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今でも運行しているのが不思議なくらい、古い型の列車だった。
旧式?オンボロ?
でもとにかく僕は、この列車で零輪駅まで戻らなくちゃと思っていた。
零輪駅は隣の市のターミナル駅で、新幹線も来るし、建て替えたばっかりで真新しくピカピカ!…のはずだった。
「れいわーれいわー」
「?!」
たどり着いた零輪駅は、今にも崩れそうで、煤けていて、見る影もなかった。
僕は呆然としたまま下車したが、新幹線どころではない駅舎に苦笑した。
腹が減っていたので構内のキオスクで駅弁を買おうとして、売ってある新聞の日付けに目が泳いだ。
50年…前!?
まさかわざわざ古新聞を売ってあるはずもないので、僕は、今50年前にいることを知った。
未来へ50年じゃなくて、過去へ50年。
「ははは、は…」
力が抜けてへたりこんでしまった。
このまま家へ帰っても、僕はまだ生まれていないし、両親だってまだ結婚してないぞ!
往復の切符を見て、どうしても一夜市に戻らねばならないと思った。一旦改札で駅員さんに切符の一枚を手渡すと、次の列車の時間を聞いた。
「13時ちょうど。お客さんタイミングいいね。SLに乗れるよ」
SL?蒸気機関車!?
僕はちょっと考えて、頭を切り替えることにした。
振り回されるのはやめだ!この状況を楽しんでやれ!
SLは定時にやってきた。
僕は黒い車体に触れてから乗車した。赤いビロードばりの座席。こりゃあ、特等席だぞ!
車内販売のカートをおしたお姉さんがやってくる。
「駅弁とお茶ください」
「駅弁は3種ございます。一夜市の名物のうなぎ、栗、ヤマメ」
よだれが出そうだ。
迷って時間がかかったが、うなぎにした。ついでに旅の記念にとSLの写真のついた絵葉書三点セットも購入した。
なんか、楽しいや。
僕は窓を押し開けた。
とたんに真っ黒い煙と煤が入ってきて、慌てて閉めた。
汽笛が大音量で鳴った。
僕は『今』を楽しんでいた。