ゲーム版 アーヴィング
俺は、アーヴィング・ヴェルタースは一応貴族出身の騎士隊長だ。
まだ若かりし騎士見習いの頃、俺達貴族と同じように平民から数人の少年少女たちも見習いとして入隊した、冒険者や騎士と結婚し辞めて行く者達や厳しい訓練に着いていけず辞めて行く者ばかりの中で一人だけ、周りの騎士見習い達と違い黙々と訓練に勤しむ少女騎士見習いがいた。
「アーヴィング、お前リーシェルばかり見てどうした?」
「やっと本命が出来たのか!」
周りの友人達に、冷やかされるほどに彼女を目で追っていた事に気付いた。
「違う、同期の友人達が辞めて行くなか頑張る奴だと感心してただけだ!」
10代の少年少女と言えば、一番男女の違いが出る時期で男である自分達ですら辛く、いくら体力や力があっても乗り越えるのがやっとの事がこの頃は多かった。
そんな中で、頑張り続ける彼女から目が離せなくなった。
「アーヴィング、暇なら稽古付き合ってよ」
彼女から名前を呼ばれるのが凄く嬉しかった。
「あぁ、怪我しても知らないからな!」
彼女と剣を交え、騎士として一緒に国を守って行こうと未来を語らう恋人になった。
「ヴィン、王子から妃になれと言われたわ…。」
「な、受けたのか?」
「受けてない、私平民なのよ?ヴィンとだって身分釣り合ってないのに王子と結婚なんて無理よ」
リーシェルが俺の胸に顔を埋める、愛しく思い抱きしめてキスをした。
その日は、彼女と夜をともに過ごした。
「じゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃい、一年も会えないなんて寂しいわ」
この遠征から帰れば見習いを卒業できる、残念な事だかリーシェルとは所属する隊が違うため、出発も場所も時期までも別々で一年間離ればなれだ。
柔らかい、彼女を抱きしめられないのが一番辛い。
「ほら、早く行かないと遅刻よ?」
「あぁ行ってくる…。」
最後に彼女にキスをして別れたのが二人で言葉を交わした最後だった。
あと1ヶ月でリーシェルに会えると心待にしていた時王子が結婚し妃きなるものには、腹に子がいる為婚姻を急ぐとニュースになった。
相手は、王子の婚約者の令嬢ではなくリーシェルだった。
「 リーシェルと王子が結婚なんてアーヴィングと結婚するんじゃなかったのか?」
「お、俺はそのつもりだった…」
遠征が終わったら二人で両親に挨拶をし、お揃いの指輪を買って…とあの夜二人で抱き合いなから話をした。
「お前達、落ち着け!」
上官の怒鳴り声が聞こえるが、俺は其どころではない、もしかしてあの時の子供ではないだろうか?なんて一瞬考えたが子供が生まれるのは十月十日と言われている、俺との子なら既に産まれているはずだ。
団長に呼ばれ、一人で団長のテントにはいった俺に
「アーヴィング落ち着いて聞けよ…。」
俺は、リーシェルに良いように使われたらしい。
彼女が王子と出会ったのは、俺と付き合いだして直ぐ(俺の紹介で)彼女は王女付の護衛見習いに選抜され(貴族の位にあるか貴族に推薦されないと着けない)、王女と王子が通う学園へと共に赴き護衛に着いていた時に、他の護衛達の目を盗みリーシェルから関係を迫ったそうだ。
それに気づいた婚約者の令嬢に怪我をさせたが身籠っていると言う理由と王子の名誉(騎士の訓練を受けた女性とはいえ…)を守るため妾としての位を得て生涯幽閉させる予定らしい
俺も、あの時は若かった今では思い出したくもない。
元恋人にも興味はない。
が、
俺の心には、ガッツりと見えない傷が残ったらしく、女を信じられない遊び人になっていた…イリスと出合いう前までは。
恋人に、裏切られ無我夢中で過ごした数年間で騎士団長にまで上り詰めていた。
「俺はこの騎士団を任されている、アーヴィングというものだお嬢ちゃんの名前を教えてもらえるか?」
彼女は、お嬢ちゃんと呼ばれたことに少しムッとしていたが鈴が転がるような声で。
「イリスです。」
彼女との出合いはなんて事はない騎士団の恒例行事の冒険者見習いの為の遠征の護衛だ。
「イリスか可愛いお嬢ちゃんにピッタリの名だ」
俺の言葉に、顔を赤くして俯くイリスがとても可愛く思えた。
「町を出る時は、俺に声を掛けろお嬢ちゃんは俺が守ってやる」
「あ、ありがとうございます!」
彼女は魔法使い、冒険者としてもまだひとりではやっては行けないしソロで行動するにはレベルや経験が足りないだろう。
何度か、一緒に遠出をし(二人きりでは無かったが)やっと二人きりでてかける約束をした。
ワンピースを着たイリスは、今までになく可愛らしかった。
「また、こんな時間を過ごしたいです。」
