ゲーム版 ラグノオ
魔法使いは、見習いを卒業すると使い魔を持つことを許される
イリスも見習いを卒業すると魔法使い協会に赴き私、ラグノオと出会う。
「…私はラグノオ、貴女を我が主として認め共にあることを許して欲しい。」
「ありがとう!私はイリスよ使い魔がこんなにかわいいなんて!」
使い魔は、主となる魔法使いと契約するときにやっと肉体が持てる。私の一番目の兄は金の鬣を持つ獅子、二番目の兄は黒いしなやかな身体をもつ豹だった…私は…手足と口許が白い小さな猫だった…。
私も、もっと逞しい身体を持った動物に擬態したかったが、
「…主、く、苦し…い」
私を潰れるくらいに、抱きしめていた主の
「あ、ごめんなさい、これから宜しくね!」
主がこんなにも喜び、抱きしめてくれるなら小さな猫で良かったかもしれない
主から任された最初の仕事は、主達が戦っている時に回復アイテムを届けたり、詠唱中に主が狙われないよう敵を足止めしたりする事。
「ラグノオ!アーヴィング様に回復薬をお願い!」
「はい!」
「ありがとうラグノオ、今日も助かったわ」
戦闘が終わると、必ず声をかけてくれる主に心奪われたのは仕方ないことだと思う。だか私は使い魔で猫だ、主の影にいるが主…イリスの隣で笑ったり、抱きしめたりしたい…アーヴィング達には渡したくない。
そんな時、私の一番上の兄の主と合うことがあった。
「…ラグノオか?」
金の髪に、金の瞳をした青年が私達に話しかけてきた。
「ランクス兄上…?」
「ラグノオのお兄さん…え、でも私も見えるよ?」
使い魔は主となる人物にしか見えないとされている。
「随分と可愛らしい身体になったものだ!」
がはは、と笑いながら私を高く持ち上げ見上げてくる青年は数十年ぶりに合う兄だと確信する。
「ランクス、そろそろ弟君を下ろしてあげなさい」
「ソフィーわかった!」
兄上に声をかけてきたのは、黒髪に黒目の三十代くらいの落ち着いた女性で腕には赤ん坊を抱いている。
「ごめんなさいね、私の使い魔が驚かせたわね」
「いえ…あの大丈夫です。あの貴方が森の賢者と呼ばれるソフィー様ですか?」
「ええ、はじめまして貴女が私の依頼を受けてくれたの?」
「はい!イリスと申します、未熟者ですががんばります」
「では依頼の話は家の中でしましょう、イリスさん申し訳ないんだけど貴女の使い魔は夫に暫く預けていいかしら?」
「ラグノオ、私はソフィー様と仕事の話をしてくるから、お兄さんとゆっくり話をしててね」
「ありがとうございます、イリス」
「ランクス兄うぇ…」
一度は私を下ろしてくれていた兄はまた私を持ち上げ行きなり走り出した!
「よし、ランバンの所に行くぞ!」
ランバンとは二人目の兄の名だ、がははと笑いながら森の奥へと走り出す兄に連れられてやって来たのは森を抜けた、綺麗な湖がある開けた場所で隠れるように小さな小屋が立っていた。
「ランバン!見ろ!ラグノオを連れてきた!」
遠慮なく、小屋のドアを開けながらランクス兄上が大きな声で叫ぶ。
「ランクス兄、うるさい…」
質素な小屋の中、ベッドから起き上がってくる黒い塊…黒い豹のランバン兄上だった。
ボソッと呟く、ランバン兄上に私を持ち上げたままのランクス兄上がずかずかと近づき
「ラグノオ、やっと主を見つける事できたんだね…」
「はい、兄上」
私の目の前には、ランバン兄上の顔のアップが…近すぎて鼻の頭しか見えない。
「ラグノオの主も、ソフィーと同じ女だったぞ!」
「…ラグノオも女性の主だったんだ…。」
「ランクス兄上、そろそろ降ろして下さい!」
「ん?いいぞ!」
ベッドの上に、降ろしてもらい二人の兄を見上げやっとランクス兄上に質問できた。
「ランクス兄上は、何故主達と同じ姿なのですか?」
「ソフィーがこの姿なら大丈夫だと言ったからな!」
「…ランクス兄が説明出来るわけないよラグノオ」
ランクス兄上は、説明や細かいことは主が見つかる前から苦手な人だった。
「僕が少しだけ説明してあげる。」
