表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/19

⑪ある男



ある男は朝起きると、投稿動画の評価、コメントチェックを始めた。

ここ一週間毎日投稿を止めているどころか、動画のアップさえしていなかったが、半年近く続いた癖は直らなかった。


埃を被ったパソコン画面に表示された動画の再生回数は見るからに激減し、チャンネル登録者は増えずに、徐々に減っていた。


ある男はその状況に苛つき、胡坐をかいていた足を伸ばすと、指先で何かを勢いよく蹴った。



ある男の部屋には、ゴミが溜まっていた。


丸めたティッシュペーパー、脱いだままの服、空の段ボール。

極め付けは、デリバリーで注文した食べ物の容器で、至る所に散乱し、古くなった油の臭いが部屋中に充満していた。


ある男はパソコン画面を殴るふりをしてから、床に落ちたゴミを手で軽く払い、ドンッと寝そべった。



ある男は中学時代の悪夢を最近になってより思い出すようになっていた。



その理由は明確であった。



ある男はある動画を観て、驚愕したのだ。



大ノ森公園に「動物の遺棄、虐待は犯罪です」という看板が建てられた理由、猫たちが保護に至った経緯の手がかりを知る為に、ある男はツイッターで、「大ノ森公園 猫 保護」と検索したのだ。



検索結果はさほど多くないが、ちゃんといくつかの投稿があり、その中でも、とある動画と猫に関しての一連のツイートに沢山のコメントといいね!がついているのを発見したのだ。

動画の再生回数だってなかなかの数字だった。



ある男は、瞬時に感づいた。


こいつが俺の大切な猫たちを奪った張本人だと。


日付を見ると、猫が公園からいなくなった頃とも辻褄が合う。



ある男は自分の身体が震えたのが分かった。


勿論、怒りのせいであった。


そして、震える指で、そのツイートの動画を恐る恐る再生したのだ。



再生すると、まずいきなり、せっちゃんの姿が出てきた。

せっちゃんとは、ある男が一番可愛いがっていた野良猫だった。


ある男は画面に向かって、「せっちゃん!」と大きな声を出した。


だが勿論聞こえる訳はなく、画面の中ではせっちゃんの鳴き声と若い男女の声が入り混じり、ワーキャーと聞こえていた。


ある女がせっちゃんに向かって「可愛い」なんてほざいてやがる。


ある男は手汗を搔いていた。


「これからはもう大丈夫だからね、安全に暮らせるからね」


「怖がらないで、怖がらないで」と今度は男の声がした。



どうやら撮影者は男みたいだった。


そして、ある男は揺れ動く映像、保護をしている人の中に、ある男の姿を見つけたのだ。

 



...



...上村信人...?




ある男の身体は急に熱くなり、胸の鼓動が早くなるのを感じた。



...上村だ...。



上村信人の顔つきは随分と大人になっていたが、あの笑った顔を見ると、こいつは上村信人だとすぐに確信できた。



上村信人。



忘れる訳がない。


いや、忘れられる訳がない。



上村信人は、



中学の時、俺をいじめた張本人だったからだ。



その間にも動画は再生し続けている。



そして、さらなる衝撃がある男を襲う。



上村信人はカメラ目線になり、動画を回してる人物に向かって、


「白崎」と名前を呼んだ。



その瞬間、ある男は反射的に動画を一時停止した。




......そう聞くと、あいつの声だ。



あいつら、まだつるんでいるのか...?




白崎海斗。



白崎海斗と上村信人が、中学時代、俺をいじめた2人組だった。




今でも癒えない傷を付け、俺をトンネルの中に追いやった。


悪魔のような人間だ。



そして、今度は、


あいつらは俺からせっちゃんたちを取り上げたのか!!!




ある男は陽の光が入らない薄暗い部屋の中で大声を出し、持っていたスマホを部屋の中に投げた。



ガン!!!というスマホが何かにぶつかった音がしたが、ある男は気もせず、そのまま床に落ちているゴミを拾っては投げてを繰り返した。



そして、怒りが少し収まると、復讐という裁きをあいつらにする事を誓った。




その数分後、ある男は投げたスマホを拾い上げ、そのツイートの投稿者のページに飛んだ。



プロフィールを見てみると、やはりどうやら白崎海斗のアカウントのようだった。


本名は書いてなかったが、それを示唆するものが多く、他にも丁寧に色んな情報が書いてあった。


大学、サークル、フーデリヤのバイト、よく出向く出没場所などがツイートから分かった。



そして、ある男は白崎海斗の相互フォロワーなどから、白崎海斗の周りの人間の情報をも手に入れた。

動画に映っていた女の一人は、梅原美咲というらしい。


そのまま調べていくと、上村はツイッターをやっていない事が分かった。



あいつらがまだこんなに近くにいたとはな。



「復讐」



ある男はそう考えると、暗い部屋の中である男は笑った。



すると「ニャン」と声が聞こえ、


すっかり衰弱し、毛並みもぼさぼさになった猫が遠くから餌を求めてきた。



まだ続きます。

誤字脱字などがあれば、教えてもらえると嬉しいです。

できれば評価もお願いします。


ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