帰りがけに、小さな声で呟くイリスに抱きしめてキスをしたくなったが。
「じゃあな、お嬢ちゃん」
「はい、ありがとうございました、アーヴィング様」
昔の恋を忘れようと、色々な女達と過ごして居たのが嘘のようだった、いつの間にかイリスだけが側に居た。
季節が春から、冬に変わる頃。
「アーヴィング様、あの一緒に受けて欲しい依頼があって。」
「待ってたぜ、イリス今回はどんな依頼を受けたんだ?」
俺を誘うイリスに導かれた依頼が。
彼女と俺の運命が掛かった依頼だった。
「もう一度…!聞かせていただきたい…。」
俺の目の前にいるのは、国王陛下王妃(リーシェルが傷つけたとされる令嬢)となった二人だけ。
仲間達は、依頼を果たして控え室で待っている。
依頼は、俺を一人で謁見させることだった。
「アーヴィング…、すまなかった…」
「リーシェルは私達二人を助けてくれたんだ
王子(国王陛下)は、学園にいる頃一人の令嬢に付きまとわれていたらしい護衛や側近候補が追い払っても、何度も何度も現れ手を妬いていた。
令嬢は身分は低いが頭の出来は良かったらしく隣国からの留学生、下手に処分を下すと国同士の仲が悪くなる為、隣国への書簡を出し返答待つだけ…そんな時。
「かの令嬢は…王妃を傷つけようとした!」
「王女殿下と二人でお茶会をしていた時です…、彼女が魔術で私に向かい攻撃魔術を」
間に入り、王妃を守ったのが王女殿下の護衛に着いてた、リーシェル。
「リーシェルは身籠っていた、アーヴィング君との子供だった。」
「!!」
「私を庇った為に、流産を…」
リーシェルが意識を取り戻した時に言ったらしい。
「王子の子を殺した罪により、かの令嬢を投獄して下さい。」
「私達も驚いたよ、悲しむより先に隣国に付け入る先を見せないための理由を導きだした。」
ため息をつき、話を続ける国王陛下を見ることしか出来ず
「私もリーシェルを気に入って居たから、妃にならないかと声はかけていたが…このような形で妃に迎えるとは思わなかった。」
「あなたには偽って報告して欲しいと頼まれてしまい…。」
「…今更だと思うだろうが、リーシェルに会って欲しいんだ」
「私には、今恋人がいます…国王陛下の妃と話など」
「彼女には申し訳ないが、二人で話をしてきて欲しい依頼を受けて貰ったときに私が君たちの事を話してある、リーシェルを君の妻にするとも。」
「!!」
イリスを大切にこの腕で、守っていくと決めたばかりなのに…。
「ヴィン?」
「リーシェル…様。」
リーシェルの住む、離宮に着いて直ぐリーシェルに出会ってしまった。
「久しぶり…。」
「あぁ…。」
10数年ぶりに、会ったがあの頃と変わらないリーシェルがいた。
「この離宮から、外に出れなかったけど…。ちゃんと鍛えてたのよ?直ぐにでも復帰出来るわ」
リーシェルが話しかけてくるが、俺は言葉が出てこない。
「ごめんなさい…ヴィン、陛下が貴方に昔の事、言ったのでしょう?」
「!、…陛下が…言っていたことは…」
「ごめんなさい…身籠てた事、貴方に知らせようとしたのだけど…産んであげれなかった。」
「あぁ、陛下から聞いた…いえ聞きました。私に嘘をついた事も、何故です?今になって…」
「…騎士団長になった事は知ってたんだけど…最近はよく護衛として、色々な依頼をこなす貴方の事を聞いて、会いたくなってしまって…。」
「つい、陛下に貴方に会いたいと言ってしまったの…。」
目尻を下げ困ったように呟く彼女を見て、懐かしさは感じたが愛しさは感じない。
「そうしたら陛下が貴方とそろそろ結婚出来るように手を打ってくれると!」
今さら?俺にはイリスがいる、イリスとお揃いの指輪をした左手を握りしめた。
「リーシェル様…」
「どうしたの?昔みたいにリーシェルって呼んで、やっと貴方の奥さんになれるんだもの」
「申し訳ありません、私には結婚を約束をした恋人がいます。」
「貴方が私を忘れようと、色々な女性と付き合って居るとは聞いてるわ、でも私がヴィンと結婚するのだから別れても大丈夫よ?」
「彼女とは真剣に付き合って居る!傷ついていた俺を癒してくれたのは彼女だけだった!俺はもう彼女を手放したくありませんので、リーシェル様との話は無かった事にしていただきたい!」
「イヤよ!ヴィンは私の物よ!「眠りの精霊よ彼の者に暫の眠りを!」」
リーシェルが怒りながら、俺に魔法を使うが。
「何をする!リーシェル!」
「…何で?ヴィンは魔術に対しては防御は全く駄目だったはずなのに…。」