ランクス兄上は、主であるソフィー…義姉と同じ姿で共に過ごしたいと思っていたがこの感情が分からず過ごしていたある日、義姉に恋人が出来そうになったらしい。「ソフィーに近づくオスは許さん!」とその恋人候補を追い払い、義姉に「俺以外のオスを近づけるな!」
と伝え、義姉に了承を得ると主達と同じ姿になったらしい。
「とりあえず、両思いになったら人間と同じ姿になって子供迄産まれたんだって」
「えぇ!先ほど抱いていた赤ん坊ですか!」
「そうだ!凄く可愛いがソフィーが抱かせてくれない!」
手加減を知らない兄上が抱くと、どうなるか…。
「使い魔である私達を他人が認識できるのはランクス兄上が人間と同じ姿だからですか?」
「…違う、それは子供を育てる上で義姉が人間達の間で疎外感を出さないために僕の主が作ったピアスをしてるから…僕の主は変態だから…。」
「…あのランバン兄上?」
行きなり、自分の主を変態扱いする兄上に私はどう答えればいいのだろうか
「ランバンの主は変だ!」
「なんですてぇ~‼」
バン!!!っと勢いよくドアが開き、中に入ってきたのは黒い髪を二つに結んだ少女だった…。
「誰が変態よ!」
「僕の主が…」
「おお!ユシリー!もう帰ってきたのか!また少し小さくなったか?」
「小さくなってないわよ!!あんたが無駄にでかいのよ!!」
行き成り小屋に入ってきた少女は、ランクス兄上相手に口喧嘩を始めてしまった。
「ラグノオ、あれが僕の主で変態のユシリー…」
「はぁ…ランバン兄上止めなくていいのですか?」
「いつものことだから、ほっておいて大丈夫…ラグノオは近寄っちゃだめだよ変態につかまるといけな…「見ろユシリー!弟のラグノオだ!!」
ランクス兄上に持ち上げられ、ユシリーちゃん?さん?の前に連れ出された、私を見て目を見開きランクス兄上から私をひったくると力いっぱい抱きしめられた。
「あぁ~私の理想の手触り!!このサイズ!!本当にあんた達の弟なのー!!信じられない~!!」
なぜこの兄の主は私が見えて、触れられるのかよりもこのままではイリスに再び会うことすらできなくなることの恐怖と息ができない苦しさで暴れた。
「主…ラグノオを放して」
「ランバン、何するの!返して!私が抱っこするのよ!」
ランバン兄上に首根っこを咥えられ、ユシリーさんが届かないような高い棚に降ろされる。
「だって、ユシリーに渡すとラグノオが主の元まで帰れないじゃない…」
「うぅ~」
「ラグノオ大丈夫だった?主がごめんね?」
「だ…大丈夫です兄上…びっくりしました…兄上の主は…何故私が見えるのですか?」
ここまでの疑問を兄たちにぶつける、使い魔は通常、主となった者しか見えず触れずとなっている勘のいい者なら見えずとも感じることはできるが、イリスとパーティーを組んでいる3人は私が居ることは分かってはいるが見えてはいないし、魔法使いの長とも言える者にも会ったことはあるが見えてはいなかった。
「それは、私が作った指輪とピアスのお陰なのよ!!」
片手を腰に手を当て胸を張り、私を指さしながらユシリーさんが得意げに続けるが長いので…。
ランクス兄上が使い魔になったことは嬉しかったらしいのだが、ユシリーさんの好みは小さくてもモフモフの毛皮を持つ使い魔が欲しかったので。
「大きいなら小さくすればいいのよね!」から研究が始まり、色々あったが魔法を封じた石を付けた指輪が完成し、ユシリーさん自身が指輪をつけると身体が小さくなったっと言うか若返った。
先ずは成功だと喜び次の魔法を封じる作業に入った辺りで気が付いた若返って小さくなった筈の指から指輪が抜けないことが。
だが、彼女は野望のためにそれをスルー、研究に没頭し主でなくとも使い魔を見る事ができるピアスが完成したが、自分が最初に成功した体が小さくなる魔法が自分だけ解除できないことをも忘れ去り…今を迎えたと言う。
彼女の願いは、裸で毛皮(もふもふに限る)を堪能する為に。
「ラグノオ大丈夫?」
ランクス兄上たちと別れた後、私は疲労困憊でフラフラしていたために、イリスに抱きかかえられ帰路についていた。
「イリス、すみませんまだフラフラします…」
