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異世界転生〜竹崎季長編

今作に登場する歴史上の人物は作者の偏見とにわか知識で書かれているのでご了承下さい。



辺りを山に囲まれた山道で叫び散らす1人の男の姿があった。



「蒙古は何処じゃあぁぁ‼︎ ぶっ殺してくれる‼︎」



年齢は20代後半から30代前半程度、蛮族の様な顔立ちで赤色の派手な大鎧を身に纏い、腰には太刀、片腕にはかなり大型の弓が装備されていた。



「気付いたら、こんな訳わからんところおるし、これも蒙古の仕業か⁈ 兎に角見つけたらぶっ殺す‼︎」



そう叫び散らしていたのは、鎌倉幕府の御家人である竹崎季長たけざきすえながだ。

 彼は主従五騎のみで蒙古こと元軍へと突撃して行ったのだが、気付いたらここにいた訳である。



「馬消えてるし、他の奴らおらんし、訳わからん……兎に角、蒙古ぶっ殺す‼︎ 絶対殺す‼︎」



男はそう叫びながら道のりに進んでいく。

 2、3時間程度山道を歩いていると少し開いたところに出る。そこには2台の馬車と、何人かの見た事ない鎧を装備した兵士の姿があった。

 それならまだ理解が及ぶのだが、その兵士が交戦している相手が、2メートル以上の人型の異形の怪物が三体、数多の触手が生えた肉塊、亀の甲羅の様な物で全身を覆われた猿と人間を足して割った様な異形の怪物がそれぞれ一体ずつの群れだったのだ。

 どうやら兵士達はかなり劣勢を強いられているらしく。1人、また1人と怪物に食い殺されて行く。

 


「あぁ……? 良くわかんねぇけどぶっ殺す‼︎ 蒙古だったらもっと殺す‼︎」

 


季長はその光景が何処か気に食わなかったのか、太刀を抜いて異形の怪物に半狂乱で突撃して行った。




「おらあぁぁ死ねや‼︎」



季長は最も近くにいた人型の化け物の首に太刀を振り下ろす。次の瞬間、首が地面に転がり落ちる。

立て続けに更に側にいた化け物の首も切り落として行く。



化け物達は今まで襲っていた兵士達よりも、季長の方が脅威だと認知したのか、一斉に標的を季長に定める。



「ガウウオォォ‼︎」



人型の怪物一体が季長に拳を振り下ろしてくるが、さっと身軽に避けてそのまま振り下ろしてきた腕を切り落とした。



「ガァァァァ‼︎」



怪物は苦痛の余り、咆哮を上げるが、次の瞬間に首が地面に落ちる。

 


「首三つ取ったりいぃ‼︎」



季長は狂気的な笑みを浮かべる。

 そのままの勢いで、触手の塊へと突き進んで行く。



肉塊は無数の触手をしならせて、季長へと振り下ろされるが、それを次々と太刀で斬り落とし、まるで何事もない様に突き進んで行く。

 太刀が肉塊の間合いに入ると、何度も太刀を肉塊へと突き刺して行く。



肉塊から体液が吹き出し、季長の顔や鎧へと付着するが、そんなの気にせずに何度も何度も刺突する。



「ガァァ‼︎」



それを妨害しようと、全身を甲羅で覆われた猿の化け物が鉤爪を振り下ろしてくるが、季長はそれをすかさず察知して身軽に避ける。



肉塊が既に生き絶えた物だと理解すると、季長はそのまま太刀を甲羅猿人へと向ける。

 太刀を甲羅猿人に振りかざすが、厚い甲羅の前に塞がれてしまう。

 季長は甲羅を太刀では貫けないと理解すると、首元の僅かな関節部に太刀を突き刺す。



「アガァァァ‼︎」



太刀を喉元でガリガリと動かすと、甲羅猿人は悲痛な叫びを上げる。

 暫くぐちゃぐちゃに喉をかき混ぜ、太刀を抜くと凄まじい量の血液が溢れ出し、辺りを真っ赤に染めながらその場に倒れ伏せる、恐らくは死んだだろう。




「た、助けてくださり有り難うございます……」



その光景を背後で見ていた1人の兵士が声をかけてくる。

 彼等は都市国家ブリジアナの輸送隊で、藩王国内では取れない貴重物資を運んでいる最中だったのだ。

 本来この辺りでは滅多にヴァアガザロンは出没しないのだが、運悪く襲撃に合ってしまったのだ。そんな時に見た事ない鎧を装備した蛮族じみた漢が現れ、全てを斬り殺したと言う訳である。



「あぁ……?」



季長は前に出てきた兵士を睨め付けると、今度は何を思い付いたのか、兵士の顔面を殴り飛ばす。



「てめぇ、誰だよ‼︎ 蒙古か? 蒙古だったらぶっ殺すぞ‼︎」



季長が兵士の首元を掴み激しく揺さぶる。

 首ががぐんがくんと激しく揺れ、兵士の意識が何度か飛びそうになる。



「もうこ……? そ、そんなの知らないです‼︎ や、やめて‼︎ 死にますって‼︎」



季長は兵士の言葉を聞くと、季長は揺さぶるのをやめる。



「確かに……よく見れば、蒙古のではなさそうだな」



兵士はその場に倒れ込み苦しそうに咳き込む。

 季長はそんな事も気にせずに様々な事を考察していた。

 何故こんな所に居るのか、そして正体不明の化け物……全てが彼の想定の範囲外だった。






「少し話を聞いてもいいか?」



一人で考察を続ける季長に背後から女性の声らしき物がかけられる。

 季長が振り向くとそこには、白銀の鎧に身を包んだ女性の姿があった。肩辺りまで伸びた栗色の髪、整った淡麗な顔立ちで腰にはロングソードをぶら下げていた。



「お前は誰だ……⁈ 蒙古では無さそうだが」



「私は都市国家ブリジアナの騎士長、ミシリア・カーマダインだ。貴方は召喚された勇者で間違い無いな?」



「ゆうしゃ……? なんだか知らねぇけど、俺がこんな所に来た理由を知ってるみたいだな、それで? どうやって元の場所に戻れる」


「それは知らないな、仮に知ってても教えない」



ミシリアと名乗った女がそう言うと、季長は怒鳴り声をあげる。



「あぁ⁈ 俺はさっさと帰って蒙古をぶっ殺さねぇと行けねぇんだよ‼︎」


「言ったはずだ、そんな方法知らないし、知ってても教えないと……」


「さっきから腹立つ女だな……」



季長はそう言うと、しまっていた太刀を抜く。

 殺気立った瞳をミシリアに向け、蛮族じみた形相で一歩一歩とミリシアに迫る。



「お前、その見た目からして武士もののふだろ、だったらやる事は分かってるよな? まさか、そんな格好してながら女だから戦えないなんて抜かさねでだろうな?」



ミリシアは季長の発言を聞くと、嘲笑するような笑みを浮かべる。

 

 

「まさか……私も話し合いはあまり好きでは無いんだ、こっちの方が分かりやすいからな」



ミリシアはそう言うと、腰にかけていた剣を抜く。



「それでは、こっちが勝ったらお前は大人しく私についてくる、それで構わないな?」




季長は「構わん」と一言だけで言うと、太刀を振り上げながら、ミリシアへと飛びかかった。

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