私の願い通りだったのか、2人は長い食事を済ませると、その場で解散し、

日奈子ちゃんは夜の公園を歩いて、自宅のアパートに戻っていった。



良かった。やっぱりただの友達なんだと思った。


日奈子ちゃんの発言に嘘はなかったと思った。



だが、次の日の午後にも、昨日と同じ男と公園で会い、楽しそうにベンチで食事までしていた。


私は日奈子ちゃんに対して、失望し始めた頃、


その後、2人が並んで、隣にいた男の部屋に入って行った時、


私はそれ以上、日奈子ちゃんを追いかけることを止めたのだ。



なんて馬鹿馬鹿しい事をしていたのだろう。

彼女は私を騙し、お金を奪っていたのだ。



私は帰りの電車の中、行き場のない怒りにまみれていた。


純粋無垢な女の子だと思ってしまった私がバカだった。


そもそも、男からお金を貰う為に時間を作り、諂う女は最低だ。


日奈子ちゃんを信じた俺がバカだった。


ちょっと懲らしめてやらないと気が済まない、私はそう思ったのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



沼田圭は電車の中にいた。



今日、沼田は会社を休み、日奈子ちゃんが住む街へと電車で向かっていた。


ちゃんと返してもらおう。今までのことを。


沼田の頭の中にあるのはそれだけだった。


沼田は駅を降り、スマホを確認し、大学の方へと歩き出した。

ここから2キロぐらい歩かないといけない。


しかし、沼田は無心で歩き、


他のものには目もくれず、ただひたすらに歩くと、あっという間に大学の前についた。


だが、着いて早々、沼田は困惑していた。



「あれ?日奈子ちゃん、大学にいないみたいだ」



沼田はまたそこからしばらく歩き、大ノ森公園の近く、坂下日奈子が住むアパートの近くまで行った。



「また反応がない、日奈子ちゃん、どこかにでかけているのかもしれない」と沼田が思った時、ついにスマホに反応が出た。


「えっ、そんなところにいるのか」


ここからさほど遠くない場所で、沼田のスマホが日奈子ちゃんの居場所を示していた。


これなら早歩きで15分程度で着くかもな。



沼田は目つきを変え、早い足取りでその場所へと歩き出した。




スマホのナビに従って歩き続けると、沼田が着いたのは住宅街への入り口であった。


その住宅街の立地は緩やかな坂になっており、沼田が住宅の側を歩いてみると、どの家も立派である事が分かった。



どうしてこんな場所に日奈子ちゃんがいるのだろうか?


日奈子ちゃんは地方から出てきてはずである。大学の友達か?



沼田の頭の中では、また良からぬ妄想が浮かんできた。


どっかのお金持ちのおじさんにお金を貰い、相手をしているのではないか?と。


沼田はそう考えると、身体の内側からまた強い怒りが湧いてくるのがわかった。



分からせてやろう、一刻も早く。大人を舐めた事を後悔させてやる。



今日、沼田は仕事を休んだにも関わらず、今日もスーツ姿のままで、

そのせいか、坂を一気に歩いて登ると汗が吹き出てきたのがわかった。



「はぁ、はぁ」と呼吸が乱れる。


だが、目的地はすぐそこだった。


前方の道の先には木々が生え、あとは左折しかできない道路になっており、


沼田は、ここか、ここを曲がれば日奈子ちゃんがいるのか。それにしても、住宅街の一番上の家だぞ。

と日奈子ちゃんがなぜこんな所にいるのかと不思議に思った。



沼田はスマホを眺め、中国のベンチャー企業から逆輸入で購入したGPS装置のアプリは、すぐそこだとしっかり反応している。


しかし、沼田が左折し、大きな家の前の道路に出ると、まず男の怒号のような声が沼田の耳に飛び込んで来た。



「...なんだ?なんだ?」


沼田はその声を聞くと、只事ではない何かだと思った。



沼田は少し身構えながら、さらに大きな家の前に近づいて行くと、



血まみれの男が家の門から勢いよく道路に出てきた。


そして、家の方向に素早く身体を向けた。



「どうなってる?...日奈子ちゃんは?」



沼田の頭の中は混乱し、その場で立ち止まった。



スマホで確認してみると、GPSはあの血まみれの男がいる位置を示している。



「なぜだ...?」



沼田はその血まみれの男をよく見てみると、


あれ?


あいつは昨日、一昨日と日奈子ちゃんと一緒にいた男ではないか...。



それが分かると、沼田は反射的に「...なっ、何してる!?」と大きな声で言った。



血まみれの男は、一度沼田の方を見てから素早く動きだし、電柱に立て掛けてあった自転車に乗り、慌てた様子でペダルを漕ぎ出した。



その時、また別の男が叫ぶ声が家の方から聞こえ、走ってくる足音がした。


すると、マスク姿の男が勢いよく道路に飛び出してきて、血まみれの男の後を追い出した。



あれは包丁か?包丁を持っているのか?



沼田は訳がわからない状況の中にいると、


自転車に乗った血まみれの男はあっという間に視界からいなくなり、


マスク姿で包丁のようなものを持った男が沼田から見える距離で何度も奇声を発していた。



何を言っているのだろうか?


全く聞き取れない。


何かを返せ!!と言っているのだろうか?



沼田は口を半開きにしながらその状況を眺め、手に持っていた鞄を強く自分の体に押さえつけた。


続きます。


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