あの後、イリスの仕事(ソフィー…義姉の依頼)が終わるまで、ユシリーさんに捕まりずっと抱きしめられ疲れてしまった…さすがに裸で抱きしめられそうになった時は断固拒否しました…イリスとしかしません‼
「ユシリーさんに凄く気に入られたね、お土産まで…ラグノオ?」
イリスの匂いと柔らかさを感じながら眠ってしまい、起きた時は翌朝でイリスのベットの上だった。
「おはよう、ラグノオ疲れは取れた?」
「ハイ、もう大丈夫です!今日はどうしますか?」
イリスに今日の予定を聞くことで、私の一日の仕事が始まる。
「今日は、ファリスが…」
「分りました、イリスいってらっしゃい…」
今日は街を探索なので私は留守番する事になった、つまりはイリスはデートに行ってしまった。
付いていったところで、ファリスが気付く事はないだろうが私が嫌だ、イリスと手をつないで一緒に歩いたりしているところなんか見たくない、イリスには私だけを見ててほしい。
「あぁ…!」
なんだか、体が熱くて眠…い…眠い…
夢をみた…私がランクス兄上のように人間の姿になり、イリスと恋人になる幸せになる素晴らし夢だった
「ラグノオ‼大丈夫‼」
「イ、イリス?」
目を開けると、心配そうに私を見つめるイリスが居た。
「よかった、光ってるからビックリしっちゃた。」
夢は夢だったようだ、私は何時もの小さい私で。イリスに抱き抱えられて、ベッドの上に居た。
「イリス…ファリスと出掛けていたんじゃ?」
「うん、なんだか…ラグノオに呼ばれた気がして、戻って来ちゃった。」
嬉しい…、ファリスより、私を選んでくれた!
「イリス!、私は…貴女が大好きです。他の男になんて、渡したくない!」
イリスに抱き締められたままだが、今伝えなくてはいけないと確信していた。
「兄上や義姉上のような夫婦になりたい!」
やはりダメだろうか?私は小さな猫だ人とは違うから、受け入れてはくれないだろうか。
「ラグノオ…ありがとう。私も大好き。」
「イリス!」
私はたまらず、イリスの膝の上から二本足で立ち上がりイリスの唇にキスをした。
「ラグノオ…大好きよ」
今度は、イリスが私にキスをくれた…。
「ラグノオ?、また光だしたわ!大丈夫?」
今度は眠くもなく、自分が光っているのを不思議に思って成り行きを見守るだけだった。
光が収まったら、何故かベッドに仰向けになったイリスを私が見下ろしていた。
「ラグノオ?なの?」
「?イリス、どうかしましたか?」
「だって…あの…そろそろ…。」
イリスは何故か、口ごもり私をみてくれない。でも私はイリスと思いが通したのだから、キスをしたり抱き締めたり…猫の姿だからこの腕じゃ…。
「え?なんで?私は!あ、イリス!すみません!重いですよね!直ぐに避けます!」
何故か私は、人の姿になりイリスをベッドに押し倒していた…。
「ラグノオ?あの…。」
「イリス!これで貴女の横に立って生きていけます!大好きですイリス…。」
2回目のキスは、イリスを抱きしめながらできた…。
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人の姿を持ってから、2年たった。
兄夫婦のように、まだ子猫は私達の間には居ないがイリスの側に立ち抱きしめたり、同じ目線で景色を見る事が出来るだけで嬉しい。
「イリス…。」
1日の終わり、イリスを後ろから抱きしめて語り合う時間の終わりは私からキスをして二人で横になる。
その日は産まれたままの姿になり、朝まで頑張る日だったが…。
急に、イリスの身体が固くなりいつもは、柔らかく揉んでいた胸が暗闇の中で無くなっている…。
「イリス!大丈夫ですか?」
枕元の明かりをつけると、イリスが私の方に振り向くと…。
「なっ!何者です!」
私と、イリスしかいない家…二人のベッドのうえに知らない裸の男がいた。
「ラグノオ~?どうしたの~早く来てよ~。」
裸の男は私に迫りより抱きつくが…。
「気持ち悪い!抱きつくな!イリスはどこだ!」
男を振り払い、ベッドから降り距離を取ったが壁はなくなり、暗闇の中一人で立っていた。
「ここは?!」
頭の中に語りかけてきた…声に従い、私はイリスを助けるために歩き出した。