俺は、全くといっていいほどに魔術に対しては防御が出来ない、攻撃魔法は初級でも致命的になり、回復魔法はギンギンに効きすぎて、先日はイリスが会得した上級回復魔法(二人でクエスト中)で我慢出来なくなり、5日ほど街に帰るのが遅くなりイリスは立ち上がることも出来ず帰ったので、仲間達がイリスに暫く会わせてくれなかった。
そんな俺に魔法が効かなかったのはイリスとお揃いの指輪のおかげだ。
「ヴィン?」
「リーシェル…様、俺にもう魔法は効かないし、あなたを妻にする事は出来ません」
「ヴィン…あぁ」
うずくまり、泣き出したリーシェルを慰めるわけにもいかず。
おろおろしていると。
「アーヴィング…。ちゃんと君の恋人にも謝ってきた、リーシェル…君の好意に甘え二人の未来を壊し、また新たに恋する少女を傷つけてしまった…。」
「陛下…」
「アーヴィング、リーシェルは夫として私がちゃんと慰めるから君は早く恋人の所へ…出来ればこれからもこの国の為に…」
「はっ!私の忠誠は国と陛下へ捧げています!」
「ありがとう、早く行っておいで。」
「失礼いたします。」
リーシェルの離宮から、少し離れた所で少し振り向くとリーシェルに向かい陛下が何か呟き肩を抱きながら離宮の中に入って行くのを見届け…俺の初恋は幕を閉じた。
「イリス!」
「アーヴィング様!!」
城門近くで、イリスを見つけ慌てて駆け寄り力強く抱きしめた。
イリスは目を見張り、驚いていたが直ぐに俺の背に腕を回し抱きつく。
「イリス、少し話をしないか?」
俺を見つめ、何か言いたそうにしていたイリスの手を引きながら向かうのは夕日が綺麗に見える見張り台の上(一般人が出入り可能)。
「イリス、陛下から聞いたと思うが妾妃のリーシェル様に会ってきた…。」
眉を潜め、悲しげに見つめてくるイリスが小さな声で
「はい、聞いています…でも…私はアーヴィング様の心に誰がいても…アーヴィング様が好きです…」
「あぁ、ありがとう!俺にはお嬢ちゃんしかいないよ…。」
「アーヴィング様…」
「触れたいと思うのも守りたいと思うのもイリスだけだ、これからもずっと俺の側で笑っていて欲しい…」
「はい!」
先ほどの、不安げな声ではないイリスの返事が聞こえ今までにない幸せを噛み締める。
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トントンっと、ドアをにして子供部屋のドアを開け。中にいたイリスに小さく声をかける。
「イリス、ガルシアは眠りそうか?」
「はい、あと後少し…で」
結婚して2年俺達の間にはイリスに似た男の子が産まれた。
イリスの横に座り、ガルシアを見るとうとうとしながらイリスの胸を吸っている。
「イリス…。」
反対側の胸をゆっくりと揉みながら、ガルシアと同じように吸い付くとほんのりと甘い液体が口の中に広がる。
「んっあ! ヴィン様?!」
ガルシアを抱いているイリスが動けないのを良いことに、イリスの胸を息子と共に目を閉じて堪能していると。
「ん?」
違和感を覚えて、目を開けイリスを見たら…。
「お前は誰だ!」
「?、アーヴィング様?」
イリスに似た男がガルシアに胸を吸わせていた…。
「ガルシアを離せ!」
ガルシアを男から引ったくる、ケプっと可愛らしいゲップをするガルシアを抱き素早く距離を取る。
「アーヴィング様?ガルシアに焼きもちですか?」
胸から、何故か母乳のような液体を滴ながらにこやかに近づく男は信じられない言葉を吐く。
「ガルシアに早く弟か妹を作ってあげましょう?」
イリスに言われると嬉しい言葉だが、男に言われて嬉しい訳じゃないので、背中に鳥肌が立ってしまった。
この男は何を言っている?男が子供を産めるわけがあるか!それに俺が男と関係を持つわけがない!
「イリスを何処にやった!」
「?、イリスなら僕がアーヴィング様の子を産むためにアディリエール様に捧げたじゃないですか?」
「なっ!」
「さぁ、アーヴィング様ガルシアを寝かせて、早く弟や妹を作ってあげましょうよ」
服を脱ぎながら、迫ってくる男からジリジリとガルシアを抱いたままドアを開け廊下を走り抜ける…。
「くそ!なにがどうなっている!」
庭に続くドアを開けると、辺りが真っ暗になり上下左右が全くわからない…。
『間に合って良かったわ、アーヴィング…』
「アディリエール…様?な!イリスは何処に!」
『イリスは今、存在しません…私と名乗る者と貴方を追いかけてきた男のせいで…消えてしまった…。』
アディリエールの…神と呼ばれる存在の言葉はつづく。
『イリスを助けに行って欲しいの、貴方の仲間達も勿論向かってくれるわガルシアも大丈夫、私が責任を持って保護するわ』
「勿論助けに行くに決まっている!…ガルシアをお願いします…。」